カギは「自分が社会にとって、どういう存在でありたいか」…大橋未歩アナが明かしたフリーアナの覚悟と矜持

スポーツ報知
フリー転身から4年。「自分が社会にとってどういう存在でありたいか」を常に意識して活動を続けているという大橋未歩アナウンサー(カメラ・頓所 美代子)

 群雄割拠と言っていいフリーアナウンサーの戦国時代。「フリー」という言葉が示す通り、会社に縛られない自由な立場の一方、激烈なサバイバル競争を生き残っていくのには何が必要なのか―。その答えを教えられた1時間のインタビューだった。

 6月末、東京・半蔵門のTOKYO MXまで押しかけ、「5時に夢中!」(月~金曜・午後5時)の生放送終了直後の大橋未歩アナウンサー(43)に話を聞いた。

 2017年末にテレビ東京を退社し、フリーに。今ではアシスタントMCとして出演の「5時夢」の生放送でプライベートや社会問題もストレートに口にし、時には下ネタにも笑顔で対応する同アナの発言の数々が即座にネット記事化される日々。昨年2月、森喜朗氏の女性蔑視発言が問題になった際には「私の中にも森さんは住んでいる」と話し、潜在的な差別意識を自覚することの難しさに正面から言及。「フリーアナになったら、会社を裏切ったみたいな風潮は時代遅れです」などの率直な発言もネット上を賑わしてきた。

 世間の注目を集めている自身の現在地をどう思っているか―。それが主題のインタビューの終盤、フリー転身の成功例としての自身をどう見ているか知りたくなったから聞いてみた。

 「ここ数年、続出している女性アナのフリー転身をどう見ていますか?」―。

 今年に入ってからも多くのキー局アナが様々な転機を迎え、フリーに転身している。

 日本テレビを退社した久野静香アナ(33)は結婚を機に関西に拠点を置き、松竹芸能と契約。フジテレビを退社した久代萌美アナ(32)は吉本興業に移籍。久慈暁子アナ(27)もNBAの渡邊雄太(27)とゴールインし、芸能プロダクションに所属しながら、それぞれフリー活動を行う。

 最近、退社したアナの名前を列挙して聞いた私に大橋アナは「私が何か言える立場じゃないですけど…」と前置きした上で「今後、フリーになりたいと思っている局アナも社会と自分との関係とか、社会課題を自分の心の中のどこかに持っていたりするといいのかなと思います。アナウンサーの肩書きも多様化していて、アナウンサーをやりながら女優をされる方も全く違う方向に転職される方もいるけど、行き着くところは『社会人』だと思うので」と答えてくれた。

 「他の人と自分を比べるのではなく、社会と自分との関係を意識すると、おのずと方向性が見えてきて私は楽でした。あと自分に嘘はつかないように。その2つを大事に活動しています」と振り返った大橋アナだが、決して順風満帆に今のポジションを手に入れたわけではない。

 スポーツ、情報番組、そして報道と見ない日はないほど「局の顔」として活躍していたテレ東時代の13年には軽度の脳梗塞を発症し、8か月に渡って休職。右首の内頸動脈解離が脳梗塞の原因だったため、現在でも首の動脈にはチタンが埋め込まれている。

 「会社を8か月離れたというのは、すごく自分の中で大きかった。自分がいなくても会社はちゃんと回るんだというのを目の当たりにした時に自分の傲慢さというものを突きつけられた気がしました」とポツリ。

 「(エースアナと)思っちゃってたんですね。そこですごく反省しました。穴の空いた時に誰かがその穴を埋めてくれる。その社会システムがあることこそが健全なのだと思い知らされました。自分が休んだことで教えていただきました」と振り返った。

 「人生の優先順位が本当に明確になりました。それまでは出世とか社会での名声とかに興味があったかも知れないんですけど、脳梗塞の後には一番大事なのは命で、その次が健康で、以上!ってなりましたね。人間としての軸が整ったなと思いました」と人生観の変化を明かした大橋アナ。フリー転身後も番組出演のハードスケジュールを縫って、分厚い資料を読み込んだ上で医療系の仕事を積極的に受け、シンポジウムの司会などをこなし続けている。

 今、フリーアナを取り巻く環境は厳しさを増している。

 「カトパン」こと加藤綾子アナ(37)ですら、結婚という大きな環境の変化こそあったものの今年9月いっぱいでフジテレビ系報道番組「Live News it!」キャスターを卒業。08年に入社、16年のフリー転身後も「局の顔」として支え続けてきたフジを去る。卒業の一因として、伸び悩む視聴率も明らかにあったと思われる。

 フリーの頂点的存在だった加藤アナでさえ、姿を消すフリーアナ戦線。ここ数年でキー局を辞め、大手事務所と契約も、すっかり姿を見なくなったフリーアナも複数いるのが現実だ。

 そんな中、「テレビと自分との関係だけを考えて仕事をするのではなくて、社会と自分との関係を考えて今まで仕事をしてきたつもりです。テレビ露出ももちろん大事だと思うんですけど、今はプラットフォームも増えてますし、活動できる場所も多様化してますし、自分が社会にとって、どういう存在でありたいかを考えることが大切かなと思います」と笑顔で話した大橋アナには、確固たるフリーとしての軸足が存在する。

 「せっかくフリーになったんだから、今は言いたいことはちゃんと主張して、人間としての自分を見てもらおうと思ってます」―。

 辞めたらキー局という巨大な後ろ盾はない。寄る辺ない立場のフリーとして何を信じ、何を支えとして生きていくのか。テレビ画面でおなじみの魅力的な笑顔で言い切った言葉の裏には、確かな強さと潔さがあった。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆大橋 未歩(おおはし・みほ)1978年8月15日、兵庫県神戸市生まれ。43歳。95年、16歳の時に阪神淡路大震災で被災。02年、上智大法学部在学中、ミスアナウンサーコンテストでグランプリ獲得。同大卒業後、テレビ東京に入社。スポーツ、バラエティー、情報番組中心に多くのレギュラー番組で活躍も13年、軽度の脳梗塞を発症し休職。約8か月の療養期間を経て、同年9月に復帰。17年12月、同局を退社。18年3月からフリーで活動開始。19年4月からTOKYO MX「5時に夢中!」にアシスタントMCとして出演中。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士取得。20年から厚生労働省循環器病対策推進協議会委員も務める。夫は10歳年下の元テレ東プロデューサー・上出遼平氏。趣味は山登り。

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