批判コメントの枕詞すら「マツコは好きだけど」…「国立大所得制限」主張で炎上も再認識したマツコの優しさ

スポーツ報知
生放送での「国公立の難関校は所得の枠を作るべき」との発言で“プチ炎上”したマツコ・デラックス

 生放送でのその発言を聞いた瞬間、「このコメントには賛否両論あるだろうな」と思った。そして、予想通り、テレビ界のモンスターの発した一言に多くのコメントが殺到した。

 12日放送のTOKYO MX「5時に夢中!」(月~金曜・午後5時)にタレント・マツコ・デラックス(49)が生出演。日本の教育制度の現状について私見を述べた。

 この日の番組では、家庭の事情で塾に通えない中学3年生を対象にした東京・足立区の「無料塾」が日比谷、西、戸山などの名門都立高に合格者を続々出していることを報じた記事を紹介。

 MCの垣花正(50)に「マツコさん、どう思われますか?」と聞かれたマツコは「本来だったら、足立区とか市区町村単位じゃなくて、文科省自体も考えなきゃいけないと思うんだけど、例えば国立大学とか学費安いじゃない? だけど、実際、国立大学に入っている人って小学校から塾に通わせることができる富裕層の家の人だったりするわけじゃない? だったら、最初から国立の学校は一定数、所得制限をかけて(合格者を)取るとか他にできることがあると思うのよ」と真剣な表情でコメント。

 「そんな中で市区町村単位でこういう(無料塾のような)動きをするというのは、すごい私、日本のためにもなると思っているの」と続け、「意外と富裕層のガリ勉ちゃんみたいな人で、いい学校出た人って、国を動かすまでのことはしないんだよね。案外、ノーベル賞獲ったりする人って田舎の野原を駆け回っていたような人が、地元のトップの公立高校行って、そっから東大とか京大行っての人が多かったりして。意外と進学塾みたいなのに通ったり、私立の進学校行って受験対策みたいなのからいい学校行ったりする人よりも、こういう所からの方が何か、私たちのためになる何かを開発してくれたり、発明してくれたりする人が出てくるんじゃないかという期待が…」と私見を述べた。

 その上で「(公立の)中高一貫校も私立行けばいいのにさ。本末転倒だけど、いい所の子が行ったりしてるんだよね。私は国公立のいわゆる難関校と言われている所は所得の枠を作るべきだと思う。9割が年収1000万円以上の家庭の子どもってなると、何か国立大学の意味がなくない?」と問題提起した。

 放送直後にマツコの言葉を記事化した「報知WEB」の記事には、配信直後から多くの声が集まった。

 「国公立受験はフェアであるべき。所得制限を設けるなどあり得ない。マツコさんは好きだけど真剣に受験勉強したことのない人の意見としか思えない」

 「マツコは好きだが、これは違うと思う。所得に関係なく、やる気のある子へのチャンスは平等にあるべき」

 「マツコさんの言っていることも分かるけど、機会の均等という点では家庭の所得で制限すべきではない。所得制限をかけるのは別の意味で不公平。機会の平等も担保されなくなる」

 中には「かじれるような親のスネがなくても、志があれば道は開ける社会にすることは賛成だが、所得制限ではなくて、給付型奨学金など、あくまでも本人に対する支援が良いと思う」

 「塾にも行けず、レベルが格段に落ちた公立義務教育で育ったこどもが、お金をかけられた子どもと同じレースしなければならないことがフェアであるとは思えない」などの意見もあったが、多くが受験機会均等の立場からマツコの意見にもの申すものだった。

 確かに今回のマツコの意見には、やや一方的なものを感じたし、私自身も親の収入など関係なく、努力した受験生が一番行きたい大学に行けることこそが真の平等だと思う。

 ただ、今回の“プチ炎上”で再認識させられたのが、マツコ人気の高さ。批判コメントのほとんどに「マツコさんは好きだけど」という“枕詞”がついていたことで、いかにこのテレビ界のモンスターが視聴者に愛されているかを逆に思い知らされた形となった。

 今回のマツコの一見、過激に見える意見にしろ、生まれ育った家庭の低収入に苦しみ、進学を諦めざるを得ないような受験生への優しい目線から生まれたものであることを皆、分かっている。自身がゲイであり、女装家であり、マイノリティーであることを自覚しているからこそ口をつく言葉。みんな、この大物タレントの温かさが分かっている。

 そんな魅力の一端に直接触れることができたのが、今から4年前のテレビ東京・天王洲スタジオでの収録現場だった。

 2018年5月、テレ東ではマツコが同局の特別番組5つに立て続けに出演する「無理矢理、マツコ。テレ東に無理矢理やらされちゃったのよ~」プロジェクトを進めていた。

 私はその第1弾となるクイズ形式の番組「マツコがマネーをあげたいクイズ」の収録に潜入取材。当時も月曜の「月曜から夜ふかし」から土曜日の「マツコ会議」まで民放キー局の番組プラス「5時に夢中!」の計8番組にレギュラー出演と、見ない曜日がない“日替わりマツコ”状態だった超売れっ子は、テレ東の同番組出演で民放キー局を完全制覇したのだった。

 その日、収録された「マツコがマネーをあげたいクイズ」の進行役は入社3年目の若手、当時24歳の原田修佑アナウンサーだった。失礼な言い方かも知れないが、マツコと絡むには、あまりに経験不足。そのツッコミに何度も口ごもってしまうところが初々しかった反面、時折、返答に困って素の表情に戻ってしまうなど、私から見ても「まだまだだな~」という感じの若手アナだった。

 しかし、マツコは凄かった。セットに登場し、小柄で童顔の原田アナと対面したとたん、「アナウンサーっぽくないって(スタッフと)話してたのよ。助手っぽいって」と、その特徴を的確につかんだコメント。「おまえ、遠慮しなくていいからな。誰もおまえのこと知らないんだから」とアドバイスした。

 長時間に渡った収録中も原田アナに「もっと我を出せ! 我を見せてくれ」「ヘタクソー~! おまえ、アナウンサー向いてない」と絶叫。でも、その言葉の裏に同アナの美点を引き出し、成長させようという愛情が見て取れた。

 収録の最後には、あれだけオドオドしていた同アナが逆に空気を読まない進行で笑いを撮る場面も―。マツコの“教育効果”は確実に実を結んでいた。

 会見後のフォトセッションでもマツコは原田アナを指さして「こいつも撮ってやってよ。頑張ったんだから」と、カメラマンたちにアピール。同アナをプッシュした末、午後9時半過ぎ、一見の記者の私に「お疲れ様~。本当にありがとうね~」と声をかけながら、さらに別の局のもう一つの番組への収録に向かった。

 そう、4年前の現場で駆け出しのアナウンサーに発揮された「毒を吐きながらの優しさ」は今でも全く変わらない。マイノリティー、弱者などと呼ぶのは失礼だが、あくまで「下からの目線」で物を見て、言葉を発する姿勢。だからこそ、みんな、マツコの言葉に優しさを感じ取り、信頼する。

 なぜ、テレビ業界の作り手たちが皆、このテレビ界のモンスターと仕事をしたがり、今でも週6本のレギュラーを持つ“日替わりマツコ状態”なのか。全ての答えは、プチ炎上の際の批判コメントにすら「マツコさんは好きだけど」という枕詞がつくことに象徴される過激な言葉の裏に存在する確かな優しさにある。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆マツコ・デラックスの現在のレギュラー番組と出演開始年

 ▽日本テレビ

 「月曜から夜ふかし」(月曜・午後10時、2012年~)

 「マツコ会議」(土曜・午後11時、2015年 ~)

 ▽テレビ朝日

 「マツコ&有吉 かりそめ天国」(金曜・午後8時、2017年~)

 ▽TBS

 「マツコの知らない世界」(火曜・午後8時57分、2011年~)

 「週刊さんまとマツコ」(日曜・午後1時半、2021年~)

 ▽TOKYO MX

 「5時に夢中!」(月~金曜・午後5時、2005年~)※月曜コメンテーター

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