【ヒルマニア】ジャッジの61号を全米が待っている…スーパーヒーロー誕生へ 1961年マリスとの違いは

スポーツ報知
米大リーグの年間最多本塁打記録

 今や全米の野球ファンが注目しているヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(30)の本塁打数。1961年ロジャー・マリス(ヤンキース)の61本のア・リーグ記録更新も時間の問題だ。日本のファンにはなじみが薄い61年前のマリスの葛藤を踏まえ、ジャッジの記録にヒルマニアが迫った。

 米大リーグのシーズン最多本塁打のランキング上位を見てほしい。1位から6位までは1990年代後半から2000年代の選手ばかり。当時は、筋肉増強剤使用が違法ではなかったとはいえ、その後の調査で使用疑惑を疑われている3選手が独占した。そのため、米国では当時の記録を快く思わないファンが多く、1961年ロジャー・マリス(ヤンキース)の61本こそ“真の本塁打記録”との声が少なくない。

 61年前を振り返って見ると、当時はヤンキース黄金時代で、1949年から64年までの16年間で14度リーグ優勝。うち9度ワールドシリーズ優勝を果たした。

 61年はア・リーグにエンゼルスと第2次セネタース(現レンジャーズ)が加盟し、10球団となった。投手力が低下したこともあって本塁打が急増。1960年のア・リーグは40本で本塁打王となったが、61年は41本以上が6人も生まれた。その中で打ちまくったのがマリスとチームメートで1956年に3冠王にも輝いたミッキー・マントル。巨人のON砲の由来は、この年の米メディアが使った「M&Mボーイズ」から来ている。

 マリスは4月にわずか1本だったが5月11本、6月15本で7月末には40本、マントルも39本と抜きつ抜かれつで1927年ベーブ・ルースの60本を抜く勢いだった。ところがルースの現役時代のゴーストライターだったF・フリック・コミッショナーがこの年から162試合制になったことで「(1シーズン60本塁打の)ベーブ・ルースは154試合制で作った記録。154試合までに61本を打たないと新記録と認めない」との声明を発表。また、ヤンキース生え抜きのマントルに記録を作らせたいとしていたファンや、英雄ルースの信奉者などからマリスに多くの脅迫状が届き、その影響から脱毛症にまでなった。

 何とか最終戦で61本塁打をマークしたが、レコードブックには注釈を意味する「*」で154試合制はルース、162試合制はマリスと掲載。本塁打記録が正式に認められたのは亡くなった6年後の91年だった。

 今年のジャッジには記録へのプレッシャーはあるだろうが、そんな先人の苦労はなく逆に、このところ絶えていた米白人のスーパーヒーロー誕生への歓迎ムードが米国全体に漂っている。

 養子先の教師夫婦に育てられた品行方正なスラッガーは、ヤンキースのマイナー時代にはGM付き特別アドバイザーをしていた松井秀喜さんの教えもあって2017年に52本塁打で本塁打王と新人王を受賞。その時の本紙の取材に「ボールを呼び込む意識。ボクのような大柄な選手ははやく体重移動すると軸がぶれやすい。体重を後ろに残して、できるだけ長い時間、ボールを見極めるようになった」と松井さんの指導の効果を語ってくれた。

 5年前と違うのは早いカウントから打球を仕留めていることか。2017年に第1ストライクの17本含め3球目までに打ったのが25本。今季は第1ストライクの21本を含め32本と好球必打で結果を残している。もちろん、デビュー当時からの右越えアーチは右中間含め18本と、ヤクルトで55本打っている村上宗隆と同じように広角に打つバッティングが健在だ。ちなみに、1961年、左打ちのマリスの本塁打で左方向は5月6日エンゼルス戦で打った3号の1本だけだった。(ベースボール・アナリスト)

※参考資料=ベースボール・リファレンス=

 ◆ロジャー・マリス(Roger Maris)1934年、米ミネソタ州生まれ。右投左打の外野手。53年にプロ入りし57年にメジャー昇格。インディアンス、アスレチックスを経て60年にヤンキースへ移籍。60年打点王、61年に本塁打と打点の2冠王で2年連続MVP。強肩でゴールドグラブ賞も受賞。68年カージナルスで現役生活を終えた。通算成績は1463試合に出場し打率2割6分、275本塁打、851打点。85年にリンパがんで死去。現役時代は183センチ、92キロ。

 ◆アーロン・ジャッジ(Aaron Judge)1992年4月26日、米カリフォルニア州生まれ。30歳。生後まもなく教師だった両親の養子に入った。2013年ドラフト1巡指名でヤ軍入り。2017年に大ブレイクし、オールスター戦の本塁打競争優勝。その勢いで52本塁打を放って本塁打王と新人王に輝いた。通算719試合に出場し、打率2割8分4厘、218本塁打、494打点。右投右打。201センチ、128キロ。今季年俸は1900万ドル(約26億6000万円)。

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