幸四郎&猿之助の「弥次喜多」最新作はシリーズ最高傑作 歌舞伎愛にあふれコロナ禍の憂鬱を吹き飛ばす

スポーツ報知
「東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚」の(左から)松本幸四郎、市川染五郎、市川團子、市川猿之助(c)松竹

 東京・歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」(30日千秋楽)が5日、初日を迎え第3部では松本幸四郎、市川猿之助による「東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」が上演された。幸四郎の弥次郎兵衛、猿之助の喜多八で2016年から上演される人気シリーズの3年ぶりとなる新作だ。

 「とにかく、すごいものを見た!」。それが率直な感想だ。幸四郎、猿之助が楽しそうに芝居をしている。2人の歌舞伎への愛、コロナ禍で集客に大打撃を受けた歌舞伎座を支えてきた自負が、ひしひしと伝わってきた。でも、決して悲壮感が漂うわけではなく、とにかく明るく前向きに、コロナ禍の憂鬱(ゆううつ)を吹き飛ばしてくれる。

 猿之助は筋書きのあいさつ文で「何が何だかわからない芝居をご覧頂くべく、ないアタマを寄せ集めて、産み落としましたる流離譚。最後まで鷹揚(おうよう)のご見物の程、お願い申し上げます」とつづっている。もちろん照れ隠しも含まれているが、「何が何だかわからない」くらい歌舞伎の魅力がギューッと凝縮されていると感じた。息の合ったセリフの応酬、本水を使った大滝の立ち回り、宙乗り、ダンスバトル、無人島から長崎、江ノ島、歌舞伎座への大胆な舞台転換…。スピーディーな展開で目が離せない。

 阿吽(あうん)の呼吸で笑いを誘う幸四郎、猿之助の名コンビは健在。幸四郎の長男でNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でブレイクした市川染五郎、市川中車(香川照之)の長男・市川團子の2人は、これまで演じてきた梵太郎と政之助に加えて女形にも挑戦。高麗屋、澤瀉屋の御曹司はそれぞれ早替わりで2役を演じ、女形は美しい。さらにこの4人が宙乗りを披露すると「歌舞伎界の現在と未来」を象徴しているように感じられた。

 もうひとつ、印象的なのが今年92歳を迎える大ベテラン・市川寿猿だ。幸四郎、猿之助らに「君たちのおじいさん、ひいおじいさんの芝居も見てきたけど、先祖のみなさんに恥ずかしくないように精進してくれよ」と語りかける場面は何とも趣深い。さらに寿猿の宙乗りには驚いた。最年長記録としてギネス世界記録に申請しているという。

 有名な作品のパロディーも随所に盛り込まれ、思わず、クスッと笑ってしまう。歌舞伎の知識ゼロでも無条件に楽しめるし、歌舞伎の奥深さも実感できる。「弥次喜多」シリーズ最高傑作の呼び声もある。今月から客席制限が撤廃され、ほぼフルで販売されているが、この日はわずかに空席もあった。口コミで話題を呼び、チケット完売も時間の問題だろう。(記者コラム・有野 博幸)

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