ワールドシリーズは4勝2敗でアストロズが5年ぶり2度目のチャンピオンになった。7日には優勝パレードが行われ、市内を200万人ものファンが祝福に駆け付けた、というニュースも入ってきた。
アストロズを率いたダスティ・ベーカー監督は73歳。監督生活25年目で初のワールドチャンピオンとなり、73歳の最年長記録も作って、今や米国内で最も注目されている人物となっている。
アストロズとの契約は今季限りで切れるものの、来季の指揮を執ることになるのは異論がない模様だ。ベーカー監督はドジャースの外野手だった1981年以来の世界一。米大リーグ公式サイトによれば優勝パレードが行われた翌8日に「(今年は)これまでにないほど楽しかった。最後に(優勝パレードを)行ってから40年が経ち、パレードがどんなに楽しかったか、そしてそれが私と私の家族、ヒューストン市にとって何を意味するかを改めて思い知らされた」と答えている。
指揮した5球団すべてをポストシーズンに進出させ、通算2093勝は歴代9位。カブスを指揮した際には投手を酷使したとして批判もあったが、今季のアストロズではバーランダーも含めて休養十分でマウンドに送り出して好成績を引き出した。監督勝利上位11人中、野球殿堂入りしていないのはベーカーだけで、引退5年後で資格を得た場合、選手ではなく特別表彰の形で入るのは間違いない。
8日のUSAトゥデー紙は、アストロズのジム・クレーン・オーナーがベーカー監督とジェームズ・クリックGMの2023年契約を正式に延長する予定であると報じた。クレーン・オーナーは、2017年の世界一にまつわるサイン盗みでGM、監督が解任された2020年にベーカーを迎え入れた。
その後の3年間はすべて優勝決定シリーズに進出し、念願のワールドシリーズ優勝という素晴らしい結果を残したことで、オーナーは「彼(ベーカー監督)は私たちをゴミ箱から引っ張り出してくれた。そして、必要な場所(ポストシーズン)に連れて行き、毎年のように素晴らしい仕事をしている。選手たちも彼を愛しているんだ」と絶賛した。
ベーカー監督は1996年の日米野球でメジャー選抜を指揮。野茂英雄の凱旋登板だけでなく、後に殿堂入りするカル・リプケン、ペドロ・マルティネス、マイク・ピアザ、イバン・ロドリゲスに加え、バリー・ボンズ、アレックス・ロドリゲス、アンドレス・ガララーガ、ゲーリー・シェフィールドというそうそうたるメンバーを率いて来日。監督として4年目の47歳、この年は3年連続負け越して2年連続地区最下位だったことで、采配にも自信が見られなかった印象がある。
今年は62本塁打のア・リーグ新記録を作ってヤンキースの地区優勝を牽引したアーロン・ジャッジ外野手が、個人賞争いを軒並み獲得する勢いで「2022年はジャッジの年」と言われている。私はここにベーカー監督も入れて、「ジャッジとベーカーの年」として記憶にとどめたいと思っている。
蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)