【女子野球】九州から全国へ、川端友紀の夢が実現した「ミラクルハニーズ」の快進撃

スポーツ報知
阪神タイガースWomenとの決勝、打席を前に集中する九州ハニーズ・川端友紀(カメラ・軍司 敦史)

 女子硬式野球のクラブチーム日本一を決める第17回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会(報知新聞社など後援)が8月下旬に千葉県で行われ、阪神の女子チーム・阪神タイガースWomenが初優勝した。全国から集まった、さまざまな環境でプレーする33チームからは、女子野球の現状や課題が見えてくる。第1回で紹介するのは、11人で決勝を戦い「ミラクルハニーズ」と呼ばれた初出場の九州ハニーズ(福岡)と川端友紀、宮地克彦監督の挑戦。(軍司 敦史)

 創部2年、3回目の全国大会で悲願の全国優勝を目指す見慣れたユニホームの阪神タイガースWomenの圧倒的な力を前に、かわいいユニホームでそれまでの3試合で奮闘していた先発の百田陽菜は限界だった。2回途中4失点で外野手登録の楢岡美和にバトンタッチ、打線の勢いは鎮められたが相手先発の水流麻夏を打ち崩せない。ようやく2番手が登板した6回、最後の意地を見せつけた「ミラクルハニー」打線が、一時はコールド勝利も見えていた阪神ナインを慌てさせた。

 先頭の小島也弥が左安打で出塁すると、すぐに二盗を成功、次打者の深海舞絵が左適時二塁打を放って2番手を引きずり下ろすと、再び1死一、二塁のチャンスに船越千紘が左適時二塁打。その後は冷静な阪神の守備に抑えられたが、一方的な展開から2点差まで追い上げたルーキーチームの底力は感動を与えた。

 九州ハニーズは今年から福岡を本拠地に活動を開始、新設とはいえ、チーム員13人のうち川端友紀や楢岡、小島、船越ら6人が、今は消滅した女子プロ野球リーグや日本代表経験者と、個々の実力は十分だ。しかしぎりぎりの人数に加えて新型コロナに感染した選手が出てしまい、初戦は10人、2戦以降は11人と苦戦を強いられた。「第1の目標は10月の全日本選手権(松山)出場権を得られるベスト8でしたが、十分すぎる結果で今後の課題を含めて良い終わり方ができた。良く戦ってくれた」と、西武やソフトバンクでプレーした宮地監督も驚く結果を残した。

 ヤクルト・川端慎吾の妹としても知られる川端は、日本代表として女子W杯優勝に4回関わったほか、女子プロ野球に創設から9年在籍するなど女子野球を引っ張ってきた。昨年末、3年所属したクラブチームのエイジェック(栃木)を楢岡らと退団、全く関わりのない福岡の地で「九州ハニーズ」を結成した。ハニーズの名称は、ソフトバンクのマスコット・ハニーホークから来ているという。

 「私と楢岡で新たにチームを作りたいと動いていたところ、九州がまだまだ女子野球が発展していないというところに目を付けました。日本全体で女子野球を盛り上げていきたいというのがありましたし、ソフトバンクを中心に野球熱は強い地域なので、女子野球を応援していただけると思って。タイミング良く宮地監督もエイジェック(のコーチ)を離れるというので、お声かけして一緒に」

 「地域によっては、野球を続けていける環境が無いから辞めていく人もいると聞いていたので。このチームにもそういう選手がいるので、選手寿命が延びる意味でも、この地で作って良かったと思っています」

 九州では神村学園(鹿児島)が1998年の第2回から夏の全国高等学校女子硬式野球選手権大会に出場、その後折尾愛真(福岡)や秀岳館(熊本)と高校は少しずつ数を増やしているが、全国大会に出場する大学やクラブはほかにない。この大会の決勝に先発した百田のように、神戸弘陵(兵庫)で昨年の甲子園決勝を経験しながら、九州に戻って野球を続ける環境が無かった選手にとって、ハニーズは良い受け皿となっている。

 33歳の今も現役で活躍する川端にとって、宮地監督との出会いは自身のキャリアに大きく影響を与えた。18年で女子プロを辞めた川端は現役引退を考えていた。エイジェックの関係者に誘われコーチのつもりで入団したが、同じ時期に入団してきた宮地監督の言葉に闘志を燃やした。

 「宮地さんの言葉一つ一つに、女子野球を下に見ている気がして。『女子って、スライディング出来るの?』とか。宮地さんを見返したい気持ちから、現役続行を決めたんです」

 一方の宮地監督も、川端の出会いに衝撃を受けていた。「こんな女子選手いるんだと思いました。女子には超えられないスピードやパワーの壁を、彼女なら男子レベルのトレーニングで行けるんじゃないかと。体格にも技術にも恵まれ、人間的にも素晴らしい女性。川端が好きになっちゃったんです。変な意味ではないですよ」。川端が現役のうちに、もう一回女子プロを誕生させてあげたいというのが、宮地監督の夢となった。

 かつての女子プロリーグを復活させるのは無理だが、西武、阪神、巨人に続くソフトバンクに女子チームを創設してもらう可能性はある。「私が4年前に女子野球に来たときは、まだ西武も出来ていなかった。わずか3年で3球団と、女子野球は予想できない早さで変化しています。ホークスのOBでもあるので働きかける一方で、レベルの高い野球を目指しながら九州で野球を続けられるよう、一つでも多くのチーム(が誕生して)引っ張っていけるモデルケースになれば」と語る。

 これまでヤクルト・青木宣親に憧れてキャリアの多くを「23」で通して来た背番号を、初めて「一からスタートするため」と「1」にして心機一転を図る川端。今や宮地監督に対して「むしろ尊敬しています。プレーにかける思いや女子野球に関する考え方が変わったと言ってくださるので。現役を続けていて良かったと思うようになりました」と感謝する。全国制覇は及ばなかったが、ハニーズがみせた快進撃は、九州で野球を続けたい女子選手への希望になっただろう。

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