【女子野球】年内最後の大舞台、集大成見せた2人の左腕

スポーツ報知
2回戦の平成国際戦に登板、ピンチを切り抜け捕手の安藤(右)と抱き合って喜ぶ神戸弘陵・日高(カメラ・軍司 敦史)

 松山市で11日まで行われた女子野球最高峰の大会「第18回全日本女子硬式野球選手権大会」(報知新聞社など後援)は、エイジェック(栃木)の連覇で終わった。年内最後の大舞台、引退を決めた元日本代表・笹沼菜奈(東海NEXUS)と、コロナに翻弄された神戸弘陵高・日高結衣2人の左腕にとって、集大成となる大会になった。(軍司 敦史)

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 「緊張しつつもワクワクしていました。最後ということは意識しませんでしたが、後輩が投げているのを見て、少し泣きそうになってしまいました」と、3回無失点に抑えた現役最後の先発を振り返った笹沼。この大会では初戦の岐阜第一戦に先発、2回戦の日大国際関係学部戦に中継ぎ登板した。26歳、「もったいないと言われますが、でもそのくらいがいい」。衰えを実感する前に引きたかったという。

 埼玉栄高時代の14年、女子野球日本代表・マドンナジャパンに選出され、2大会連続で女子W杯に出場。平成国際大卒業後の18年から女子プロ野球リーグの愛知ディオーネでプレーし、重い直球とカーブを武器に3年間で47登板10勝を挙げた。女子プロの消滅にともない、愛知県一宮市で発足したクラブチーム・東海NEXUS入り、JR貨物の営業の仕事をしながらリーグ戦や全国大会を目標にしてきた。

 「辞めようと思ったのは、2年前。(ディオーネが19年まで本拠地にしていた)一宮の場所も人も好きで、野球を終えるならここと決めていたんですが、20年に本拠地が京都に移ってしまった。NEXUSが出来たので、戻って最後にしようと思ったんです」辞める時期は決めていなかったが、今季いっぱいでと決断。日本一をめざすこの大会を現役引退の場に決めた。

 今後は仕事を続けながら、マネジャーとしてチームを支える。「コーチは、すでにみなさんいますし。野球は選手だけでなくマネジャーも必要なものですから」。栃木・矢板で小学校から野球をはじめてから、その時その時がいつも楽しく今があると語る元日本代表。「選手でなくなるのは想像つかないけれど、すっきりした思い。悔いありません」と、涙無しで現役生活に別れを告げた。

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 高校入学からコロナに振り回され続けた元エースが、用意された最後の大舞台で本領を発揮した。準決勝で阪神の女子チーム・阪神タイガースWomenと対戦した神戸弘陵の日高は、スタメンに女子プロや日本代表の経験者を7人そろえたベテラン勢相手にもひるまず、7回を終え2安打無失点の好投。延長タイブレークに入ってサヨナラのピンチを再三背負っても、度胸あるピッチングで抑え金星に貢献した。「しんどかったですが、プレーできる喜びが勝利につながった」と仲間に感謝した。

 未知のコロナに世間が戸惑っていた2020年の入学、練習は思うようにできず、夏の高校選手権は中止。それでも内角ストレートをズバッと決められる制球力と度胸で2年生から頭角を現した。史上初めて甲子園で行われた昨夏の高校選手権決勝では先発し6回無失点、最後を先輩の島野愛友利(現ジャイアンツ女子)につないだ。今年春、東京ドームで行われた全国高校選抜決勝でも先発、優勝を逃したもののエースとして強豪チームを引っ張り、7月の高校選手権連覇を狙った。

 しかし3回戦まで進んだところで部内でコロナが広まり、大会途中で出場辞退。3年生はその時点で“引退”となり2年生以下の新チームに継がれた。選手の無念を思うと涙が止まらなかったと振り返る石原康司監督は、せめてグラウンドで終わらせてあげようとお別れ試合を考えていたという。しかし9月に入って、選抜大会準優勝の実績から全日本選手権出場が正式に決定。3年生がこの大会限定で復活し、再び縦じまユニホームでグラウンドに帰ってきた。

 クラブ、大学それぞれのカテゴリーを勝ち抜いてきた28チームが女子野球の頂点を争う大会。神戸弘陵はミスの少ない元気あふれるプレーでお姉さんチームを相次いで倒して駒を進め、阪神との接戦を制して初の決勝進出。延長でエイジェックに惜敗したが、日高は「夏の試合を(途中から)出来ずに終わっていた中、全日本に出られただけでもうれしいのに(決勝進出で)一番長く試合をすることができた。負けましたが一つ一つプレーできる時間が幸せでした。やりきりました」と笑顔をみせた。

 バッテリーを組んだ安藤蓮姫ともこれが最後。「本当に最高に楽しかったです」と日高が大会を振り返ると、安藤も「良い球過ぎて、楽しすぎました。このユニホームを着てみんなと戦えて、幸せだった」と感謝する。2人は来年、東西のクラブチームに分かれて野球を続け、今後は対戦する可能性もある。「その時は倒します」と語る日高に、安藤も「負けません」と応じ、翌日の授業を控える神戸にナインと向かった。

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