【箱根への道】“仮想・箱根”全国男鹿駅伝はスタートから最終7区まで大激戦

スポーツ報知
最終7区で青学大を逆転し、優勝のゴールテープを切った東洋大の吉田周

 全国男鹿駅伝(大学の部)が6月25日、秋田・男鹿市の男鹿総合運動公園発着の7区間64・7キロで行われた。今年の箱根駅伝優勝の青学大、同2位の順大、同4位の東洋大などが参戦。主に学生3大駅伝未経験の選手が「仮想・箱根」のタフなコースで争い、大激戦の末、東洋大が最終7区で青学大を逆転し、3時間16分54秒で優勝した。「箱根への道」に続く男鹿半島の激闘を追った。

 ナマハゲで有名な男鹿を舞台にした伝統の男鹿駅伝が今年、グレードアップされた。20、21年はコロナ禍で中止され、3年ぶりに復活。「全国男鹿駅伝」と改称され、主催者はチームの誘致に尽力した。その結果、90年から31大会連続出場の“常連”東洋大のほか、今年の箱根駅伝で完全優勝した青学大、同2位・順大、同6位・中大、同11位・東海大の参戦が決まった。

 青学大は11年ぶり、東海大は4年ぶり、順大と中大は初出場。安田真人・大会委員長(54)は「男鹿駅伝を盛り上げることで多くの人に男鹿半島の良さを知ってもらいたい」と話す。

 各校ともに学生3大駅伝(出雲、全日本、箱根)の経験がない選手を中心にチームを編成。2チーム参加の中大は5人の1年が出場した一方で、1、2年時に箱根駅伝1区を走った千守倫央、3年連続で同6区出場の若林陽大、今年の同8区で3位と好走した中沢雄大と経験豊富な4年生もメンバー入りした。

 前回の19年大会は東洋大が2チームを編成して優勝と2位。鉄紺の独壇場となったが、今回は1区から最終7区まで大激戦が繰り広げられた。

 1区は残り1キロでラストスパートを決めた中大Aの千守が区間賞を獲得。前半は約200メートルの標高差を駆け上がり、後半は一気に下る最難関の2区は中大Bの中沢が区間賞。5位から首位に立った。3区は青学大の西川魁星(4年)が区間賞を奪い、首位に浮上。4~6区は青学大が首位を守ったが、後続が僅差で追い、勝負はアンカー決戦に持ち込まれた。

 最終7区は青学大の佐々木塁(3年)が首位でスタート。5秒差の2位で東洋大の吉田周(2年)、さらに1秒差の3位で順大の藤島幹大(2年)が続いた。中大Bの伊東大翔(3年)も首位の青学大と30秒差の4位で追った。

 スタートから400メートルで青学大に東洋大と順大が追いつき、3校が並ぶ大混戦。勝負が決したのは残り5キロ。東洋大の吉田が抜け出し、歓喜のゴール。19年大会に続く連覇を果たした。45秒差の2位に青学大。2位と11秒差の3位に中大B、3位と2秒差の4位に順大が続く接戦だった。強豪校が競り合ったことでレースは大幅にレベルアップ。大会当日、例年に比べて涼しく気象条件に恵まれたこともあり、4位までが大会新記録。全区間で区間新記録が生まれた。

 今年の箱根駅伝優勝の青学大、同2位の順大に競り勝った東洋大の酒井俊幸監督(46)は「やはり勝つことは大事。チームに勢いがつきます」とうなずいた。殊勲の吉田は「大学に入って初めての駅伝でした。やっぱり楽しい。箱根駅伝でもアンカー(10区)を走りたい。清野(太雅、4年)さんという10区のスペシャリストがいますが、追いつけるように頑張ります」と意欲的に話した。

 優勝を逃したチームも、それぞれ持ち味を発揮した。青学大の佐々木は逆転されたが、両手を広げてゴールした。「どんな順位でも明るくゴールすることが青学大の伝統。選手は駅伝の厳しさと楽しさを身をもって知った。それが収穫です」と原晋監督(55)は納得の表情。佐々木は「トップでタスキをもらったからにはトップでゴールしなければいけなかった」と悔しそう。ただ、大学で初の駅伝で得たものは大きい。「多くの人が応援してくれて力をもらった」。佐々木はプロ野球ロッテの佐々木朗希投手(20)と幼なじみ。同じ岩手・陸前高田市内の小学校に通い、同じ野球チームに所属していた。「朗希君の活躍を見て僕ももっと頑張ろうと思っています」と力強く話す。

 Bチームが3位、Aチームが5位だった中大の藤原正和監督(41)も手応えを明かす。「千守は昨季、力を発揮できなかったが、区間賞できっかけをつかんだと思います。駅伝で軸となる中沢、若林はさらに駅伝力を身につけてくれた」。初出場の中大は来年以降も参加する意向だ。「このタフなコースで走れば粘り強さが身につく。東洋大が毎年、男鹿駅伝に出場している理由が分かりました」と藤原監督は笑顔で話した。

 4位の順大は1区の海老沢憲伸(2年)が6位と出遅れたが、4区の油谷航亮(2年)、6区の堀内郁哉(4年)が区間賞を獲得し、最後まで優勝争いを演じた。学生3大駅伝未経験の選手が片手でタスキを垂らすようにして渡す伝統の「順大渡し」を経験できたことは今後の糧となるはずだ。

 東海大は2区で期待の喜早駿介(3年)が区間7位と大苦戦したことが響き、見せ場なく6位に終わった。「厳しい現実が分かったことが収穫」と両角速監督(55)は潔く話した。今年の箱根駅伝は11位で今季は8年ぶりに予選会に回る。「男鹿駅伝のタフなコースは仮想・箱根駅伝です。今回の経験を必ず生かしたい」と両角監督は逆襲を誓った。

 来年以降、大会はさらに発展する見込みだ。安田大会委員長は「高校、大学含めて多くのチームに参加してもらえるように尽力します。そして、各校の強化の一助になればうれしい。ライブ配信など駅伝ファンに楽しんでもらえる取り組みも考えています」と明かす。

 東洋大1年時に男鹿駅伝に出場し、3区で区間賞獲得、チームも優勝した経験を持つ酒井監督は「男鹿駅伝は本当に鍛えられる大会です」と話す。東洋大では「2代目・山の神」と呼ばれた柏原竜二さん(32)、東京五輪1万メートル代表の相沢晃(24)=旭化成=も男鹿駅伝を走り、新春の箱根駅伝での快走につなげた。東海大は18年の男鹿駅伝で初優勝し、そのシーズンの箱根駅伝(19年)でも初優勝を果たした。

 夏の男鹿から新春の箱根へ。道は確かにつながっている。(竹内 達朗)

 ◆全国男鹿駅伝 1952年に「男鹿観光駅伝」の名称で第1回大会が開催。一般の部だけで参加は4チームだった。その後「男鹿駅伝」と改称され、今年から「全国男鹿駅伝」に。当初、7月開催だったが、18年から6月開催に変更された。59年に高校男子の部、69年に大学の部、2001年に高校女子の部を創設。今年、一般の部(7区間64・7キロ)は天童東村山駅伝Aが3時間27分22秒、高校男子(7区間42・8キロ)は長野・佐久長聖が2時間25分32秒、高校女子(5区間21・2キロ)は宮城・仙台育英Aが1時間10分12秒でそれぞれ優勝。全部門が標高差の激しいタフなコースで争われる。

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