“神童”那須川天心が“K―1のカリスマ”武尊に完勝した3つのワケ

スポーツ報知
1回、武尊からダウンを奪う那須川天心(カメラ・竜田 卓)

◆「THE MATCH2022」 〇那須川天心(3回判定5-0)武尊● キックボクシングルール(58キロ契約) (19日・東京ドーム)

 キックボクシング界をけん引してきた“神童”那須川天心(23)が、K―1のエース・武尊(30)を判定5-0で下した。天心の対戦表明から7年の紆余曲折を経て実現した「世紀の一戦」。なぜ、“神童”は“K‐1のカリスマ”に完勝できたのか。現場で取材する中で“3つの要因”を垣間見た。

 天心は、1回に左フックでダウンを奪い先手をとった。2回にバッティングなどを2度食らう場面もあったが、心は折れなかった。3回は、パンチの応酬となり、大きなフックを放つ武尊に対してストレート、ジャブのコンパクトな打撃で応戦。大きなダメージを受けることなく戦い抜いた。

 (1)コンパクトな打撃 早い段階でダウンを奪ったのは言うまでもないが、コンパクトな打撃を終始心がけていたのが大きな勝因になったようだ。特に右のジャブは効果的だった。ダウンを奪い返すため、大きなパンチを放ってくる相手に、幾度となく的確にヒット。コンパクトゆえにスピードで上回った印象を与えた。しかもジャブとはいえ、しっかり踏み込んだ一発は重さがあり、ストレートに近い効果があったように見えた。培ったボクシングの技術が大一番で生きた。

 試合後、天心は「カウンターというか、コンパクトに狙う。大きくなりすぎず、刀のように、刹那というか、それは意識していた。最後に確認したパンチでダウンが取れた」と語っていた。“ナチュラル・ボーン・クラッシャー”の異名をとり、至近距離の打ち合いに滅法強い武尊。その攻撃に対する“研究”が、奏功した形となった。

 (2)メンタル 武尊は試合前日の会見で、「人生でここまできついことはもうないんじゃないかな」と明かした。その要因を問われると、「一番はメンタル」と回答。試合実現までに7年を要し、誹謗中傷を受けることもあった。「K―1最強」の看板を背負う決戦は、想像を超えるものがあっただろう。「いろんなものを背負って明日リングに上がって戦う。負けたら死と一緒だと思っている」。その言葉には、悲壮感すら漂っていた。

 一方で、天心は試合前日からリラックスムードだった。会見では笑いを交える余裕もあった。試合後、対峙した武尊のイメージを問われると、「骨格とかは大きいけど、思っていたより小さく見えた。そこを思えたことが勝てた原因だと思いました。何倍も強い武尊選手をイメージしていたので」。こうした気持ちのゆとりがあったから、試合中に武尊の“圧”に飲まれることなく、自身の戦いを貫けたのだろう。

 (3)体重 今回の契約体重は58キロ。試合前日に計量し当日は4キロまで戻していいルールで、天心はナチュラルに近い体重に戻せたようだった。一方で、階級が上の武尊にとっては厳しい減量を強いられ、リカバリーも未知のものだったという。前日の会見で、「今まで、リカバリーで体重測りながら戻すことはやったことがなかったので、どれくらい戻るのか把握できていないので、気をつけなきゃ」と話していた。試合当日、きっちり体重を戻してきたが、60キロのスーパーフェザー級を主戦場にする武尊にとって減量の影響は計り知れない。

 「世紀の一戦」は終わった。はっきりと決着がついた。天心はこの試合をもってキックボクシング引退を表明しており、武尊にリベンジの機会はない。最強の座に上り詰めるには長い時間を要するが、転落するのは一瞬。背負うものが大きければ大きいほど、その落差は大きい。格闘技は残酷だ。だからこそ、「最強」の称号は尊い。9分間の明暗に、改めてそう思わせられた。

(記者コラム 江畑康二郎)

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