◆第104回全国高校野球選手権兵庫大会▽2回戦 社5―3飾磨工(13日・高砂)
昨秋の兵庫王者が、夏初戦を勝利で飾った。先発のマウンドに上がったのは、プロ注目の最速146キロ右腕・芝本琳平(3年)ではなく、背番号10の堀田柊(3年)。飾磨工の4番・天野大樹(3年)にソロと2ランの2発を浴びたが、125球を投げて5安打3失点、6奪三振で完投した。
堀田は「立ち上がりから良くなかったが、良くないなりに修正できたところは良かった。大事な夏の初戦なので、勢いづけられるような投球をしたいと思っていた」と力強くうなずいた。
初戦突破に大きく貢献した右腕は、芝本への意識を正直に明かした。「練習からライバル視しながら、負けたくない気持ちでやってきた」。春の大会後、夏こそエース番号を奪うぞと、練習に励んできた。食トレも敢行し、3食以外にプロテインやおにぎりを間食で取り、短期間で73キロから75キロへ増量に成功。それにより球速も2キロアップし、最速140キロに乗せた。結果的に背番号「1」は芝本に譲る形となったが、「何で?じゃなく、背番号10番なりの気持ちで、しっかり投げようと思えた」と努力を重ねた日々を自信へと変えた。
20人のベンチ入りメンバーのうち、投手は芝本、堀田を含めて5人いる。同校は各ポジションでリーダーを決めており、ピッチャーリーダーを務めるのが堀田。山本巧監督は「日頃の立ち居振る舞いや、ピッチングでも浮き沈みがない。言動のレベルが高く、安定感があるので自然と決まった感じ。会社なら、ああいう子が新入社員だといいなと思える」と信頼感を明かした。大事な夏初戦の先発を託したことについては、「うちは夏(の県大会)を勝ったことがない。甲子園大会で勝ちたいと思って、皆でやっている。その中でのトータルのプラン。終盤に攻め込まれたら、芝本が行く準備もしていた」と説明。現在、プロで活躍するOBの阪神・近本、楽天・辰己らについても、「励みや勇気になっている」と指揮官は笑みを浮かべた。
春の県大会は優勝した報徳学園に準決勝で敗れたが、3位決定戦で滝川二を下した。夏の頂点に立つ力は、十分にある。堀田は「社は、いいピッチャーがいっぱいいるし、全員で戦っていこうと話している。エースだからとか、背番号10だからとかではなく、1試合1試合、皆が一生懸命戦えるチーム。まだ芝本も元気に残っているし、次、またその次へ、チームとして先に向かえる」。1人で投げきった夏1勝目に、大きな手応えをにじませた。