歌舞伎俳優の中村獅童がバーチャル・シンガーの初音ミクとのコラボで古典歌舞伎とデジタル技術を融合させた「超歌舞伎2022」の東京公演が21日、新橋演舞場で初日を迎えた。客席はほぼ満席だった。
2016年に千葉・幕張メッセで行われた「ニコニコ超会議」のイベントとして誕生し、7年目。初の東京進出に獅童は「胸がいっぱい。最初から歌舞伎専門の劇場でかけたいと思っていた」と感慨深げに語り、涙ぐんだ。夏休み中ということもあり、歌舞伎には珍しく客席には小学生くらいの子供が多く、熱心な初音ミクファンの姿もあった。
「永遠花誉功(とわのはなほまれのいさおし)」を4月に幕張メッセでも見ているが、印象が違った。5000人収容の幕張ではダイナミックな照明やプロジェクションマッピングが目立っていたが、1400人ほどの演舞場では、より役者の芝居が見やすく、物語に集中できた。初音ミクの姿も演舞場の方が美しく鮮明に見える。特に舞踊を披露する場面では、指先の細かい動きや髪がなびく様子も繊細に表現されていた。
獅童は「7年目でようやく東京に進出できた」と語っていたが、その歳月によってデジタル技術を担うスタッフが古典歌舞伎の基本を理解するなど洗練されたと思う。立ち回りの場面ではLEDパネルや紗幕に映像が映し出され、デジタル技術が効果的に使われている。幕間(まくあい)では、過去の超歌舞伎の映像が流れ、自然と拍手が起こった。それは7年間の軌跡を見守ってきたファンによるねぎらいの拍手に感じられた。
超歌舞伎ファンにはおなじみだが、獅童が「最大の舞台演出」というほどペンライトは欠かせない。劇場内で販売するペンライトは14色発光に加えて6種類の音声(大向こう)が付いた豪華仕様で税込み4000円。獅童が赤、初音ミクが緑、澤村國矢が青とテーマカラーが決まっており、芝居を見ながら場面によって色を変えられるのも面白い。(有野 博幸)