国内組で臨むE―1選手権は19日に開幕し、4大会ぶりの優勝を目指す日本代表は初戦で香港と対戦する。18日は、千葉市内で非公開練習(冒頭15分間公開)を行った。けがから復帰し、10年ぶりに代表招集されたFW宮市亮(29)=横浜M=はプロでいられるありがたみを感じ、代表のピッチへと立つ。「苦しいところからはい上がっていく姿を見せたい」と、待望の代表初得点も見据えた。
キリッとした表情の宮市は静かな闘志を燃やした。「チームでE―1を勝ち取るためにできることを最大限する。自分なりに苦しい経験もして、苦しいところからはい上がっていく姿は見せたい」。19歳のA代表デビューから3709日(10年57日)。高校卒業後、イングランド・アーセナルに入団した10代の頃は理想や自分への期待から「焦り」が先行したが、人間的に成熟。「(代表の)エンブレムをつける誇り」も胸に待望の初ゴールを狙う。
欧州で過ごした10年の一番の変化は「本当の意味で感謝できるようになった」ことだと振り返る。けがを繰り返し、17年には3度目の前十字靱帯(じんたい)損傷で医師から引退宣告を受け、「一日一日を大事にしよう」と心構えは変わった。ドイツで同じく膝のけがに苦しんだ元日本代表DF内田篤人氏の言葉に「いつもポジティブになれた」と前向きに。10代の頃から慕う日本代表DF吉田麻也は「選ばれたことに満足するのではなく、上を目指して」と代表復帰を喜んでくれた。先輩からのエールも刻み、ひたむきなプレーで代表チームに大きな力をもたらす。
プレー面の進化も遂げてきた。欧州でも評価されたサイドを切り裂くスピードは健在。加えて状態が上向いた今季はプレーの幅も広がった。献身的な守備、狭いエリアに入り、味方を生かす…。特に得意とする左FWに入ると、磨きがかかった。「周りを見て学んだり盗むこと」を重ね、ここまで3得点3アシスト。クロスが武器のMF水沼ら様々なタイプの選手がそろうJ1首位チームでの吸収は大きい。
描いた理想と違うキャリアにも、「今の自分は好き」だと語る。どん底を味わい、現実と向き合ってきたからこそ「野心」は持ちすぎない。目の前の練習や試合の一つ一つに打ち込むことが、何よりのW杯への近道と信じる。「本当のA代表に絡んでいけるようにまずはここでしっかりプレーしたい」。代表への「返り咲き」はここがスタート。この日の最終調整でも笑顔がはじけた宮市は、ピッチに立てる喜びを誰よりもかみ締め、チームを勝利へ導くためにひた走る。(小口 瑞乃)