◆JERAセ・リーグ 巨人5―7DeNA(23日・東京ドーム)
巨人は5点を追う6回2死で登場した代打・中田が6号2ランを右翼席にたたき込んだ。G球場で2軍調整中だった12日に電撃視察に訪れた長嶋茂雄終身名誉監督(86)=報知新聞社客員=がネット裏で見守る中での恩返し弾。しかし、反撃も一歩及ばず。DeNAに16安打7得点を許して4カード連続負け越しとなり、勝った首位・ヤクルトとのゲーム差は今季最大の10に広がった。24日からはヤクルトとの3連戦(神宮)。独走モードに待ったをかける。
ミスターの教えを体現した。力感を感じさせないスイングとは対照的に、中田のバットにはじかれた打球は右翼席まで飛んでいった。7点を追う6回。2点を返し、なおも2死二塁。代打で登場すると、この場面で登板したクリスキーの154キロ直球を仕留め6号2ランを放った。「コンパクトに芯でしっかりと捉えることができました。ホームランになってよかったです」。ネット裏で見守っていた長嶋氏への恩返しのアーチは、新たな姿で生み出した。
この打席で中田は左手の小指をグリップエンドにかけず、指一本分短くバットを持っていた。2軍調整中だった12日。G球場に電撃視察に訪れた長嶋氏から約40分間の熱血指導を受けたが、その時に授かったのが、バットの握りをグリップから指一本分余らせ、体の力を抜いて振るという教えだった。
昨年も2軍調整中に打撃指導を受けるなど、たびたび貴重な言葉をかけてもらっていたが、その時間こそが背番号10にとっては大きなものだった。「長嶋さんにアドバイスまでいただいたということが自分の中では一番の収穫でした。言ってくれたことと、自分のスタイルをうまい具合に合わせていきたい」。その答えが、今季初の逆方向への一発。球場全体の空気も一変させ、原監督も「ねえ! いいホームランでしたね。一発で仕留められたというところも大きいと思います」とたたえた。
真骨頂のアーチでもあった。昨年は大幅な体重減もあり打球に力が伝わらなかったが、オフ期間のトレーニングでベスト体重の112キロに戻ったことで「しっかりボールにスピンをかければ、今年の感覚では6割、7割の力でも十分、強い打球はいくと思う」と、自信を取り戻していた。
日本ハム時代は札幌ドームと比較すると狭い東京ドームでプレーする時には「こすった打球でもホームランが入る」と口にしてきたが、その言葉を証明するかのような力感のないフォームからの一発。現在は増田陸の台頭で出場機会は限られているが、大逆転Vを目指す上で欠かすことのできない存在なのは間違いない。(後藤 亮太)
巨人・長嶋茂雄終身名誉監督「(中田の本塁打は)力感がないスイングで、ナイスバッティングでしたね。逆方向にも飛距離が出る打者ですから、いいきっかけになるといいですね。ジャイアンツはヤクルトを追う展開ですが、まだシーズン半ばです。これから先、ひと山もふた山もあるでしょう。過去にも、ジャイアンツはメークドラマ、メークレジェンドを成し遂げてきました。これからの巨人軍の戦いに期待しています」
◆村田真一氏「いい放物線&意味ある一発」
中田らしい、いい放物線やったね。外の154キロ真っすぐに振り負けなかった。結果的に負けたけど、「まだ行ける」ってムードになった意味ある一発やったよね。長嶋さんのおっしゃる通り、あれだけのパワーのあるバッターやから、大振りせずコンパクトに、いいポイントで打てばボールは勝手に飛んでいくってことよね。今、ファーストは増田陸が出てきたけど、まだシーズンは半分残っているし、キャリア十分の中田がポジションを奪い返すチャンスは十分にあると思うよ。(スポーツ報知評論家・村田真一)