三井ゴールデン・グラブ賞7度受賞の高橋由伸氏、守備を語る(3)「僕が声出したら全部取る」松井秀喜さんとあうんの呼吸

三井ゴールデン・グラブ賞について語る前巨人監督の高橋由伸氏(カメラ・二川 雅年)
三井ゴールデン・グラブ賞について語る前巨人監督の高橋由伸氏(カメラ・二川 雅年)

 スポーツ報知評論家の高橋由伸氏(47)=前巨人監督=が8日、今年で51回目を迎える「三井ゴールデン・グラブ賞」(三井広報委員会提供)への思いを語った。入団当初から「打撃より守備の方に自信があった」という由伸氏は1998年から6年連続を含む計7度も受賞。飛び抜けたスピードはなくても、的確なポジショニングや視野の広さなどでファンを魅了した右翼手だった。当時のライバルや現代のスペシャリストまで、由伸氏独自の目線で選手名も披露。同賞における今後の期待にも言及した。(取材・構成=水井 基博)

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 由伸氏にとって松井秀喜さんは尊敬する先輩であり、外野手としても切磋琢磨した名コンビでもある。2人は2000~02年の3年間で三井ゴールデン・グラブ賞をダブル受賞。中堅手だった松井氏は以前、「由伸がライトにいてくれるから俺は楽だった。右中間の打球は全部捕ってくれるからね」と語り、同賞受賞に大きく影響した由伸氏に感謝している。

 右翼手の由伸氏と松井氏の間には“あうんの呼吸”があった。

 「例えば、右中間に打球が飛んだら、どっちが行くとかになる。当然近い方が捕るんですけど、わりと優先的に僕が捕っていたと思います。あとは、投げる方向の問題もあるので、松井さんが捕ると切り返しだったり投げるのが大変な時は、僕が捕ったりしましたね」

 一方で、二塁手・仁志敏久さんとはしっかりとしたルールを作った。ライトとセカンドの間に上がる中間飛球をいかに捕るか。連携が最も大事なプレーだ。

 「仁志さんは守備にもすごくこだわりがあったんです。だから、2人で約束を作りました。例えば、フライは先に声を出した方が捕るのが通例だと思うんですが、それだと迷いも出る。なので、僕が声を出したら全部、僕が捕る。仁志さんが先に声を出しても、僕が後に出したら僕が捕る。だいたい、自分は定位置から『わあ~』って声を出しながら走って行くので、仁志さんは自分の声が聞こえたら、捕りに行くのをやめるんです」

 球場によっては大歓声で聞き取りづらい時もあるが、互いに声を張り、仁志さんは“飛び込まない”というルールも作った。ミスをしないためにはチーム内の約束事も大きな効果をもたらす。周囲との連携が特に大事であることを由伸氏は強調した。

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 ◆高橋 由伸(たかはし・よしのぶ)1975年4月3日、千葉市生まれ。47歳。桐蔭学園高では1年夏、2年夏に甲子園出場。慶大では東京六大学リーグ新記録の通算23本塁打を放ち、97年ドラフト1位で巨人入団。99、2007年ベストナイン。98年からの6年連続を含む三井ゴールデン・グラブ賞7度。04年アテネ五輪日本代表。15年限りで現役を引退し、16~18年は巨人第18代監督。19年から巨人の球団特別顧問、スポーツ報知評論家を務める。通算1819試合で1753安打、321本塁打、986打点。打率2割9分1厘。右投左打。

◆「三井ゴールデン・グラブ賞」とは

 守備面で特に卓越した優秀プレーヤーをセントラル、パシフィックの両リーグそれぞれのポジションから9人ずつ選出し、「守備のベストナイン」として表彰。

 1972年に「ダイヤモンドグラブ賞」として制定後、86年から三井広報委員会の提供となり、現在の表彰名称「三井ゴールデン・グラブ賞」となる。

 選考委員は全国の新聞社・通信社・テレビ局・ラジオ局に所属する5年以上の現場取材経験をもつ記者、約400人が務める。

 昨年度で第50回を迎え、これまでに延べ905人の守備の名手たちをたたえている。本年度「第51回三井ゴールデン・グラブ賞」の受賞者は11月14日に発表される。

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