横浜FM マーケティング本部から見る創設30周年、DeNAとのコラボは「継続したい」…インタビュー前編

「I☆YOKOHAMA SERIES」で横浜FMのMF水沼宏太(左)はコラボユニホームを着用して始球式に登場(横浜F・マリノス提供)
「I☆YOKOHAMA SERIES」で横浜FMのMF水沼宏太(左)はコラボユニホームを着用して始球式に登場(横浜F・マリノス提供)

 横浜FMは今シーズン、クラブ創設30周年を迎えた。チームは3季ぶりの王座奪還を目指し、現在リーグ首位を走る。ピッチ外でも節目の1年を盛り上げるべく、様々な部署が一丸。中心の一人として動くマーケティング&コミュニケーション部の永井紘さんがこのほど取材に応じ、創設30周年にかける思いやクラブとしての取り組みについて語った。インタビュー記事の前編は、6月下旬開催の「I☆YOKOHAMA SERIES」と冠された試合をはじめとした、節目のシーズンを彩る事業面の施策について。(取材=小口 瑞乃)

―始めに、マーケティング本部に所属する永井さんの普段の仕事内容は。

「マーケティング本部には3つの部署が入っています。スポンサーを担当する法人営業部、グッズを扱う商品事業部、もう一つが僕たちのいるマーケティング&コミュニケーション部。マーケティング&コミュニケーション部にも試合運営チームやチケットチーム、プロモーション広告を考えるチーム、SNSやデジタルコンテンツを扱うチーム、あとは公式サイトなどのオウンドメディアチーム、ファンの方々によりクラブのことを好きになってもらうためにどうしたら良いか考えるチームと、大きく分けて6チームあります。自分はその6つのチームを見ています」

―今シーズンは同じ横浜に拠点を置き、同じく30周年を迎えたプロ野球球団「DeNAベイスターズ」とのコラボ企画を実施。6月には「I☆YOKOHAMA SERIES」と銘打った冠試合を横浜FMは柏戦で、DeNAも3試合を行い、コラボユニホームの着用、DeNAの試合の始球式に横浜FMから3選手が登場するなど、話題を呼んだ。どういった経緯でタッグを組んだのか。

「きっかけは去年頃、ベイスターズさんからお話をいただいたことでした。社内アンケートで、コラボしたい先の希望にF・マリノスが上位に来ていたようです。ただ最初は人材交流、いわゆる総務人事系の話でした。そこから双方で話が広がり、始めは一番やりやすいグッズのコラボがスタート。その後、グッズだけではもったいないとお話をいただいて。僕らとしては同じ横浜を代表するチームとして一緒に何かの取り組みをしたい気持ちは前々からあったので、かなり前のめりにつないでほしいと頼みました」

―グッズ製作から記念試合開催に至るまで、かなりスピード感があった。

「ベイスターズさんも非常にテンポの良い会社で、我々も負けないようにテンポを上げて食らいついていった感じでした」

―様々なコラボ企画を進める中で、特に難しかったことは。

「自分はあまり絡んでいないのですが、コラボユニホームはサプライヤーがそれぞれ違うので、調整は大変だったと聞いています。僕らのところで言えば、ベイスターズさんはF・マリノスが記念試合をする裏で試合をしていたので、コミュニケーションの仕方を考え、少し割り切った部分も大きかった。こういったコラボの場合、ベイスターズのファンをF・マリノスの試合に、F・マリノスのファンをベイスターズの試合に来ていただく仕掛けを作る、というのがオーソドックスですが、今回は試合日が重なっていたので。マーケティング戦略上そういう手段は取らずに、F・マリノスとベイスターズがコラボするという話題を横浜市民全体に知ってもらい、想起させる運びをイメージしていました。僕たちはスポーツに関心はある一方、特定のチームのファンではない方を横浜の『ライトスポーツ関心層』と呼んでいますが、戦略を立てて、そうした方々をお互いの試合に呼べたらいいなと。そこは通常と違うやり方でした」

―野球は週6日試合がある。

「ことごとくかぶってしまって(笑)。本当はベイスターズさんの選手やマスコット、チアリーディングチームに来てもらいたかったですが、制約がある中でどう頭を使うかは大事でした」

―一方、DeNAの試合では横浜FMから水沼宏太、仲川輝人、マルコスジュニオールの3選手が始球式に登場。他の選手も試合観戦に駆けつけた。実際の盛り上がりはどう感じたか。

「やって良かったと思いますし、クラブとしても頼まれて行くというよりは、『ぜひ行かせてください』くらいの気持ちでした。ベイスターズさんからするとF・マリノスの試合に来られない分、遠慮もあったようで。でも僕らからすると普段行けないところに選手やマスコットが出ることはマーケティング上もすごく価値があることだと思いますし、単純に異業種コラボでここまで踏み込んだことはなかなかできない。知ってもらう意味でも、インパクトはあったと思います」

―始球式に登場した選手の反応は。

「初日の水沼選手とは話をして、本当に楽しそうでした。3選手を決める時も、チーム統括本部(強化部)の方々に主旨を説明して理解をもらうことができた。オフを挟んでいたこともあって、3日間連続で選手を出すことはしっかりと説明をしないといけない。ただ、意図を説明して、選手はもちろんチームも快く前向きに応援してくださり、そこの調整はスムーズにいきました」

―柏戦、DeNAの3連勝と、記念試合は結果も伴った。

「非常に縁起のいいコラボになったのは事実ですし、ベイスターズさんのチーム側からも『縁起がいいからまた動きたいね』といった声はいただけたようです。これだけきれいに成功するケースはなかなかないので、今回の経験は大事にしたいです」

―水沼選手はDeNAの山﨑康晃投手と、子どもたちに「夢」の大切さを伝えるオンライン学校訪問にも参加。

「『1クラブ、1球団だけではできないことをやろう』というのがコンセプトにありました。プロの異業種の選手が来るのはなかなかないこと。これも僕らだけではなく、普段、地域の皆さんと連携しているホームタウンを担当する部署と一緒に動きました。今回のコラボで象徴的だったのが、僕らの部署だけで動くわけではなく、グッズやチケット、スポンサー、ホームタウンと、いろんな部署が関わったこと。登場人物が多いのは、すごく特徴的でした」

―一つのことに向かっていく熱を社内全体でも改めて感じた。

「もちろんホームゲームやみんなでやれることはありますが、ベイスターズさんとのコラボという切り口で見ても、いろんな部署がベイスターズさんのそれぞれのチームともつながって。お互いにパイプがしっかりとできたことも良かったと思っています」

―今後もDeNAとのコラボ企画を行いたい。

「僕らは何かしらの形で継続したいです。コラボユニホームにしても過程を隣で見させてもらいながら、同じコンセプトで作ることは口でいうよりかなり難しかったので、あのような形で世に出た時は感慨深いものがありました」

―7月2日には国立競技場で清水エスパルスの30周年記念試合があった。同じオリジナル10同士の対戦。横浜FMとしても特別な試合の一つになったのでは。

「まず、静岡のチームが国立競技場で試合をする大変さは、同じ立場で仕事をする我々としてはわかるので素晴らしいなと。すごいチャレンジをしているなと、一番にリスペクトの気持ちがありました。その上で我々を対戦カードにしてくれて。非常にありがたいですし、5万6131人ものお客様に来ていただけたことは、『Jリーグの底力』も示せたのではないかと思います」

―コロナ禍も相まって、Jリーグ全体の観客数が伸び悩んでいる現状はある。

「もちろんそれは思っていますが、段階を追うものだとも感じています。急にコロナ前の状態を継続的に再現するのは難しいと思うので、クラブとしては段階を踏んでお客様に戻っていける状況を作りたい。そういう意味では、今は予想通りというか。順調に回復している状況ではあります。なので、中断明けの鹿島戦(7月30日)は一つの大きなヤマ場。秋以降の感染状況はまだわからないですが、多くのお客様にご来場いただける状況であれば、一人でも多くの方にサッカーを生で見る良さを伝えられたらと思います」

―首位攻防戦となる鹿島戦は試合前にOBマッチを実施。クラブの歴史を築いてきた選手が登場する力を入れたイベントの一つに感じる。

「実際にクラブの歴史を知っている方々が動いて、OBの方に電話して募ってくださった経緯があります。あれだけのメンバーに来ていただけるのは、非常にクラブとしてもありがたいですし、OBマッチはやれそうで実は難易度が高い。公式戦が行われる前に同じピッチでやることが難しくて、あまりないと思うんです。スタジアムの皆さんにも相当ご尽力をいただいて実施できることになりました。OB戦を一つとっても、本当にたくさんの協力のおかげで成り立っている。クラブは改めて多くの方々に支えてもらって30年続いているのだと、いろんな面で感じることができました」

※シーズン開幕時の新体制発表会でお披露目された「クラブフィロソフィー」について語った後編は近日公開予定。

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