◆明治安田生命J1リーグ▽第21節 横浜FM2―2C大阪(10日、ヨドコウ)
この勝ち点1をどう捉えるべきか迷った。FW仲川輝人はこう語った。「昨年だったら普通に負けていると思うし、引き分けに追いつけたのは良かったけど、セレッソさん相手に先制されると、こういった展開になるのはもう何年もやられてきているので、学んでいない。相手の決定力もあるしそこは褒めるべきところだけど、その前に自分たちのミスがなくならないと。負けなくて良かった」。成長、反省、両側面にしっかりと目を向けた。
ありがちな”負けパターン”の展開だった。ボールを握りながらも、決定的な場面は作りきれずに前半31分、自陣でのパスを奪われて失点。ビハインドの展開になると、6連勝を飾っていたここ数試合にはなかった”焦り”が生じた。その原因について、前半はベンチから戦局を見守った仲川は、対C大阪への無意識の”苦手意識”を指摘。「セレッソ相手にちょっと焦っているというか。焦れて変な縦パスを入れて、取られて、失っている場面が多かった」。敵地では2011年以来勝利のない相手。やるべきことを遂行する力、相手を見た柔軟さと、C大阪が上回っていた。
岩田は失点シーンを「いつものようなミス」と表現した。仲川の話した「学んでいない」と同義ともとられ、やはり厳しい目も向けなければいけない。攻撃陣は7戦連続先発だったMF西村拓真らの疲労も少なからず影響していたように思う。指揮官が「連戦が続く中、同じような形でやろうと要求が多かったと反省する部分もある。戦術、形、自分の想像と離れた」と肩を落としたように、同じ画が描ききれず、かみ合うシーンは多くなかった。だからこそ余計に、耐えて層の厚さを存分に生かす後半勝負に持ち込む力も必要だった。
それでも誰一人諦めず、仲川がPKを獲得して奪った反撃ゴールから、終盤10分は息を吹き返した。途中交代の選手がしっかり変化をつけ、勢いをもたらすことができるのは大きな強み。同点ゴールを挙げた瞬間、横浜FMの選手は3点目を奪うため一斉にセンターサークルへと走った。FWレオセアラは2得点にも「勝ちきれなかった」と悔しがった。マスカット監督は「(VARなど介入した中で5分の)アディショナルタイムは短かった。もう少し時間があれば…」と怒りを抑えつつ、”最低限”の勝ち点1を評価。それだけ、2点を先行されても狙ったのは勝利だった。
多くの選手が言葉にした「負けなかった」ことは優勝を目指す上で大事なこと。成長を示した一方で、まだまだ改善しなければいけない、突き詰める必要があると引き締まった。前向きな姿勢を大切にするチームにとって、この引き分けが強さを増すための一つのポイント地点となることを期待したい。勝ち点1以上に価値あるドローとできるかは、今後次第だ。(小口 瑞乃)