宝塚歌劇雪組ミュージカル「蒼穹の昴(そうきゅうのすばる)」の新人公演が18日、兵庫・宝塚大劇場で上演された。本公演では大ベテラン集団・専科から6人も出演している重厚な一本物を、入団7年目までの生徒だけで1時間55分かけて作り上げた。
浅田次郎氏のベストセラー小説が原作で、19世紀末の清朝末期の中国の行方を憂うエリート官吏・文秀(ウェンシウ)役で入団3年目のホープ・華世京(かせ・きょう)が新人公演初主演を果たした。科挙を首席で合格した文秀、本公演で主演しているトップスター・彩風咲奈(2007年入団)と同じく、20年に首席で入団したスター候補だ。
前半は未来を見つめて明るく、後半は使命を果たそうと苦悩する。派手に動けない難しい役どころを、全身全霊で演じきった。カーテンコールで華世は「お稽古がうまくいかず、悩んだこともたくさんありましたが、この作品の中で悲しいこと、辛いことがあっても決してあきらめず力強く良く抜いた文秀に背中を押され、勇気をもらい、前向きな気持ちになりました。まだまだ未熟な私ですが、学びを本公演に生かせるように頑張りたい」と、あいさつした。
初めて立ったセンターの0番地は「スポットライトを浴びてすごくまぶしかったんですが、これが普段、彩風さんが感じていらっしゃる責任感なんだなと感じました」と重責を痛感。彩風には開演前に背中をたたかれ「大丈夫だよ。思いっきりやればいいんだよ」と言葉をかけられたといい「泣きそうになりました」と照れくさそうにした。
文秀と不思議な糸で結ばれている幼なじみの玲玲(リンリン)役は19年首席入団の音彩唯(ねいろ・ゆい)が「CITY HUNTER」(21年)に続く2度目のヒロインとして務め、透き通るような歌声を披露。少女から大人への成長の表現も巧みで「照明やお衣装の力をお借りして壮大な物語に入り込み、心を動かして演じることができました」と笑顔。「CITY―」では元気はつらつな役だったが「深く大事に作り込んでいきたいと、一度目とは違うより大きな責任感を感じました」とホッとした表情を見せた。
清朝の運命の鍵を握る最重要人物で、劇中では「怪物」とも呼ばれる大役・西太后(本役・一樹千尋)は、次期トップ娘役の夢白あやが務めた。6年目ながら老け役を厳格に堂々と好演。改革派への理解を示すセリフも情感たっぷりで、実力のほどを証明した。
文秀の弟分で、玲玲の兄の春児(チュンル)は公演の長(リーダー)の一禾(いちか)あおが担当。逆境に立ち向かい、運命を切り開くさまを明るく朗らかに演じた。長のあいさつでは「この状況下で本日を迎えられ、ありがたく奇跡のように思います」と感謝した。
東京宝塚劇場では12月8日に上演。