【番記者の視点】4試合ぶり勝利で2位ターンの鹿島 三竿健斗がサポーターに向けた一礼の意味を読み解く

スポーツ報知
三竿健斗

◆明治安田生命J1リーグ▽第17節 鹿島1―0京都(18日・カシマスタジアム)

 DF三竿健斗の京都戦は一礼から始まった。試合前のウォーミングアップ。スタンドに目をやると、自身へ向けて掲げられた段幕が目に飛び込んだ。「健斗の気持ちを分かってる」と記されていた。「自分だけに向けられた言葉を見て、より責任感というか、もっとやらなきゃいけないという気持ちになった。引き締まる気持ちだった」。足を止め、頭を下げ、「別人」になるスイッチを入れた。

 ルヴァン杯決勝トーナメント1回戦で、福岡にアウェーゴール差で敗れた。その第2戦、敗退が決まり、スタンドへあいさつへ行くとブーイング交じりの声を浴びせられた。三竿が反応し、スタンドに向かって言葉を投げかけた。選手、サポーター間のもめ事にも見えるシーン。声出し応援実験の第一弾は、不穏な空気で幕を閉じたように見えたが、三竿の意図は違った。

 「お金を払って、見に来てくれている。プロである以上、(ルヴァン杯で)敗退したら批判されて当然だと思っている。だから、僕はブーイングされて、言い返した訳じゃない。今後も一緒に戦ってほしい、そういうつもりだった」。

 三竿はピッチに入ると「本来の自分ではなく、アスリートの自分になる」と言う。ピッチで見せる激しいプレーは、普段の穏やかな物言いからは想像できない。「別人とよく言われる」。そうする理由は2つ。激しい守備には「負けることが嫌だから」が表れ、味方に厳しく注文する姿には「このクラブで色々見てきた自分がやらなきゃいけないし、嫌われ役でいい」との思いがある。

 若い時は空回りする試合もあったが、今ではチームの重しのような存在になった。センターバックを主戦にする今季は特にミスした選手の肩に手をかけて、言葉をかけるシーンが見受けられる。状況に応じて「本来の自分」に戻り、自分だけではなく、周りの力を引き出そうとしている。本当の意味でチームの柱になりつつある。

 鹿島では、どの大会でもタイトルを逃した瞬間が分岐点になる。直近で言えば大岩剛、相馬直樹監督はタイトルを逃した直後から、クラブ内で退任へと加速した。ルヴァン杯敗退直後の京都戦。その歴史を知る三竿は、常本佳吾に見事なサイドチェンジを通し、決定機を作った。失点の臭いがしたセットプレーでは、自由を与えなかった。好内容を見せた京都・曹貴裁監督が「残酷な結果」と敗戦を受け入れられなかった背景には、最終ラインで立ちはだかった三竿の存在が大きい。

 鹿島は4試合ぶりの勝利で前半戦を2位で折り返した。まだまだ失点の原因など修正すべき点は多く、楽観的にはなれない。「良い時も、悪い時もあった前半戦。勝ち点差も(リーグ全体で)大きくない。1試合1試合、チームとして上に行けるようにやるべきことをしっかりとやっていく」と三竿。試合後、京都の選手たちが鹿島サポーターに向けた一礼は美しかった。三竿の一礼は頼もしかった。(鹿島担当・内田知宏)

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