【番記者の視点】父親の命日に堂々プレー 浦和・岩尾憲「自分らしく進んでほしい」の遺言を胸に

スポーツ報知
C大阪戦の後半、パスを出す浦和・岩尾憲 (カメラ・豊田 秀一)

◆YBCルヴァン杯▽準決勝・第1戦 C大阪1―1浦和(21日・ヨドコウ)

 ピッチで立ち止まり、しばらく話し込んでいた。0―1で迎えたハーフタイム。チームメートがロッカールームへ引き上げる中、浦和のMF岩尾憲はサブのFW江坂任に対し、ビルドアップ面など前半の停滞を改善するべく助言を求めた。

 「センターバック(CB)が少し開き気味にポジションを取り、パススピードで相手のブロックを突破する狙いで何度かトライしたけど、難しかった。CBは少し内側に取り、その脇に中盤やサイドバック(SB)が取らないと引き出せないとアイデアを聞いて、後半はそこを意識した」。後半は岩尾が極端に後方へ落ち、前を向いて長短のパスを配球して相手を揺さぶった。同8分にFW小泉佳穂がアウェーゴールを奪い、前半の2倍のシュート8本を放つなど攻撃が活性化した。

 ボランチでフル出場。いつものように冷静に“ピッチ上の監督”として攻撃のタクトを振った岩尾には、特別な思いがあった。この日は父親の命日だった。

 ちょうど1年前の昨年9月21日。父・和幸さん(享年63)が他界した。「僕の人生の中ですごくインパクトがあり、大きな出来事だった」。過去の他メディアのインタビューでは、群馬県・館林市での小学生時代はサッカーの練習帰りに仕事を終えた父が迎えてくれたり、練習が厳しくてサッカーをやめたいと告げた際には最後まで責任を持ってやるように強く言われたことなど、当時のエピソードを明かしている。

 父との思い出は「いろいろあります…」と岩尾。人生において、大きな影響を受けた存在だった。家族に残した遺書があったという。「遺書には、僕が信じられないような世界に飛び込んだので、親としては心配している。大丈夫かなという思いはあったけど、自分らしく進んでください。きっと大変だろうけど、進んでください…と書いてあった」と明かし、「これからも、その遺言通り、力強く進んでいきたい」とかみしめた。

 岩尾は常に報道陣の取材に時間がなくなるギリギリまで対応する。ピッチに入る・出る時は、各方向のサポーターへ丁寧に頭を下げてあいさつするのも印象的だ。「応援されることが当たり前ではない。自分は何者でもない」。浦和加入1年目の34歳には、“自分らしさ”があふれているように感じる。

 もしかしたら、そういった人間的な一面は父親の背中を見て身についた部分もあるのかもしれない。「親父が僕をこの世に残したので、岩尾という名字、つけてくれた名前に恥じない選手、人間でありたい。去年の出来事で改めて痛感した。1年たって成長しているなと思わせられるような振る舞いができていたらいいなと思う。今年1年だけじゃなく、これからも毎年くる日だけど、少しでも自分が成長した姿を見せたい」。試合後の取材エリアでそう語る岩尾の言葉は、小さな声ながら決意がにじんでいた。

 父親の命日当日の白星は逃したが、価値あるアドバンテージを持って25日のホーム・第2戦に臨む。無失点でも16年以来の決勝進出が決まるが、C大阪には今季の公式戦全3試合で先制点を奪われている。「0―0でOKという頭があると、確実に負けるだろうなとイメージはある。ホームでできるし、サポーターの後押しを受けながら、少しでも未来に向かっていくために勝つ必要がある。覚悟を持っての1試合になる」。亡き父の言葉を胸に、岩尾は未来を見据えた。

(浦和担当・星野 浩司)

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