コロナ禍で中国観光客が消えた大阪のホテル 再起をかけたeスポーツ参入で「コロナ前以上の活気を」

スポーツ報知
「Build―UP」の代表を務める後藤寛明氏(提供・Build―UP)

 新型コロナウイルスによる経営の苦境から脱するために、大阪にあるホテルがeスポーツ業界へ参入する。大阪市中央区にある「ホテルエキチカ長堀橋」の2フロアを改装し、新たに最新ゲーミングPC50台を導入した「e―sports EKICHIKA」を6月11日にプレオープンさせた。同ホテルを経営する会社「Build―UP」の代表を務める後藤寛明氏が、スポーツ報知の取材に、「コロナ前のホテルではなく、その以上の活気あふれるホテルに」と新たな業界に打って出た思いを明かした。

 まず、eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称。テレビゲームなどによる対戦をスポーツ競技として捉える。日本野球機構(NPB)やJリーグも大会を手がけ、プロ選手も誕生している日本では競技人口が約400万人と言われる。世界ではすでに1億人を超え、日本円にして億単位の優勝賞金が出る大会もある。今年9月開催予定から来年に延期されたアジア大会(中国・杭州)では正式種目に採用されている。

 後藤氏のホテルは、大阪有数の繁華街・ミナミから近く、地下鉄2路線が乗り入れる長堀橋駅の出口に隣接する場所に建つ。コロナ前は、中国などからの団体観光客で潤った大阪を象徴するように、全室ツインの49部屋は「ほぼ毎日、100%の稼働率だった」(同氏)。それが20年2月に一変した。キャンセルが相次ぎ、1か月の宿泊者が合計で一ケタまで激減。スタッフを休ませ、少人数で運営していたが、ついには休業した。

 飲食店には国から休業補償が支給されたが、ホテル業界にはなかった。一時の「Go To トラベル」キャンペーンも観光地や高級ホテルはにぎわったが、「海外団体客に利用していただいていたうちには、何も効果がなかった」と後藤氏。ホテル業のほか酒販業なども行う同社の年商は最大で5分の1まで減り、経営はひっ迫した。自宅で落ち込んでいた昨年6月、友人からあるゲームを勧められた。人気のシューティングゲーム「エーペックスレジェンズ」だった。「小さい頃は野球をやっていたので、あまりゲームに触れることはなかった」というが、すっかりハマってしまい、1日12時間ゲームをやり続けたこともあった。

 当時、ホテル内にあるレストランのフロア改装を計画しており、「何かこの場所でできないか?」「会社やスタッフを守るために何かをしないといけない」と考えていた。自身がパーソナルジムを運営していたこともあり、フィットネスジムも検討したが、eスポーツ業界へ参入することを決意した。

 「ゲームの業界は年齢、性別はまったく関係なく、小学生の子が大会で優勝したり、障害をもった人でも活躍できる。今では年配の方でもゲームで将棋や囲碁などもする。しかし、まだ日本ではゲームに対してネガティブなイメージを持たれることも多い。プローゲーマーとして活躍したい、プロゲーマーになりたい、最高の環境でゲームがしたい。そんな人たちに対して最高の環境を提供したいと思いました」

 今回は国による再構築補助金を申請し、審査を通過。大阪市内ではeスポーツ用のゲームスペースがあるホテルや、室内にゲーム用PCが置いてあるビジネスホテルもあるが、同所ではハイスペックゲーミングPC50台を設置。業界最高水準の最新PCを完備した配信ルームや、客室を改装して最大4人用の個室も作った。

 コロナは第6波を乗り越え、少しずつ以前の生活を取り戻しつつある。同所では1~3月のホテル稼働率が約8%だったのが、4月以降は20→40%と確実に増えている。ただ、後藤氏によると、周辺ホテルと同様、宿泊料金を以前の半額程度まで値下げしている。「ホテルの再起をかけ、新たにeスポーツ業界へ挑戦し、コロナ前のホテルではなく、それ以上の活気があふれるホテルにしたいです。eスポーツ施設も同様、最高のゲーム空間を作っていきたいです」。42歳の実業家は、新たな一手でコロナ禍との勝負に臨む。(武田 泰淳)

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