【番記者の視点】浦和・江坂任「理想のサッカーだけじゃ勝てない」 4失点大敗を招いた意思統一の欠如

スポーツ報知
サポーターに笑顔を届ける勝利を渇望する浦和

◆明治安田生命J1リーグ▽第31節 広島4―1浦和(1日・Eスタ) 点【広】森島司、荒木隼人、満田誠2 【浦】柴戸海

 「優勝争いすら出来ない無様な結果」。くしくも、ゴール裏に掲げられた横断幕の言葉を象徴するような大敗となった。今季最多タイの4失点。前節までJ1最少失点だったとはとても思えないように守備が崩壊した。日本代表DF酒井宏樹は試合後にサポーターへ両手を合わせて謝罪するジェスチャーを見せ、「ただただ、申し訳ない。恥ずかしい試合になった」と唇をかんだ。

 前半22分、自陣ゴール前でMF岩尾憲からGK西川周作へのバックパスを広島MF森島司にハイプレスで詰められ、先制点を献上。後半26分の3失点目も自陣の低い位置でパスを奪われた流れから被弾し、リカルド・ロドリゲス監督の真骨頂である最終ラインからパスをつなぐビルドアップを封じられた。西川は「やりたいことが相手に消された時にどう修正するか。連係、距離感。まだまだ改善しないといけない」と言葉を絞り出した。

 後方からスムーズにパスをつないで敵陣に迫る回数は限られ、相手プレスによって蹴らされたGKやセンターバックのロングボールはことごとく回収された。

 DF岩波拓也は「シンプルに相手をひっくり返して前から、前から(攻撃しよう)と話してた選手と、つないでいこうとする選手で意識がバラバラ。やりたいこと、言いたいことがみんなチグハグしている。戦いの方向性、意識を統一する必要がある」と指摘。酒井も「やりたいことをやれなかった時の切り替えのスピードが遅すぎる。そこの修正力が本当に大事。特に現場でパンパンっと決めなきゃいけない時間があるけど、ベンチと現場の考えが合わない時がある。今日は非常にみんな困りながらプレーしていた」と振り返った。

 FW江坂任は「チームとして、ポゼッションだけじゃ勝てないともう1回認識しないといけない。理想のサッカーだけじゃ勝てない。個人ではがす部分も必要だし、割り切らないといけない部分もある」。停滞する攻撃の現状を厳しく言語化した。「ボールを保持することが一番にきている。ゴールを目指していないし、バックパスが多い。それで相手の勢いが前にきて、プレスがはまりやすい」と指摘。前線へのロングパス戦術についても「意思を統一してプレーしないとセカンド(ボールを拾う)もクソもない。チームとして何をするか、何を求められてるかの統一感はなかった」と言い切った。

 0―2の後半17分にはユンカー、リンセンの強力2トップに変更。江坂やMF岩尾憲から前線へロングパスが多く供給され、速攻やセカンドボールから好機を連発した。江坂は「アバウトでもきついパスでも縦に入れた時はゴール前に行く回数は増えた」と効果を実感。「理想を90分間追い続けるのは難しい。本当にパスでキレイに崩して点を取れるのは、10点のうち1点あるかないか。理想と現実を理解しないと厳しい」と話した。見方によっては、批判的に聞こえてもおかしくない発言。あえて報道陣の前で発信することで、チームを好転させたい思いを感じさせた。

 チーム全体の意思統一の欠如は、ピッチでのメンタル低下も招いたように映る。岩波は「0―1でまだ(同点、逆転できる)可能性があるのに、下を向いている選手が多い。うまくいってない時こそ、自分がチームを変える意識をみんなが持たないといけない。ああいう状況でひっくり返せるチームにならないと上を目指していけない」。今季の逆転勝利は一度もなし(ACL準決勝・全北戦は2―2で突入のPK戦で勝利)。8月の公式戦5連勝時には序盤に先制点を挙げ、計20得点と強さを誇ったが、相手にリードを許した展開での弱さが浮き彫りとなった。

 浦和は近年、リーグ戦のラスト5戦で勝ち星を十分に積み上げられていない。19年は0勝(2分け3敗)、20年は0勝(1分け4敗)、ロドリゲス監督が率いた昨季も1勝(2分け2敗)と失速している。今季リーグ戦は現在9位で残り4戦。「1つになっていかないと何も始まらない。目を背けることなく前に向かいたい」と酒井。シーズンの最後に来季へつながる強い姿勢、結果が求められる。(浦和担当・星野 浩司)

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