◆YBCルヴァン杯▽準々決勝第1戦 横浜FM1―3広島(3日、Eスタ)
横浜FMは敵地で広島に1―3と敗れた。0―1の後半開始1分にFWレオセアラが同点ゴールを決めるも、同26分にCKの流れから失点し、試合終了間際にもFKのこぼれ球を押し込まれた。マスカット監督が「広島の勝ちに値する結果。全体的にばらつき、形ができなかった」と振り返ったように、チーム全体として機能せず、敵地で完敗。2年ぶりの8強進出をかけ、10日の第2戦(ニッパツ)で勝利を目指す。
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MF吉尾海夏にとっては、背水の陣だった。「チーム、個人としても納得できないゲーム。久しぶりのゲームでやったことない左サイドだったけど、自分は『どこのポジションがいい』とか言ってる場合ではないので、どこで出ても自分の力を出してチームの勝利に貢献できればと準備してきた。結果を出せなくて悔しいし、自分自身にすごく残念な気持ち」。顔をゆがめながら言葉を絞り出した。
公式戦出場は約2か月ぶり。先発出場にさかのぼれば、3月12日のJ1札幌戦以来の起用だ。初めての左FW。コンディションは「悪くはなかった」としたが、「ボールを受けた後のつながりがうまくできなかった。もっと左サイドでいい距離感で崩す回数を増やせたら」とDF小池裕太や中盤との連係も思うようにかみ合わず、後手を踏むシーンが増えた。
後半7分、FWレオセアラの折り返しに飛び込むチームにとっても数少ない決定機で放ったシュートはわずかにそれた。地面を強くたたきつけ、悔しさをあらわに。「ああいうところを決めきるか決めきらないかで世界が変わってくる」。プロとして、言い訳はしなかった。与えられた時間とポジションで役割をこなすことができなければ、居場所はない。17年のトップチーム昇格後、仙台、町田と武者修行に出た。結果を残す重要性はよく理解している。
リーグ首位を走るチームで、定位置を勝ち取ることは容易でない。FWエウベル、MF西村拓真とウィング、トップ下ともに戦力は豊富。特にウィングで出場する選手は、左右ともに高いレベルでこなす。先月の日本代表活動で右膝前十字靱帯(じんたい)損傷の大けがを負ったFW宮市亮が不在だが、だからこそ吉尾にも一層の奮起が求められた。
レベルの高い環境での成長を実感しつつ、試合に出られず「もどかしい」「苦しい」と胸中を語ったこともあった。ようやく巡ってきたチャンス。勝利は当然のこと、攻撃陣として得点に絡んで爪痕を残したかった。ただそれ以上に、チームが前提とする献身的な守備や徹底したハードワークといった、”がむしゃらさ”を前面に出すこともより必要だったように感じる。そのがむしゃらさは吉尾に限らず、チーム全体に必要だったことだ。最後まで追う、奪いきる、一歩の寄せ…。今季横浜FMに復帰して挙げた初ゴール(3月・清水戦)は、前線でしつこく仕掛け続けた守備から生まれた得点だったことを思い出す。
厳しい現実と向き合う状況を、吉尾が一番感じているはずだ。それでも最後は、必死に食らいつく覚悟を示した。「過去のことは、しっかり切り替えないといけない。次いつ、どのポジションでどのタイミングで出られるチャンスがやってくるかはわからない。だけどまだまだ修正できるところはあるし、ポジティブに捉えれば成長できるということ。下を向かず、顔を上げて練習から取り組んでいきたい」。反骨心もパワーに、もっともっと泥臭く、タフに戦う吉尾海夏を見せてほしい。(小口 瑞乃)