Kis―My―Ft2藤ヶ谷太輔インタビュー…前編ロングバージョン

スポーツ報知
ジャニーズ「J」DX

 Kis―My―Ft2の藤ヶ谷太輔(35)が成熟した大人の男の輝きを放っている。2週連続のインタビュー前編は「表現編」。イプセンの戯曲に初挑戦する主演作「野鴨―Vildanden―」(演出=上村聡史、9月3~18日、東京・世田谷パブリックシアター)の稽古秘話や、18年の主演舞台を映画化した「そして僕は途方に暮れる」(三浦大輔監督、来年公開)での生みの苦しみについても告白。まもなく最終公演を迎える5大ドームツアーでの経験を通じ、グループの意義にも気づいたという。

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 表現者という観点で藤ヶ谷を語る時、生まれ持った華以上に際立つ彼の才能は「苦悩できる能力」である。どの作品においても、根底にあるのは葛藤する楽しさだ。

 「演劇は間隔空けずにやりたいな、と思います。満足がないじゃないですか、演劇って。『楽しいな』と『俺ダメかも』の繰り返し。舞台は怖いし、セリフ覚えなきゃいけないし、極端な話、見に来ていただける方は限られる。でも小手先じゃなくてうまくなりたいし、つかみたくて、もがきたい。こういうと、なんかドMっぽすぎますけど、いろんな演出家の方にお会いして、いろんな作品に出会って、自分も変わりたいし、気づきたいって思うのが自分でも不思議なんですよね」

 このほど稽古が始まった「野鴨」は、ノルウェーの劇作家イプセンの悲喜劇。藤ヶ谷演じる主人公・グレーゲルスは、かつての親友に再会したことを契機に、独善的な正義感に突き動かされる。「古典作品と呼ばれるものをやるのは初めて。原作や台本を読んだ時、まず『難しい』と思った。ですが2周目、3周目って読むうちに『これ、すごい面白いな』って。正義によって幸せになるのか、不幸になるのかは現代にも通じますし、だから語り継がれる作品なんだと思います。おすすめは(劇中の)家族構成とか、いろいろ情報を事前に入れて見ていただければ。『この人のこのセリフってここにかかってるんだな』というのが結構ありますので…」

 演出の上村氏が主導し、作品について意見交換する「テーブル稽古」も刺激的だった。「みんなで話すんです。例えば『久しぶりだな』というセリフがあったら、これ何年ぶりに会ったっていうことにします? 最後に会ったのはどの場所?と、自分の役だけではなく話していく。当時の時代背景やお国柄を知ることで劇中の『神』や『銃』というセリフが何かのメタファー(隠喩)なのではないか、とか。あとは上村さんはすごく音にこだわる方なので、『語尾を替えてみてほしい』とか、そういう作業中。僕らにしかできない『野鴨』を新しく作ってるって感じです」

 人間のヒリヒリした部分を描くことに定評のある劇作家の三浦氏とタッグを組んだ18年の舞台「そして僕は途方に暮れる」は、映画として再び生まれ変わり、来年の公開を控える。撮影は既に終えているが「基本的に一発OKがない。何十回、何百回とかそういう感じだったので…疲弊しましたね」と、心身がすり減るような時間だったという。

 「三浦さんって不思議なんですよ。普段はすごい優しくて『時間かかっちゃってごめんね。できるだけ巻くね』と言ってくれるので、その三浦さんと、モニターの前に行った時の三浦さんは違う(笑い)。氷点下2度の北海道で朝から(翌日の)朝まで26時間撮りましたからね」

 ストイックな演出にも必死に食らいついた。「三浦さんの頭の中で3パターンぐらい考えながら編集をしているみたいで、そのOKに当てていく、今までにない感覚だった。『疲弊した』で終わりじゃない。だからこそ出たものもきっとあるだろうと今は思いますし、それが1ミリでもスクリーンに出ていればいいな」。自分の経験値を上げてくれるような出会いだった。

 「『華麗なる一族』(21年、WOWOW)も精神的に引っ張られる役だった。僕、ポップな作品とか純愛って全然来ないですよね。デビューしたときとかはやっぱりキュンキュンさせたいし、してもらいたいってありましたけど、今はなんか冗談で『純愛来ないな』とか言っちゃってますもん」と苦笑するが、それでも「僕はやっぱり俳優じゃなくて、ジャニーズなので」と、自分の現在地を探してさまようことはない。

 「僕もいろんな舞台を見に行ったとき、こういう役者さんいらっしゃるんだとか、この演出家の方が次はこれやるんだとか、知らないものに触れて、調べて足を運ぶみたいなのがある。だから舞台畑の方が、もし見にいらしてくれたとき『あの人キスマイなんだ。ライブ行ってみようかな』となったらグループのためにもなる」。無意識に区分されがちなエンタメの境界線をぼかすような役割を藤ヶ谷自身が担っているように見える。

 「ジャニーズの中で初めて自分が三浦さんとご一緒して。そのあと(Hey! Say! JUMPの)高木(雄也)が舞台(「裏切りの街」)をやることになった。彼とはあんまり接点なかったんですけど、不安だったのか(昨年の)カウントダウンで『藤ヶ谷さん、僕実は三浦さんとやるんですけど、どういう方ですか』って話しかけてきてくれた。なんとなく僕は高木につなげられたような気がして。ザ・演劇の人たちとジャニーズが組んだって絶対いいし、そういうサイクルが大きくなったらいいなって思います」

 個人の活動で生みの苦しみを味わえたからこそ、キスマイの活動にも深みが加わっている。現在1年遅れの10周年ツアーを開催中。3年ぶりの有観客ドームのステージに「ホント、ありがたいなって思いました。当たり前のようにライブをやらせてもらったり、CDを出させてもらってきて、それが1回コロナで止まって…。お客様がいらっしゃらない状態でもライブをやったこともある。今回、マスクで声も出せないけど、こっちに届くものもあるし、皆さんの前で表現できるありがたさを心から感じました」と支えてくれたファンヘの思いを一番に語った。

 ともに歩んできたメンバーへの思いも強い。「楽しいです、キスマイって。いまだにちょっとした下ネタとかで盛り上がる時もあって、すごく懐かしい感じがする。この仕事をしてなくて、学生時代7人で同じクラスだったら超面白いな、って。ステージ上もすごい大事だけど、変わらない楽屋でくだらない話してる時の感じが、懐かしくて。普段のコミュニケーションによってお互いの体調とかリズムとかをなんとなく察知する。楽屋でためて、積み上げてったものがお客様の前に出る。ああいう時間が僕にとってはすごく大事だと思います」

 内面の変化もあった。「年齢を重ねるにつれて『ありがとう』と『ごめんなさい』は大事にしなきゃなって思うようになりました」。手に取った本の「人間は知らないうちに信頼の貯金をしている」という一節に感銘を受けた。「何か取ってもらって『ありがとう』とか、曲中にぶつかって『さっきはごめんね』って頭を下げられるかってことなんじゃないかな。プロとして見せたい表の姿があるのなら、裏側をどうするかってことこそ大事だって気づいて。自分は今、そういうマインドになっていて、メンバーともすごくいい関係性。30代って感じの、リアルな距離感ですよ」

(ペン・宮路美穂)

 ◆藤ヶ谷 太輔(ふじがや・たいすけ)1987年6月25日、神奈川県生まれ。35歳。98年にジャニーズ事務所に入所。2004年に前身の「Kis―My―Ft.」を結成し、翌年現体制に。11年8月、シングル「Everybody Go」でデビュー。14年「劇場版仮面ティーチャー」で映画初主演、同年にベストジーニストを受賞し16年に殿堂入り。19年にNHK紅白歌合戦初出場。今月17日に新曲「Two as One」をリリースする。

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