もうブレイクした、といっていいだろう。高卒3年目・岡林勇希外野手が竜のレギュラーをつかんだ。オープン戦中に負傷し、右手の指2本が思うように使えないまま迎えたプロ初の開幕スタメンで3安打。主に右翼、中堅でチームトップ88試合に出場し、前半戦を終え打率2割8分と奮闘を見せている。
菰野高から2019年ドラフト5位で入団。新入団発表では外野手と投手の二刀流に意欲をみせたこともあった。しかし、類いまれな打撃センスを生かすため、1年目から野手に専念。本格的に外野手としてスタートしてから、実質2年でその座を射止めた。前半戦を総括した立浪和義監督も「今年はゴールデン・グラブのチャンスもある」と高評価。その一方で、本人は「そう言っていただくのはうれしいですけど、まだまだその域に達してない」と謙そんした。
今季、岡林の守備力向上を陰ながら支える2人がいる。一人目は、福留孝介外野手。日米通算2450安打の卓越した打撃はもちろん、守備や走塁の技術面でも多くの〝引き出し〟を持つ。岡林がここまでで「今年一番のプレー」と挙げた場面も、福留のアドバイスがあった。
5月24日の西武戦(バンテリンD)。3回2死二塁で、川越が放った右翼へのライナーに前進。スライディングキャッチでピンチを救った。岡林は「ベンチから『右中間寄り』『前へ』と福留さんにアドバイスをもらった。本当に、ドンピシャで落下点に打球がきた。ど派手なファインプレーじゃないですけど、あのプレーが一番印象に残っている」。今季、何度も岡林の好守を“演出”した45歳のベテラン。2軍降格する前の日本ハム戦(札幌D)では「明日から1軍にいないから、今日は一人でポジショニングを考えてみろ」と〝最終試験〟を課されたが、それも見事にクリア。自信はさらに深まった。
もう一人は、昨年ロッテから移籍し、公私ともに仲が良い加藤翔平外野手。加藤翔は岡林を「クソ生意気な後輩」と表現するが、20歳の成長を確実に感じとってきた。普段からベンチでたわむれ合う写真がSNSに拡散されているが、ロッカーも近い先輩に、毎日のように教えをもらっている。
加藤翔が特に目を見張るのが「1歩目の早さと吸収力」。試合前のフリー打撃では、打者が打つ、より実戦に近い打球に対し、各守備位置で捕球を行う〝打球捕〟という練習がある。加藤翔は「昨年まではそんなにうまいとは思ってなかったけど、今年は打球捕でも試合でも1歩目がとにかく早い。福留さん、大島さんといういいお手本がいて、その守備姿勢を観察し、吸収する能力が圧倒的に優れている」。それを聞いた岡林は「翔平さんにほめられるのが一番うれしい」と、いつものように抱きついていた。
落ち込んだときは、お笑いコンビ「NON STYLE」の漫才を見てはゲラゲラ笑い、奮発して買った高級ブランドのショルダーバッグに“タコさんウインナー”のキーホルダーをつけ、バンテリンドーム前にあるイオンで「やっぱ誰にもバレないわ〜」と一人で「スガキヤ」ラーメンをすすりながらウキウキでLINEしてくる、どこまでも無邪気な背番号60。将来を見据え、二塁の練習も行いながら日々成長を続けるバヤシに、後半戦も目が離せません。(中日担当・長尾 隆広)
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