そして柚香光は「カリスマになった」作・演出の生田大和氏が作品に託したメッセージ…花組「巡礼の年」上演中

スポーツ報知
パトロンで愛人のラプリュナレド伯爵夫人(音くり寿、右)を疎ましく感じるリスト

 宝塚歌劇花組ミュージカル「巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~」が、兵庫・宝塚大劇場で上演中だ。19世紀に「魔術師」と呼ばれたピアニスト、フランツ・リストをトップスター・柚香光(ゆずか・れい)が熱演する。作・演出の生田大和(ひろかず)氏は「柚香は物腰も柔らかく、前向きで、温かみがあり、みんなの創作意欲を引っ張っている。カリスマになったんだなと感心します」と、リーダーに全幅の信頼を置く。公演の模様をグラフで紹介する。(ペン&カメラ・筒井 政也)

■一心不乱の下級生時代

 美貌(びぼう)を備えて圧巻の音色を奏で、ファンを手のひらの上で転がすようなカリスマ的存在。自意識も過剰なリストだが、「アルルカン(道化師の意)の哀しみ」との批評に内面を見抜かれた感覚に陥り、本当の自分を探して迷走していく―。製作側から「ダークな演目を」とリクエストされ、生田氏は約10年前に小劇場を想定して考えていた「ピアノの詩人」ショパンと、その最愛の女性ジョルジュ・サンドの物語を思い起こした。

 「そこで避けて通れない存在がリスト。光と影を経験した人物として思い至りました」。ピアノが得意な柚香が下級生時代、劇団の稽古場で一心不乱に鍵盤をたたく姿を見た経験もあり「心の中の何かをピアノに託すような姿が印象的で」。本作で初体験の弾き語りも披露している。

■人間らしさ巧みに表現 

 ロックのライブさながらのダイナミックな演出も。「カッコいいですよね。説得力がある」とビジュアル面に太鼓判を押す一方、「身分差を取り払い、平等を求めていたのに、爵位や勲章を与えられると上昇志向が強まっていく。リストがユニークなのは、自己矛盾を抱えた姿。人間らしいリアリティーがあり、その表裏を巧みに演じている」とメンタルの表現力も高く評価した。

■宝塚音楽学校オマージュ

 そんなリストに、親友のショパン(水美舞斗)は「なんのために音楽を」と問いかける。「言い換えれば『なんのために舞台を』『なんのために宝塚歌劇を』。本作の方向性として、タカラジェンヌに対して作った向きは、正直言ってあります」。挫折した少年時代をリストが振り返る場面は、才能が各地から集まった宝塚音楽学校のオマージュでもあるという。

 「自分たちの人生は一体、何のために? それをもう一度考えて、舞台に立ってくれたら。リストの悩みは、お客さまやタカラジェンヌたちの悩みでもある。その先には『それでも人生は続いていく』。これが最大のメッセージです」

■ショーでも「思い」共通

 併演するショー「Fashionable Empire」(作・演出、稲葉太地)の主題歌の「どうなるかなんて分からないけど 分からないのが面白い」や、ゴスペルの「明日なんて誰も分からないから 悔いのないように」といった歌詞も、「巡礼の―」に込められた思いと共通する。「申し合わせたつもりはないが、やっぱり『二つで一つの作品だな』と合点がいった。同じものを見ていたな、という印象です」と生田氏。コロナ禍で苦しみ耐えてきた花組生だからこそのステージでもある。7月11日まで。東京宝塚劇場では同30日~9月4日。

 ★お知らせ この記事がメインのスポーツ報知全国版「タカラヅカ新世紀」紙面は6月26日に刊行されました。バックナンバー取り寄せご希望の方はこちらをご覧ください。

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