1996年、松山商VS熊本工の「奇跡のバックホーム」 “当事者”2人の友情は続いていた

スポーツ報知
奇跡的な好返球でサヨナラ負けの大ピンチからチームを救った矢野(左から3人目)

 創刊150周年を迎えた報知新聞の特別企画「スポーツ報知150周年 瞬間の記憶」。今回は、1996年8月21日の全国高校野球選手権大会決勝で、松山商の27年ぶり5度目の優勝を引き寄せた「奇跡のバックホーム」です。高校野球ファンの中で語り継がれる名勝負を取材した豊田秀一カメラマン(59)が舞台裏を明かしました。また、延長10回に右飛でサヨナラのホームを狙った熊本工の三塁走者・星子崇さんと、ダイレクト返球で刺した松山商の矢野勝嗣さん(ともに43)の「今」に迫りました。

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 “当事者”は26年後の今も友情を紡いでいる。

 松山商の矢野は卒業後、松山大で野球を続け、2001年に地元の愛媛朝日テレビに就職した。熊本工の星子は社会人の松下電器(現パナソニック)でプレーし、現役引退後に地元で飲食店経営を始めた。

 1996年の夏以降は接点がなかった2人の人生が、13年に再び交わった。

 矢野「系列局の先輩に誘われて、初めて熊本に行ったんです。1軒目で『実は松山商の…』と話をすると『同じビルで星子がバーをやってるよ』と教えてくれたので、2軒目として行くことになりました」

 星子「すぐに分かりました。一緒にお酒を飲んでね。こうなったら潰してやろう、と(笑い)。最後は肩を抱えられて帰っていきましたよ」

 星子は翌14年、高校野球に特化したスポーツバー「たっちあっぷ」を開店。自身と矢野のユニホームも展示している。16年に故郷が熊本地震で被害を受けた際、矢野の「何かできることはないか?」という申し出に、熊本工と松山商とのチャリティーマッチ開催を提案し、実現に至った。

 今年4月に営業部部長となった矢野。「若いころは、あのバックホームのような(世間の)印象に残る仕事ができず、重荷になっていました」。だが「今では仕事の取っかかりになっています」と笑って振り返る。

 星子はコロナ禍で今年2月まで「たっちあっぷ」休業を余儀なくされたが、別の飲食店経営が好調。「お客さんは戻ってきてくれたんですが、ウチは(書き入れ時が)夏なんでね…」。松山商の主将だった今井康剛がしばしば来店するそうで、昔話に花を咲かせている。(田中 昌宏)=敬称略=

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