◆第104回全国高校野球選手権大会第10日 ▽3回戦 近江7―1海星(15日・甲子園)
近江(滋賀)の今秋ドラフト候補右腕・山田陽翔(はると、3年)が投打に躍動した。投げては3試合連続の先発で7回4安打1失点、打っては7回にリードを広げる満塁弾。チームを3季連続のベスト8に導き、令和初の甲子園通算10勝投手となった。高松商(香川)は高校通算66本塁打を誇る浅野翔吾中堅手(3年)が足で魅せ、九州国際大付(福岡)を下して52年ぶりの8強入り。両者は大会第12日(18日)の準々決勝第2試合で激突する。
甲子園に詰めかけた3万人のボルテージが最高潮に達した。2―1の7回2死満塁。近江のエース兼4番・山田は宮原明弥の142キロ直球を捉えた。浜風に乗った打球は左中間席に着弾。「仲間が用意してくれたチャンス。僕自身の力ではあんなホームランは打てません。甲子園が力を貸してくれました」。右手人さし指を突き上げ、堂々とダイヤモンドを一周した。
大車輪の活躍だ。投げては3試合連続の先発で7回4安打1失点。140キロ台中盤の直球とスライダー、ツーシームなど変化球のコンビネーションで相手打線に的を絞らせなかった。令和初、史上13人目となる甲子園10勝目。10勝&グランドスラムは史上初だ。さらに9三振を奪って甲子園での通算奪三振を98に伸ばした。横浜・松坂大輔らを抜く歴代9位の数字。「偉大な方々の記録を超えさせてもらったことはうれしく思います」と静かに喜んだ。
投打に躍動する山田の原点は幼少期にある。母・淳子さん(46)によれば「よく食べる子でぷくぷくだった」。しかし、滋賀・草津市の保育園「認定こども園 みどり」に通い始めて徐々に才能が開花していく。同園は体操、水泳、サッカーなど様々なスポーツを通じて、園児の体力強化に力を入れていた。最速149キロ、高校通算本塁打30本超え、50メートル走5・8秒…。淳子さんが「小さい時に運動神経も鍛えてもらったのが大きいと思う」と言うように、抜群の身体能力の礎になっている。
7月22日の滋賀大会3回戦・甲西戦で満塁弾を放った際、高校通算本塁打数を問われ「30本くらい。数えてないです」と答えていた山田。それ以来の一発に多賀章仁監督(62)も「あそこで打つというのは本当に“持っている男”だなと改めて思いました」と絶賛した。次戦は指揮官の誕生日である18日に強打者・浅野を擁する高松商と2年連続の4強入りを懸けて激突する。「(浅野は)甲子園の舞台でしか対戦できない相手。楽しみたいと思います」と右腕。勝利という最高の誕生日プレゼントを贈るつもりだ。(南 樹広)