TBS系の人気時代劇「水戸黄門」の3代目黄門役で親しまれた俳優の佐野浅夫(さの・あさお、本名・佐野浅雄)さんが6月28日午後9時59分、老衰のため京都市内の自宅で死去した。96歳だった。
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「5代目黄門様」の里見浩太朗(85)が4日、スポーツ報知の取材に応じ、佐野さんを追悼した。2人は縁戚関係にあり、里見の母親と佐野さんがいとこだったという。「親戚で同じ役ができたのはまれで、幸せなこと。とにかく厳しい人。芸の虫でいい役者人生だったのではないか。訃報(ふほう)は今日、連絡を受けました」と話した。
歴代の黄門役は名脇役がほとんど。しかし里見は“助さん”も演じたが、スター街道を歩んでおり、それまでのスター芝居では異質の黄門になるため「実はとてもプレッシャーだった。主役でありながら抑制した存在感が出せるか。そのとき『頑張れよ』と一言いわれたのを覚えています」。
佐野さんは「俺は俺、お前はお前だから」と干渉も批評もするタイプでなかった。しかし、厳しさにおいては「一度、撮影に入れば、現場で共演者が冗談を言うことすらも良しとはしなかった。徹底した厳しさは、役を掘り下げる自分の芝居でも同じだった」。
普段は「おじさん、おじちゃん」と呼んでいた。里見が中学時に母と見た映画「きけ、わだつみの声」で演じた鬼軍曹役の迫真演技を今も時々、思い出すという。