【UWFとは何か】<26>第2次UWF旗揚げ「選ばれし者の恍惚と不安」

スポーツ報知
第2次UWF旗揚げ戦(後楽園)と札幌大会が収録されたクエストのDVD「The Legend of 2nd U.W.F. vol.1」(5000円+税)

 1987年12月27日、東京・両国国技館で、新日本プロレスにおける“UWF解散マッチ”を終えた藤原喜明、山崎一夫、木戸修、高田伸彦(現延彦)は、翌88年は個人契約選手として、新日本に参戦した。

 高田は、1月11日の埼玉・熊谷市民体育館大会で、アントニオ猪木と夢の師弟タッグを結成。テレビマッチのメインイベントでスティーブ・ウィリアムス、オーエン・ハート組に勝利するなど、解雇された前田に代わるニューヒーローに登用された。UWFコンビとしてIWGPタッグ王者だった藤原、山崎組は、1月18日に徳山市体育館で初代王者の藤波辰巳(現辰爾)、木村健吾(現健悟)組に敗れ、ベルトを返す形となった。

 長州力への顔面キックで解雇されていた前田日明は、水面下で動いていた。先輩の藤原、木戸には安定した新日本での契約更改を妨げず、後輩の高田と山崎に声をかけた。高田も山崎も新日本でのスター街道に惑わされながらも、“兄貴”前田への敬慕が勝った。

 1988年5月12日、東京・後楽園ホールで第2次UWFが旗揚げされた。大会名は「STARTING OVER」。前田が好きなジョン・レノンの名曲で、「やり直し」を意味する。再旗揚げ戦のチケットは約15分で完売。超満員札止め2300人(主催者発表)が後楽園ホールに集まり、“格闘技の聖地”という称号が定着した。

 旗揚げ戦には、前田、高田、山崎の“前高山”トリオに、若手の中野龍雄、安生洋二宮戸成夫が参加した。メインで前田は山崎とUWFルールで対戦。87年11月19日の新日本・後楽園大会での“長州力顔面蹴撃事件”以来、半年ぶりの復帰戦をチキンウイングアームロック(片羽絞め)で勝利した。

 オープニングセレモニーで前田はこうあいさつした。

 「いろいろありました。長い時間が過ぎたと思います。その間に自分たちは確実に大きくなってきました。『選ばれし者の恍惚と不安、二つ我あり』という言葉があります。プロレス界の中で選ばれた者という自負と、本当にできるんだろうかという不安があります。その不安があるからこそ、毎日、必死で努力してリングの上で命がけで戦います」

 前田が愛読する太宰治の小説「葉」の冒頭で書かれたフランスの詩人、ポール・ヴェルレーヌの詩「叡智」からの引用だ。原典のヴェルレーヌの詩は正式には「撰ばれてあることの恍惚と不安と二つわれにあり」(堀口大学訳)である。だが、UWF信者にとっては、前田のセリフこそが“Uの経典”となっている。

 6月11日の旗揚げ第2戦、北海道・札幌中島体育センターでの「STARTING OVER Vol.2」も5200人の超満員となった。=敬称略、つづく=

 ◆「STARTING OVER Vol.1」(1988年5月12日・後楽園ホール)

 ▽10分エキシビション

高田延彦(2-0)宮戸成夫

 ▽30分1本勝負

〇中野龍雄=1勝=(24分25秒、三角絞め)安生洋二=1敗=●

 ▽無制限1本勝負

〇前田日明=1勝=(24分56秒、片羽絞め)山崎一夫=1敗=●

 ◆「STARTING OVER Vol.2」(1988年6月11日、札幌中島体育センター)

 ▽30分1本勝負

 △中野龍雄(時間切れ)宮戸成夫△

 ▽45分1本勝負

〇山崎一夫=1勝1敗=(15分30秒、脇固め)ノーマン・スマイリー=1敗=●

 ▽無制限1本勝負

〇前田日明=2勝=(25分18秒、片羽絞め)高田延彦=1敗=●

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