元プロレスラーで元参院議員のアントニオ猪木さん(本名・猪木寛至)が1日、都内の自宅で亡くなった。79歳だった。
訃報をうけて、数々の「アントニオ猪木名勝負」が語られているが、ベストバウトの順位はなかなかつけられない。実は、猪木さんに自選のベストバウトを聞いたことがある。17年10月21日の「生前葬」を前に、故・田鶴子夫人の呼びかけで、各社の担当記者と焼き肉会食をした席でのことだ。
猪木さんのベストバウトを聞きたくて、まず他社の記者たちに「ベストバウトは?」の質問を振った。シン戦、ルスカ戦、ホーガン戦など、記者たちは思い入れたっぷりに語った。最後に順番が回ってきた猪木さんは「ジン・キニスキー」と答えた。想定外の答えだった。同じ回答じゃつまらない、そして記者の裏をかくという猪木さんらしい返答だった。
日本プロレス時代のNWA世界ヘビー級王者とのノンタイトル戦。1968年11月29日、北海道・室蘭市富士製鉄体育館での一戦とみられる。当時の報知新聞にも記事があり、25分35秒、バックドロップからの体固めで敗れている。自ら旗揚げした新日本プロレスでの試合は、自分の土俵で、相手を手のひらに乗せたような戦いだったが、ジャイアント馬場がエースだった日本プロレスでは、自分の思い通りにはいかない悪戦苦闘の中での会心の戦いだったのだろう。映像で見られないため、DVDの名勝負企画では決してクローズアップされない、猪木さん自選のベストバウトである。(酒井 隆之)
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