◆JERAセ・リーグ 阪神4―10広島=延長11回=(21日・甲子園)
今季限りで現役を退く阪神・糸井嘉男外野手(41)が21日の広島戦(甲子園)で引退試合に臨んだ。5回に代打で左前打を放ち、有終の美を飾った。
満員の観客の拍手に、塁上の糸井はヘルメットを取って応えた。5回先頭の代打で森下の外角の147キロを捉え、三遊間を破った。得点につながる通算1755本目の安打。「甲子園で最後の打席を迎えられ、心の底からよかった」。試合後のセレモニーで次々と寄せられた恩師や仲間のメッセージに目頭を熱くし「一生の思い出」と感激した。
プロ3年目の06年に野手転向。「あの悔しさ、あそこからの努力が土台」とスピーチで真っ先に回想した原点から球界屈指の外野手に成長した。晩年は数々の故障を乗り越え、「このような光景を見せていただき、もう悔いは残っていません」と場内を見渡した。
「超人」と呼ばれた肉体は強いだけではない。40代になっても体幹をねじれば、180度近く回転。柔軟でしなやかな体はソフトバンク・柳田らを「やっぱり別格」と驚かせ続けた。他球団の選手の個人トレーナーに興味を持てば、すぐに契約するなど毎年新しい鍛錬にトライした。至高の体は決して天性だけでは生まれない努力の結晶。ファンの前で「超人伝説はまだまだ続きます」と予告した。
転向時にひそかに打撃を研究し、参考にした金本前監督に憧れ、阪神で19年間のプロ生活に幕。「野球を通じて出会えた人々に本当に感謝します」とスピーチを締めた。野球の魅力を「仲間」と語る男は引退発表後に後輩にお願い。糸原、佐藤輝ら10人以上のメッセージ入りバットを自身へのはなむけにした。最後は大好きな仲間の手で7度宙に舞い、そっと左打席にバットを置いた。(安藤 理)
◆糸井 嘉男(いとい・よしお)1981年7月31日、京都府生まれ。41歳。宮津高から近大を経て2003年ドラフト自由枠で投手として日本ハム入団。06年途中で外野手に転向し、07年に1軍初出場。13年にトレードでオリックス移籍。国内FA権を行使して17年、阪神移籍。14年に首位打者。16年に盗塁王。11、12、14年に最高出塁率。ベストナイン5回、ゴールデン・グラブ賞7回。オールスター出場10回。13年WBC日本代表。年俸8500万円。188センチ、99キロ。右投左打。