【羽生結弦 あの瞬間】「ものすごく、自分でいられるな、って思って」…フリープログラム「SEIMEI」

スポーツ報知
四大陸選手権の表彰式で日の丸をまとう羽生結弦(カメラ・矢口 亨)

◆フリー「SEIMEI」(15~16、17~18年シーズン、20年)

 フィギュアスケート男子で2014年ソチ、18年平昌五輪を連覇した羽生結弦さんが、第一線から退きプロへの転向を表明した。スポーツ報知では21日から希代のスケーターを振り返る連載「羽生結弦 あの瞬間(とき)」をスタート。長らく羽生さんを取材してきた高木恵記者のコラムと矢口亨カメラマンの秘蔵写真でプレーバックする。

 全てがスローモーションとなって、今も脳裏に刻まれている。何度も繰り返されたガッツポーズ。氷上での雄たけび。右足首をいたわる姿。両腕を広げたフィニッシュでの笑顔の「ドゥン」。私はこれを見るために平昌へ来たのだと確信した。

 羽生結弦の代表作と言って真っ先に浮かぶのが、フリー「SEIMEI」だ。右足首の大けがから4か月ぶりの実戦となった18年平昌五輪。66年ぶりの連覇が決まると、羽生の目にはみるみると涙がたまり、こぼれ落ちた。

 2シーズンと1試合で使用した。「ここまで和のプログラムを出せるのは今の日本男子で僕しかいない。僕だから出せる繊細さや力強さがあると思う」。最初の15―16年シーズンを迎える前の羽生の言葉だ。力強いジャンプ、しなやかな手足の動き。フィギュア史に刻まれる名プログラムとして、語り継がれていくことになる。

 15年12月のGPファイナルで219・48点をマークし、NHK杯から2戦連続で世界歴代最高得点を更新した。当時のコメントを読み返した。「僕にとって世界最高得点という評価はうれしいし大事だけど、それ以上にどれだけ自分の演技を極められるか、どれだけ一つ一つの要素や表現というものを極められるかが大事」。羽生の理想のフィギュアスケートは、今も当時と変わらないことがわかる。

 平安時代の陰陽師・安倍晴明を題材にした野村萬斎主演の映画「陰陽師」で使用された曲で、羽生が「SEIMEI」と名づけた。曲の編集にも携わり、冒頭には心を整えるため「ふーっ」と自らの息の音を挿入した。狩衣(かりぎぬ)をイメージした和の衣装が、羽生のスタイルの美しさを際立たせた。

 シーズン途中の20年2月の四大陸選手権。フリーを「SEIMEI」に変更し、ジュニアとシニアの全主要国際大会を制する「スーパースラム」を男子で初めて達成した。「ものすごく、自分でいられるな、って思って」。苦しくもあったシーズンの最後となった大会で、自分らしさを取り戻すきっかけをくれたのも、この曲だった。(高木 恵)

 ◆矢口が撮った

 発行5万5000部突破のベストセラー「勉強が面白くなる瞬間 読んだらすぐ勉強したくなる究極の勉強法」(ダイヤモンド社)の著者、パク・ソンヒョク氏によると、自分の人生の主人公は自分だと理解している人は魂が強いのだという。

 羽生は2020年2月、韓国・ソウルで行われた四大陸選手権で優勝。男子で初めてジュニアとシニアの全主要国際大会を制する「スーパースラム」の金字塔を打ち立てた。迎えた表彰式。フリーで演じた「SEIMEI」の曲が流れると、陰陽師になり切った羽生がリンクに姿を現した。私はシャッターを切りながら、その圧倒的な主人公感を爽快だと思った。

 年を重ねるにつれて忘れがちになる「自分の人生の主人公は自分」という当たり前の事実を、羽生はしっかりと理解している。それはきっと、彼が強くなれた理由。そして、私が羽生を好きな大きな理由の一つだ。(写真部・矢口 亨)

 ◆写真集「羽生結弦 2021―2022」発売

 スポーツ報知は、フィギュアスケート羽生結弦選手の昨季を振り返る写真集「羽生結弦 2021―2022」を今月29日に発売します。前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を追った羽生選手の挑戦の軌跡を、カバー、表紙、本文166ページを合わせた204点の写真で振り返ります。サイズは、297ミリ×297ミリの正方形。定価3850円(税込み)です。お買い求め希望の方はYC(読売新聞販売店)か、各書店でお申し込みください。ショップ報知でも購入できます。お問い合わせは報知新聞社TEL03・6831・3333 出版部まで。報知新聞社

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