今季のフィギュアスケートが本格的に始まる。五輪2連覇の羽生結弦さん(27)が2月の北京五輪を最後に競技会に一線を引きプロ転向を表明。男子日本勢の新たな顔の一人として注目されるのが、シニア転向1年目を迎える17歳のホープ・三浦佳生(かお、オリエンタルバイオ・目黒日大高)だ。羽生さんへの強い憧れを胸に2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への第一歩となるシーズンへの思いを聞いた。(取材・構成=小林 玲花、大谷 翔太)
ジュニア時代から全日本4位、四大陸選手権で3位に入るなど実績を積み上げてきた期待の三浦が4年後の五輪を見据え、ついにシニアへ転向した。世界王者の宇野昌磨、同世代で北京五輪銀の鍵山優真、19年ジュニア・グランプリ(GP)覇者の佐藤駿ら、複数の4回転を武器としたし烈な日本男子のトップ争いに闘志を燃やす。
「日本男子の戦国時代がきたなぁって。4年後(25~26年シーズン)は自分がトップというのは理想に置いています。優真の五輪銀はヤバいですし、駿がジュニアGPファイナルで優勝した時は、お風呂の中で1人で涙を流すほど感動しました。僕もついて行けるように頑張るっていう、モチベーションになります」
高さのあるダイナミックなジャンプとスピードを武器に世界と戦う17歳は、14年ソチ五輪で史上初めてショートプログラム(SP)100点超えした羽生さんの「パリの散歩道」を見て強い憧れを抱いた。
「『なんだこの人、カッコイイッ』『うわ、こうなりてぇっ』って。今でも、羽生君のあのショートが忘れられない」
プロ転向後の羽生さんが展開するYouTubeチャンネルを頻繁に見返し一流の技術を日々学んでいる。
「すごい簡単そうにジャンプを跳びますよね。(助走から)無駄な力がないというか。効率のいいジャンプを知りたくて、今メチャメチャ見ています」
今季SPは、自身の魅力が詰まった「ミケランジェロ70」。フリーは「美女と野獣」を演じ、フリップ、ループ、サルコー、トウループの4回転4種5本への挑戦も見据える。
「一番成績を出したいのは4年後。今年は焦らず自分の力を出し切って、全日本もGPも、いい成績を取って、どんどん次のシーズン次のシーズン、五輪シーズンみたいな感じでつなげられたらと思います」
GPシリーズはスケートアメリカ(10月21~23日)への繰り上げ出場も決まった。胸を躍らせ、シニアのリンクを待つ。
◆三浦 佳生(みうら・かお)2005年6月8日、東京都出身。17歳。東京・目黒日大高。5歳からフィギュアスケートを始め、東京・馬込東中2年で全国中学優勝。21年全日本ジュニア優勝、全日本選手権4位。22年四大陸選手権3位。22年からシニアに転向した。趣味は野球観戦で好きな選手はソフトバンクの柳田悠岐。特技は音楽ゲーム「太鼓の達人」。
◆男子日本勢の今季 世界王者の宇野昌磨、22年北京五輪銀の鍵山優真を中心に、し烈なトップ争いが予想される。19年ジュニアGPファイナル王者の佐藤駿(明大)は肩の負傷から調子を戻し、4回転ルッツも安定。4種の4回転を武器とする三浦、世界選手権2度出場の友野一希(上野芝ク)、4回転フリップを習得した山本草太(中京大)、22年世界ジュニア銅の壺井達也(シスメックス)もシニア転向と実力者がずらり。いずれも複数の4回転を武器にする。