進化し続ける夢のドラフト会議 極私的セレクトセール論

スポーツ報知

 今年で25周年を迎えたセレクトセールが11、12日の2日間、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われた。記者は17年以来、2度目となる現地取材だったが、しっかりと新型コロナウイルス対策を講じたうえで、熱気と華やかさは相変わらずだと感じた。なにせ間髪入れずに次々と数百万、数千万円と入札金額が上がっていく世界。さらに今年の2日間の落札総額は、これまで最高だった昨年の225億5600万円を大幅に更新して、257億6250万円にはね上がったのだから、本当に不景気どこ吹く風である。

 1億円を超えるような高額落札馬は、一族に活躍馬を擁するなどの優れた血統背景はもちろん、実際の馬っぷりや筋肉の良さなどから高い評価を受けていた。それでも2億も3億もする超高額馬が必ずしも活躍するわけではないのが、なんとも難しいところ。その一方で今年の宝塚記念で3度目のG1制覇を果たしたタイトルホルダー(牡4歳、美浦・栗田徹厩舎、父ドゥラメンテ)は、18年のセレクトセール当歳で2000万円と比較的リーズナブルな価格(とは言え、高い買い物には間違いないが)で落札されていたように、このセールに上場される馬たちには“大物”が必ずいる。14年から毎年多くのG1馬を輩出し続けているのは、その何よりの証拠である。そんなトップレベルのセリを取材していると、知らず知らずのうちにデジャブに襲われた。そう、記者が以前にアマチュア野球担当を務めていた際のプロ野球ドラフト会議の雰囲気が思い起こされてきたのだ。

 甲子園を沸かせた怪物や大学、社会人野球界のスーパースター―。ドラフト会議でプロ球団から指名される選手は、誰しも秀でたプレースタイルや特長を持つ。プロ球団との交渉権が確定した選手の取材では、どの選手も夢のあふれる目標を意気込み、ペンを握るこちらも「どんなすごい選手になるのだろう」とワクワクしたものである。だが毎年選ばれる全12球団のドラフト1位選手が、その後大成したかと言えば、必ずしもそうとは言えず、一方で下位指名からでもトップクラスに上り詰めた選手はあまたといる。

 実際に私が担当だった当時のドラフト世代で、堅実な守備に定評のある大学生の内野手がいた。さらに俊足も魅力とあって「守」と「走」は申し分なかったが、一部では非力な打撃がネックだとバックネット裏ではささやかれていた。結果的にその選手は某球団にめでたく1位指名されたのだったが、他球団の某スカウトが「下位でならなあ…」という評価をしていたことを思えば、これほど見方が違うものかと驚いたものである。

 要は何が言いたいかと言うと、乱暴な例え方かもしれないが、競走馬も人間のプロスポーツ選手も同じ“アスリート”だと見ていいだろう。ドラフト会議やセール時点での完成度や順調度(常にケガやアクシデントは付きものですからね)によって、評価のされ方は様々であり、いずれもプロデビュー後の成績が一筋縄ではいかない理由の一つに思える。1歳部門の総括で日本競走馬協会の吉田勝己理事は「セリというのは、販売申込者にとっても、購買者にとって真剣勝負の場。販売申込者はより良い上場馬を揃えるために血統レベルを上げ、また飼養管理技術も向上させている」と語ったが、「競技」としてとらえた場合に共通する真理があることを示唆していると感じる。

 ここで話を本題に戻すと、今年の1歳部門の最高落札額はモーリス産駒の「モシーンの2021」(牡)で4億5000万円もの値を付けた。当歳部門はドゥラメンテ産駒の「シャンパンエニワンの2022」(牡)で3億2000万円。いずれも母馬は海外で現役時代に活躍した実績馬で、より優れた血を求めて生産者が導入した繁殖牝馬である。一方で種牡馬も、世界的に評価されたディープインパクトやキングカメハメハの亡き後でも、ロードカナロアやエピファネイアをはじめ次世代を担う種牡馬が頭角を現している。

 だからこそトップクラスの上場馬のレベルは上がり続けていると言えるし、今年のセレクトセールで過去最高の落札総額を記録したのも納得だろう。これまで話題を呼んできた超高額落札馬が、必ずしも金額に見合うような成績を残せなかった向きもあるけど、今年こそセレクトセールの“ドラ1”から世界に羽ばたく「オオタニサン!」が出てくると信じてみたい。

(中央競馬担当・坂本 達洋)

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