オカダ・カズチカの1位には納得も…5年ぶり開催のテレ朝「プロレス総選挙」ランキングに抱いた違和感

スポーツ報知
1・5東京ドーム大会での劇勝後、「声援の中で試合がしたい」と涙を流したオカダ・カズチカ。このプロレスへの熱さこそが「プロレス総選挙」1位の理由だ

 現在のプロレス界の一線で光り輝くトップレスラーたちを幅広く知ってもらう―。そうした意味では、コロナ禍による観客減に苦しむプロレス界にとって本当に価値のある番組だった。それだけに、やや偏りの見られたランキングだけが残念だった。

 13日夜に放送されたテレビ朝日系「プロレス総選挙」。「本当にスゴいと思う『現役プロレスラー』は誰なのか?」をファン1万人にアンケート調査した番組で1位に輝いたのが、新日本プロレスのオカダ・カズチカ(34)だった。

 午後9時55分から第1部としてベスト15を発表。さらに「ベスト15だけでは足りない!」というファンのために放送終了後に「メタバース六本木」(ネット配信)で16位から30位を発表。深夜にはテレ朝系地上波(一部地域を除く)で50位までの第2部「完全版」が放送された。

 第1部に出演したオカダは第1位選出に「やっぱり、うれしいですね。自分がやってきたことが認められたなと思いますし、本当にプロレスをやってきて、激しい戦いをしてきて良かったなと思いますね」と、満面の笑みを浮かべた。

 その言葉通り、07年の新日移籍以来、日本プロレス界最大の団体にカネの雨を降らせる「レインメーカー」として君臨してきたオカダの1位は誰もが納得のいくところ。ここ6年間ずっと、その背中を追いかけてきた私から見ても、常に観客の目を意識し、満員にならなかった東京ドームの客席を見て涙を流す責任感の強さは、まさに今のプロレス界のトップにふさわしいと思える。

 2位に棚橋弘至(45)、3位に内藤哲也(40)と新日のトップレスラーが続いたのも、その人気の高さ、発信力から納得。スポーツ誌「Number」が定期的に行う「プロレス総選挙」でも常に上位を占める顔ぶれだけに違和感はなかった。

 だが、その後がいただけなかった。上位15人中10人が新日勢。フリーの立場とは言え、新日が主戦場の鈴木みのる(54)が10位。15位にも新日からWWEに移籍し、スーパースターとなった中邑真輔(42)。59歳にして堂々4位にランクインの武藤敬司にしろ、現在のプロレスリング・ノア所属よりも新日時代のスーパーな輝きを色濃く覚えている人の方が多いのではないか。

 数多くランクインした女子レスラーも最高位の11位となったスターライト・キッド始めスターダムの選手が席巻。新日、スターダムと、親会社・ブシロードが共通の男女トップ団体の選手の名前が読み上げられ続ける番組内容にリアルタイム視聴した私の口からは「また、新日…」「次もスターダム?」という声が思わず漏れてしまった。

 新日の試合中心に取材し続けているが、今年は他団体の魅力的な選手を目の当たりにする機会が多かった。

 1月8日、横浜アリーナで行われた新日とノアの対抗戦では、中嶋勝彦(34)、拳王(37)というノアのトップ選手2人の強烈な打撃と殺気にあふれた振る舞いに魅了されたし、「ノアの未来」と言われる清宮海斗(26)の輝くばかりのスター性にも見入った。

 4月15、16日に行われた「格闘技の殿堂」東京・後楽園ホールの60周年大会「還暦祭」初日には、国内の女子プロレス団体14団体44人の選手が集結しての「オールスター戦」でいまだ現役バリバリの尾崎魔弓(53=OZ アカデミー)に25年ぶりに再会。抜群の存在感に圧倒されたし、数多くの魅力的な女子レスラーたちを知った。

 2日目の「新日本プロレス+全日本プロレス」大会では、メインイベントで棚橋と越境タッグを組んだ全日のトップスター・宮原健斗(33)のくどいほどの格好良さと強さ、対戦したジェイク・リー(33)の「でかくて速い」万能ぶりに驚かされた。

 ここ6年間取材し続けたことで、どこか「新日推し」になっていた私の目線を一瞬で引きつけるほどの魅力が中嶋や宮原の戦いには、確かに存在していた。だが、今回の「総選挙」で中嶋は37位で拳王は42位。宮原は48位。ジェイクに至っては、50位以内にも入っていなかった。

 もちろん、プロ野球ファンにもそれぞれのひいきチームがあるように、プロレスファンにもそれぞれの「推し」団体がある。問題は今回のアンケートがどこで行われたか。テレ朝の公式ホームページでの投票だと当然、新日ファンが集中するし、選手発表前に映し出されたアンケートに答えるファンの映像のバックには数多く、新日やスターダムの会場と思われる風景が映り込んでいた。

 この種のアンケートには話を聞くサンプル(調査対象)が非常に重要だ。新日の会場で聞けば、当然、新日内の人気投票のような結果になってしまうだろうし、それはスターダムの会場でも同様だろう。制作サイドが「では、どこに行けば公平なプロレスファンの多くの声が集められるのか?」と悩んだのは間違いないだろうが、「総選挙」と銘打つからには、サンプル集めに繊細な工夫が必要だったのではと思う。

 調査法に納得さえすれば、今回の「総選挙」結果を報じた「報知WEB」に集まった「新日やブシロードへの忖度(そんたく)が感じられる」、「新日の試合を放送しているテレ朝だと、こういう結果になるのは予想できた」などの声はなかったのではないか。

 一方で、前身のNET時代の1969年にプロレス中継を開始。来年4月には放送50周年を迎えるテレ朝と新日の熱いリレーションシップも私は知っている。

 「ワールドプロレスリング」として、70年代にはアントニオ猪木氏(79)、80年代には初代タイガーマスク(佐山聡氏=64)というドル箱スターを擁し、視聴率20%超えが当たり前。実況アナウンサーから古舘伊知郎氏(67)というスターまで生み出した。

 現在は深夜枠に落ち着いたとは言え、途切れることなくビッグマッチを放送し続けてきた同局の存在が新日のプロレス界トップの座維持に、さらにはプロレス界全体の人気維持に大きく貢献してきたことも事実だ。

 映像としてのプロレス放送に半世紀にわたって貢献をしてきたテレ朝だからこそ、アンケート法をもう一段階工夫し、多くのプロレスファンがうなづける内容に近づけて欲しかった。

 長引くコロナ禍の中、命がけの戦いを続けるレスラーたちにとって、こうした魅力的な番組が「ひいきの引き倒し」にだけはなってはならない。トップ選手たちが躍動する「プロレス総選挙」の映像をすべて、前のめりにリアルタイム視聴し終えた深夜、あくまで一ファンとして、私はそう思った。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆「プロレス総選挙」ベスト50

 ▽1位 オカダ・カズチカ(新日本プロレス)

 ▽2位 棚橋弘至(新日本プロレス)

 ▽3位 内藤哲也(新日本プロレス)

 ▽4位 武藤敬司(プロレスリング・ノア)

 ▽5位 高橋ヒロム(新日本プロレス)

 ▽6位 エル・デスペラード(新日本プロレス)

 ▽7位 ウィル・オスプレイ(新日本プロレス)

 ▽8位 鷹木信悟(新日本プロレス)

 ▽9位 ジェイ・ホワイト(新日本プロレス)

 ▽10位 鈴木みのる(フリー)

 ▽11位 スターライト・キッド(スターダム)

 ▽12位 ザック・セイバーJr.(新日本プロレス)

 ▽13位 岩谷麻優(スターダム)

 ▽14位 飯伏幸太(新日本プロレス)

 ▽15位 中邑真輔(WWE)

 ▽16位 石井智宏(新日本プロレス)

 ▽17位 ジュリア(スターダム)

 ▽18位 中野たむ(スターダム)

 ▽19位 葛西純(FREEDOMS)

 ▽20位 朱里(スターダム)

 ▽21位 グレート―O―カーン(新日本プロレス)

 ▽22位 タイチ(新日本プロレス)

 ▽23位 ケニー・オメガ(AEW)

 ▽24位 SANADA(新日本プロレス)

 ▽25位 丸藤正道(プロレスリング・ノア)

 ▽26位 小島聡(新日本プロレス)

 ▽27位 上谷沙弥(スターダム)

 ▽28位 林下詩美(スターダム)

 ▽29位 ウナギ・サヤカ(スターダム)

 ▽30位 潮崎豪(プロレスリング・ノア)

 ▽31位 藤波辰爾(ドラディション)

 ▽32位 石森太二(新日本プロレス)

 ▽33位 CIMA(GLEAT)

 ▽34位 AZM(スターダム)

 ▽35位 なつぽい(スターダム)

 ▽36位 矢野通(新日本プロレス)

 ▽37位 中嶋勝彦(プロレスリング・ノア)

 ▽38位 ジェフ・コブ(新日本プロレス)

 ▽39位 KENTA(新日本プロレス)

 ▽40位 金丸義信(新日本プロレス)

 ▽41位 鹿島沙希(スターダム)

 ▽42位 拳王(プロレスリング・ノア)

 ▽43位 真壁刀義(新日本プロレス)

 ▽44位 白川未奈(スターダム)

 ▽45位 舞華(スターダム)

 ▽46位 柴田勝頼(新日本プロレス)

 ▽47位 田口隆祐(新日本プロレス)

 ▽48位 宮原健斗(全日本プロレス)

 ▽49位 小川良成(プロレスリング・ノア)

 ▽50位 エル・リンダマン(GLEAT)

 〇…テレ朝では、2017年3月12日にも「史上初!現役・OBレスラー200人&ファン1万人が選ぶプロレス総選挙」を放送。賛否両論を呼んだ。5年5か月ぶりとなる今回は現役選手限定となったが、前回の結果は以下の通り。

 ◆プロレス総選挙BEST20(2017年3月12日放送)

 〈1〉アントニオ猪木、〈2〉ジャイアント馬場、〈3〉初代タイガーマスク、〈4〉オカダ・カズチカ、〈5〉力道山、〈6〉棚橋弘至、〈7〉ジャンボ鶴田、〈8〉獣神サンダー・ライガー、〈9〉三沢光晴、〈10〉スタン・ハンセン、〈11〉長州力、〈12〉武藤敬司、〈13〉小橋建太、〈14〉天龍源一郎、〈15〉ケニー・オメガ、〈16〉橋本真也、〈17〉蝶野正洋、〈18〉ハルク・ホーガン、〈19〉真壁刀義、〈20〉アンドレ・ザ・ジャイアント

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