柔道の世界選手権(タシケント)は、第7日の12日に個人戦の最終日を迎える。日本勢の大トリは男子100キロ超級で初出場の全日本王者・斉藤立(たつる、20)=国士舘大=だ。父は95キロ超級で1988年ソウル五輪で2連覇し、83年に無差別級で世界選手権を制した故・仁氏(15年死去、享年54)。立が世界制覇を果たせば全階級を通じて日本勢初の親子2代制覇となる。女子78キロ超級は前回銀メダルの冨田若春(わかば、25)=コマツ=が出場する。
日本柔道界の期待を背負って、大器がいよいよ世界に打って出る。斉藤は初めての世界選手権で「やることはやってきたので、あとは自信を持って柔道をするだけ。一つ一つの試合に自分の全て、命を懸けて勝ちにいきたい。絶対優勝します」と覚悟をにじませた。
世界一への道のりは険しい。世界ランキング34位の斉藤はノーシードで臨み、1回戦で同4位の第2シード・スパイカース(オランダ)と当たる。厳しいブロックに入ったが、男子の鈴木桂治監督はスロースターターな傾向も踏まえ「初戦から強い選手と当たることで気が引き締まる。いい組み合わせになったんじゃないか」と期待。世界選手権10度制覇で対戦を望んでいた2度の五輪覇者、テディ・リネール(フランス)は欠場したが、斉藤も「まず一発目から勝負だなと思っている。どこを勝ち上がっても、楽な試合はない」と気を引き締める。
直前の合宿では来日して調整していた同階級で東京五輪金メダリストのルカシュ・クルパレク(チェコ)と乱取りを行う時間にも恵まれた。「トリッキーな柔道で隅返しとか関節技、寝技もある。すごい警戒する選手ではあるけど」と世界のレベルを肌で感じた。
日本を出発する直前の稽古では「自分の柔道を十二分に出せる状態の基準を達成できた」と好感触をつかんだ。初の親子制覇を成し遂げた4月の全日本選手権と比べて「(全日本は調整が)逆に早すぎた。今回ぐらいがちょうどいい」と仕上がり具合にも自信を見せる。
男子はここまで6階級8人が出場し、金2、銀2、銅1の5個のメダルを獲得した。ただ90キロ級の増山香補、100キロ級の飯田健太郎はともに2回戦敗退と重量級は苦戦が続いている。20歳が父・仁氏との日本柔道初の親子での世界王者に輝き、個人戦の大トリを飾る。