「ラグビーには可能性がある」収入2倍ファン5倍へ 土田雅人日本協会会長インタビュー

日本ラグビー協会の土田雅人会長
日本ラグビー協会の土田雅人会長

 6月に就任した日本ラグビー協会・土田雅人会長(59)が、24日までにスポーツ報知のインタビューに応じた。「ラグビーには可能性がある」を持論に、ファン層拡大や「リーグワン」との連携強化、2度目のW杯招致など個々の課題と向き合っている。2016年10月に亡くなった盟友・平尾誠二氏の思いを継ぎ、サントリー酒類株式会社の専務執行役員も務めるビジネスマン感覚を生かしながらの協会運営に対する思いを聞いた。(取材・構成=大和田 佳世)

 就任から約2か月がたつ土田会長は、ラグビーを支えていく上で基盤となるファン層の拡大の施策に思いをめぐらせている。協会の調べでは全国の熱烈なファンは推定約40万人だという。

 「ファンを200万人にしたい。今いるファンがお金を出してくれるからよし、では増えない。ファンが増えないと子供たちもラグビーをやらない。そうなると日本のラグビーは終わる。魅力あるコンテンツにして、いかに稼ぐか。今後、(協会は)リーグワンと合同で会社を作ってチケット事業などに取り組む」

 協会会長の傍ら、サントリー酒類株式会社の専務執行役員も務める。今年1月にスタートしたリーグワンは協会とは別組織だが、連携すべき点で協力できずにいた。ビジネスマンの視点から、協会内外の関係性に思うところがあった。

 「狭い世界で、リーグ、協会、代表だけやってます、みたいな形にならないようにしていくのが仕事。人を動かし、くっつけていくのは企業としてもやってきたことでもある」

 ファンを増やし、稼ぐ力をつけることが、代表の強化につながる。自国開催の19年W杯8強を超え、2050年までにW杯再招致を目指す上で資金力が欠かせない。

 「世界で最も規模が大きいイングランド協会は約300億円。日本協会は財力が70~80億円ある。日本が今の倍の150億円を稼げれば、グラウンドなどにも投資できる。ニュージーランドやオーストラリアと比べても、財力からいくと、日本が世界の中心になれるかもしれない。ラグビーは可能性がある」

 大きな目標に向かう力は、盟友から引き継いだ思いもある。現役時代はFW第3列を務めた土田会長。母校・同志社大で平尾誠二氏とともに戦い、大学選手権3連覇を成し遂げた。2015年6月に、協会理事に就任したのは平尾氏の誘いがあったからだった。

 「本来なら平尾がやるはずの会長ですから。一緒に(協会の仕事を)やれたのは半年くらいだったけれど、今でも一緒にやっているつもりで頑張りますよ」

 コロナ禍で思うようにいかないことも多い。関連会社でトップに就いた経験があるが、自らを「少し危険な人」と評する。

 「右肩上がりの時に社長になるタイプじゃなく、大変な時に投入した方が頑張る、と思ってます。仕事もそう」

 座右の銘「守破離(しゅはり)」は茶道や武道で修業の段階を示し、形を身につけ、他の考えを取り入れ、新しいものを生み出すことを意味する。これまでの歴史、伝統を引き継ぎ、変化の激しい世界のラグビー界で戦える協会にしていく。

 ◆編集後記

 インタビューを通して会長の立場でありながら、ファン目線を大事にしていると強く感じた。例えばリーグワンの独自ルール採用案。「スクラムは組み直さず、FKにするルールに変えたかった。誰が見ても分からないもの。あとテレビジョンマッチオフィシャル(ビデオ判定)の長さはファンを減らしている」と笑いながら断言した。W杯前年のルール変更はさすがに無理だったそうだが、ファンの不満をよく理解している、納得のアイデアだった。

 自身が携わった96~99年の平尾ジャパンの頃と比べ、「いい試合を組めばそれでいい、という昔の協会ではダメ。代表も惜しかっただけじゃダメ」とも言い切る。ラガーマンであり、ビジネスマンである新会長の手腕に期待したい。(大和田 佳世)

 ◆土田 雅人(つちだ・まさと)1962年10月21日、秋田市生まれ。59歳。秋田工高から同志社大に進学。FW第3列でプレーし、平尾誠二氏らとともに大学選手権3連覇に貢献。卒業後はサントリーに入社。日本代表キャップ1。95年に引退後、監督就任1年目で日本選手権初優勝。日本代表コーチを経て、再びサントリー監督として01、02年にチーム初の日本選手権2連覇。15年から日本ラグビー協会理事。サントリー酒類株式会社の専務執行役員、首都圏営業本部長。

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