【特集・未来アスリート】トライアスロン世界学生大会の日本代表、立命大・白石怜佳、小柄でも不屈の精神で世界のトップを目指す

スポーツ報知
立命大トライアスロン部の白石怜佳。世界の強豪と戦った経験値を生かし、さらなる飛躍を誓う

 日本トライアスロンのニューヒロイン、立命大トライアスロン部・白石怜佳(20)が世界で躍動している。アジアジュニア大会や世界学生大会で活躍。強固な意志で世界のトップクラスを目指す。

 サイズは小柄でも過酷な競技に立ち向かう、その姿は凜々(りり)しい。ウェットスーツに身を包んで大海原を1500メートル泳ぎ、風を切り裂きながらトライアスロンバイク(自転車)で40キロを疾走。そして、自分の持つすべての力を振り絞り、10キロを走り切る。「ひとつ(の競技)を極めるより、3つをやり切る楽しさは格別。もっともっと自分に磨きをかけたい」と、153センチ、43キロのトライアスリートは声を弾ませた。

 今年、世界へ初めて大きな一歩を踏み出した。7月、カザフスタンで行われたアジアトライアスロンジュニア選手権(U23)の女子の部で5位入賞。バイクの序盤で落車し、チェーンが外れるトラブルに見舞われながらも、最後のランで東京五輪プレ大会に出場した選手らを抜き去る圧倒的な走りで、日本人2位の好成績を収めた。

 さらに、9月にブラジルで開催されたワールドユニバーシティゲームズ(世界学生トライアスロン選手権大会、旧ユニバーシアード)で、日本勢女子3選手の中でトップの16位。ヨーロッパ、アメリカなど世界の強豪国を中心に40選手が参加した中で、自信と手応えを得た。

 「日本とまるで環境が違う所で、海外選手の強さと海外レースの難しさを感じました。でも、周りのサポートで安心して臨むことができたし、レース以外の多くのことも学べて、今後につながる収穫あるレースだったと思います」。トライアスロンに本格的に取り組んでまだ4年目。世界の舞台で強豪選手と渡り合った経験値の大きさを振り返った。

 スイムかランか。今もどちらかの道に進んでいれば、スペシャリストになっていたかもしれない。水泳は3歳から、陸上も幼い頃から地元のクラブで親しんだ。東長崎中、長崎南高で水泳部に在籍し、スイミングスクールでも鍛錬して背泳ぎで県のトップレベルを誇った。並行して陸上も継続し、高校では陸上部の早朝練習にも参加して、全国高校駅伝長崎県大会の2区(4・1キロ)を走り、区間6位。2競技とも毎日、練習漬けになる一方で、中学3年時には社会人の自転車チームに入り、3競技すべてができるトライアスロンを意識するようになったという。

 「楽しくてどの競技も続けたいから」と、高校3年の8月、全国高校トライアスロン選手権にも出場。途中でチェーンが外れるアクシデントに遭い、自分で直すことができず、近くにいた審判の手を借りた。「完走できたけど本当に悔しくて…。大学でトライアスロンに真剣に打ち込みたいと思った」と打ち明けた。

 「チームの雰囲気がよくて、聞けば聞くほど魅力を感じた」という立命大進学後は「びわこ・くさつキャンパス」内のプールで、速さを求める競泳とは違って、強さを常に意識しながら約5000メートルを週4回泳ぐ。ランは週2回、アップダウンのある険しい道を約10キロ。バイクも週2回、宇治や信楽方面まで乗り込み、山道も加えてオフの冬は100キロ、夏はチームで順番に追い越しを繰り返すスピード系のトレーニングも意識し、男子の速い選手に食らいつき、70キロ近くペダルを踏む。

 「バイクはこげばこぐほど強くなります。バイクの後のランがうまく走れていないので、足の筋肉をもっとつけたい。でも、体を大きくしすぎても、けがにつながるのでバランスが難しい。(立命大は)練習環境が整っているので、専門のトレーナーの方に体幹を鍛えてもらっています」。充実した施設の中での豊富な練習量と、自炊で栄養バランスを管理。食マネジメント学部の保井智香子准教授のゼミで「健康・栄養教育や、健康スポーツ科学を学んでいることも、アスリートの身体の管理に大いに役立っています」と話す。

 6歳上の長姉・万由子さん、3歳上の次姉・由佳子さんは、ともに長崎南高から順天堂大陸上部に進み、由佳子さんは今もユニバーサルエンターテインメントに所属する駅伝の選手。体育教員の父・邦俊さん(58)は長崎・国見高の校長で、母・由美さん(56)は長崎女子商の養護教諭を務める。教育とスポーツの一家で育った三姉妹の末っ子は、だれよりもマルチな才能を発揮して、世界で最高峰のレベルを見据える。

 今年はワールドユニバーシティゲームズと重なり、日本学生トライアスロン選手権大会(インカレ)には出場できなかった。立命大女子はこれまで3選手が完走したことがないため、チームの順位がついたことはない。「目の前の目標は来年のインカレで初の個人とチーム団体の優勝。男女アベック優勝できたら最高かな。そしてワールドユニバーシティでの上位入賞です」と誓う。

 大学卒業後の未来設計図はまだ手つかずだ。「トライアスロンを競技として続けるかや、就職をどうするかなども全く考えていません。今、頭にあるのは来年、立命で完全燃焼することだけです」と、表情を引き締めて決意を明かす。地道な努力を重ね、位置取りや駆け引きなどの技術をさらに鍛え抜いた先に、大学生活ラストを飾る感動のフィニッシュが待っている。

 ◆白石 怜佳(しらいし・れいか)2001年10月29日、長崎県生まれ。20歳。幼い頃から水泳、陸上競技を始め、背泳で県トップレベル、陸上の高校駅伝では全国大会の長崎予選に出場した。長崎南高3年で初めてトライアスロンの大会に出場。立命大進学後、徐々に実力をつけ、アジア大会U23代表、世界ユニバーシティ大会と初めて海外の大会に出場した。海外遠征には炊飯器を持参。レース前にご飯とみそ汁を食べる。今季はトライアスロン部女子の主将を務めた。尊敬する人は大谷翔平(エンゼルス)で「人間性が格好よくてスポーツマンシップが素晴らしい」という。身長153センチ、43キロ。立命大トライアスロン部は1987年創部。男子は2012年にインカレ初優勝している。

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