ワールドシリーズはレギュラーシーズン106勝し2年連続出場のヒューストン・アストロズと、今年から新設されたワイルドカード3位で滑り込んで上位3チームを蹴散らして勝ち上がったフィラデルフィア・フィリーズという対戦。対照的な両チームを、戦い前にヒルマニアが3回に分けて読み解く。
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アストロズの監督は73歳のダスティー・ベーカー。現役時代は強打の外野手としてブレーブス、ドジャースなどでメジャー通算2039試合に出場し242本塁打を放った中距離ヒッターとして活躍した。1993年に43歳でジャイアンツの監督に就任してから計5球団を指揮しすべてのチームをポストシーズン進出させた史上初の監督。4番のブレグマンが優勝決定シリーズ直後のインタビューで「ダスティー(ベーカー)がいたからこそチームが一丸となって勝ち続けているんだ」と語ったように今季は自己最多のシーズン106勝し通算2093勝は歴代9位と、ベスト10入りを果たした。
そんなベーカー監督が指揮官として唯一持っていないのがワールドシリーズのチャンピオンリング。2002年ジャイアンツ、そして昨年と惜しくも涙を飲んでいる。ちなみに監督勝利ランキングで13位までの監督で世界一0はベーカー一人だけに、ポストシーズン7戦全勝の今季は最大のチャンスだ。
一方、フィリーズを指揮する59歳のロブ・トムソン監督は22勝29敗の時点でジラルディ監督解任の後を受け代行となって65勝46敗でチームを11年ぶりのポストシーズン(PS)に導いた。ワイルドカードシリーズで勝ち上がると球団と正式に2年契約を結び、その勢いは加速。地区シリーズでブレーブス、優勝決定シリーズでもパドレスと上位球団を蹴散らし、史上初の借金7で引き受けた指揮官としては史上初のワールドシリーズ進出を果たした。また、カナダ出身の監督としても史上初となった。
現役時代は捕手としてプロ入りもベーカー監督と違ってメジャー昇格はない中、ヤンキースなどを始め長年の指導者としての功績を認められカナダ野球殿堂入りも果たしている。
10月3日、ポストシーズン進出を決めた直後に指揮官は「まだ終わっていない。我々はさらに13勝を挙げ、世界チャンピオンを目指す」。この言葉が現実味を帯びてきた。
どちらが勝っても初の世界一。新旧の指揮官の采配にも注目したい。
蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)