毎夏恒例の日本テレビ系チャリティー番組「24時間テレビ45 愛は地球を救う」(東京・両国国技館)が27日午後6時半から放送される。3年ぶりの有観客開催となる今年のテーマは「会いたい!」。スポーツ報知では6回にわたって特集する。初回は1992年の番組内企画から生まれ、30周年を迎えた名曲「サライ」。作詞した歌手の谷村新司(73)が制作秘話、曲に込めた思いを語った。
(加茂 伸太郎)
24時間以内に新しい番組テーマソングを作る。92年、「24時間テレビ」の放送15年の目玉企画として誕生した曲が「サライ」になる。このムチャクチャな企画に、谷村は「はっ!?えっ!?無謀と思いました(笑い)。自分では、そんな企画を立てないですから」と懐かしむ。
挑戦したのは、加山雄三(85、弾厚作名義)、谷村、ピアニストの羽田健太郎さん(享年58)の3人。加山が制作したメロディーに、谷村が歌詞をつけ、羽田さんがそれを編曲した。作業時間は8時間ずつ与えられ、番組エンディングで披露した。
加山とは念願の初仕事だった。「詞は谷村で」と“ご指名”だったことを、プロデューサーを通じて伝え聞いた。「加山さんの思いに応えたいと思いました。僕ら世代にとって飛び抜けて憧れの存在。8時間で間に合うか(という不安)より、一緒に作れる喜びの方が大きかったです」
視聴者から愛のことばを募集。「このフレーズ、このキーワードを使ってほしい」。山積みされたファクスに、引っ切りなしに目を通した。「ふるさと」に関する内容が多かったため、テーマを「心のふるさと」にすると決めた。
「サライ」はペルシャ語で「家」「宿」の意味。「(米ロックバンド)サンタナのアルバム『キャラバンサライ』や雑誌『サライ』があって、いい言葉だなって。僕の中に入っていました。『サライ』には『砂漠の中のオアシス』というイメージがあったので、『心のふるさと』にうまく収められるかなと思いました」
加山から届いた壮大な曲調も相まって、最初にできたのは、サビの「サクラ吹雪の サライの空へ」の一節。「どうすればサビで、無条件にみんな一緒に歌えるか」「最後にサビが繰り返される時、どう畳み掛けるか」を意識して書き進めていった。
「まぶたとじれば 浮かぶ景色が―から、サクラという実際ある物に移っていく。歌うのは夏の終わりだけど、桜の花が舞う風景は日本人独特の心象風景。これは季節を越える(作品になる)と思いました」
30年たった今なお、「サライ」は老若男女から親しまれる。「年齢層を問わずに、愛される歌は他にない。それがこの作品の懐の深さ。ヒット曲を作ろうという感覚で作っていないですから。いつまでも、心の中で響いているような歌になってほしい」と願った。
加山とはこれをきっかけに親交が続く。脳梗塞(こうそく、19年)と小脳出血(20年)を発症後のリハビリ期間中にお見舞いの電話をすると、返ってきたのは「谷村、『サライ』一緒に歌いてえなあ」。感情を抑えきれず、谷村は受話器を手に涙した。
「加山さんらしい言い回しだったけど、本人が一番悔しいのが伝わりました…」
憧れの人は年内でコンサートを引退し、28日に両国国技館で“最後のサライ”を披露する。「『加山雄三』という存在に対して、ずっと感謝の思いがあります。尊敬の気持ちが変わることはありません。いったんピリオドを打たれますけど、いつでも戻ってきてほしい。僕らは大歓迎。何でも応援したいです」
◆アリスは結成50周年「やれるところまで」
谷村は、11月17日にアリスの単独公演「ALICE GREAT50 BEGINNING2022」(東京・有明アリーナ)を行う。「コロナ禍で3回延期になった中でも、チケットを握りしめて来てくれる。エネルギーをプレゼントしたいです」。今年結成50周年、「アリスSDGs目標 10年計画」と題した持続可能な“努力”目標を掲げる。「コロナ禍で暗い話題ばかり。『アリス、こんなことやるんだ』『どこまで続くの』『よくやるね』でもいい。明るい話題を提供できたら。我々はベストを尽くして、やれるところまでやっていきたい」と誓った。