第167回芥川賞・直木賞の選考会が20日、東京・築地「新喜楽」で行われ、芥川賞は、高瀬隼子(34)さんの「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)に決まった。2度目の候補入りでの受賞となった。
元新聞記者で作家、社会学者として活動。元セクシー女優という異色の経歴も持つ鈴木涼美(すずみ)さん(39)が選に漏れた。
芥川賞は今回、史上初めて候補者全員が女性となり、話題を呼んだ。
芥川賞、直木賞はともに1935(昭和10)年に制定。芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られる。前者は主に無名・新進作家、後者は無名・新進・中堅作家が対象となる。
受賞者が都内および近郊在住の場合、発表当日に共同記者会見を開催する。贈呈式は8月下旬に都内で行われ、受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が与えられる。
前期・第166回の芥川賞は、砂川文次さんの「ブラックボックス」、直木賞は今村翔吾さんの「塞王の楯」と米澤穂信さんの「黒牢城」が受賞した。
芥川賞は5人中4人が初のノミネート。鈴木涼美(すずみ)さんは元新聞記者で作家、社会学者として活動。元セクシー女優という異色の経歴も持つ。歓楽街で生きる娘と死を前にした母の関係を描いた初の中編小説で候補入りした。小砂川(こさがわ)チトさんと年森瑛(あきら)さんの作品は今年の群像新人文学賞と文学界新人賞の受賞作。山下紘加(ひろか)さんは2015年、文芸賞受賞。祖母の介護に奔走する19歳の女性を描いた物語だった。高瀬隼子(じゅんこ)さんは19年デビュー。前々回に続いて2回目の候補入りだった。食べ物を軸に職場の人間関係を描いた作品だった。
◆第166回芥川龍之介賞 その他の候補作(掲載誌)
▽小砂川チト(32) 初の候補入り 「家庭用安心坑夫」(群像6月号)
▽鈴木涼美(39) 初の候補入り 「ギフテッド」(文學界6月号)
▽年森瑛(27) 初の候補入り 「N/A」(文學界5月号)
▽山下紘加(28) 初の候補入り 「あくてえ」(文藝夏季号)
◆芥川賞選考委員
小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、平野啓一郎、堀江敏幸、松浦寿輝、山田詠美、吉田修一(吉田氏は書面回答、松浦氏はリモート出席)
※五十音順・敬称略