スポーツ報知のカメラマンがあの日、その時を切りとった膨大な写真の中から、撮影者が記憶に残るショットを紹介。当時の状況や思い出だけでなく、今だから話せる”ウラ話”を明かします。当時の空気とともにお楽しみください。

【瞬間の記憶】カメラマン“乱入”できたからこそ撮れた! 末次利光の逆転サヨナラ満塁弾を長嶋茂雄監督が本塁前で出迎え

巨人・末次利光外野手と抱き合ってホームに向かう長嶋監督。この写真が翌日の1面を飾った(1976年6月8日・後楽園球場)
巨人・末次利光外野手と抱き合ってホームに向かう長嶋監督。この写真が翌日の1面を飾った(1976年6月8日・後楽園球場)

 6月10日に創刊150周年を迎える報知新聞の特別企画「スポーツ報知150周年 瞬間の記憶」。今回はちょうど46年前、長嶋茂雄監督(86)2年目の1976年6月8日に巨人・阪神戦(後楽園)で末次利光外野手(80)が放った逆転サヨナラ満塁弾です。ミスターや選手がホームベース付近で迎える様子を、カメラマンが至近距離から記録しました。今では撮れない臨場感ある歓喜の舞台裏を、本紙OBのカメラマンが明かしました。

劇的なサヨナラ勝ちに、飛び出した長嶋監督(左)に迎えられる末次(1976年6月8日・後楽園球場、カメラ・樋口 景章)
劇的なサヨナラ勝ちに、飛び出した長嶋監督(左)に迎えられる末次(1976年6月8日・後楽園球場、カメラ・樋口 景章)

 2点を追う1死走者なしから始まった9回裏巨人の反撃、王貞治が四球を選んで2死満塁になったころには、歓声が鳴りやまぬ異様な雰囲気に後楽園球場は包まれていた。一塁カメラマン席から狙っていた樋口景章は、末次が山本和行の5球目、内角ストレートを振り抜いた時の記憶がない。覚えているのは、グラウンドに飛び出した選手でレンズが遮られたため、瞬発的に24ミリレンズをつけたカメラを手にホームベース近くへダッシュしたことだ。

 カメラマンが試合直後にグラウンドに入り撮影することは、コロナ禍で選手と一定の距離を保つために禁止されるまで長年、行われていた。もちろん審判が試合終了を宣告し、選手全員がファウルゾーンに出た後なのだが、この時はボールがレフトスタンドに入った瞬間から長嶋監督が手をぐるぐる回して乱舞、ナインも一斉にベンチを飛び出していて「もう行っちゃえ、という感じだよね」。後れを取ってはいけないとばかりに、三塁側から撮影していた後輩カメラマンの落合正らもホームベースを目指した。その数、十数人。スポーツ報知はモノクロフィルムで撮影していた樋口、落合と、月刊ジャイアンツ用にカラーで撮影していた2人が“集合”し、満面の笑みの末次と、迎え入れる長嶋監督を両方向から撮影した。

巨人・阪神、9回2死満塁 末次利光のサヨナラ満塁本塁打に歓喜の長嶋茂雄監督(1976年6月8日・後楽園球場)
巨人・阪神、9回2死満塁 末次利光のサヨナラ満塁本塁打に歓喜の長嶋茂雄監督(1976年6月8日・後楽園球場)

 樋口がいたのは、本来なら入ってはいけない、まだ試合中のフェアゾーン。しかし「選手がいっぱいいて、こっちに行くしかなかった。興奮? それはしていなかったよ。反対側のカメラマンも整然と撮っているだろ。みんな冷静だったよ」。気にしていたのは、むしろピントがちゃんと合っているかだったという。

 落合も「音を聞いてホームランだと思ったから、すぐ飛び出してね。当時も『選手より長嶋監督』で、こっち側は末次より、とにかくミスター。冷静だったけれど、あそこまでするとは思わなかった」と振り返る。別のカメラにはこの時、興奮した観客がグラウンド内に乱入している様子が写り込んでいる。劇的な展開にも舞い上がらないカメラマンに、球審も大目に見てくれていたようだ。

 翌日の1面は、樋口が撮影した長嶋と末次の2ショットが飾ったが、2面は末次のバッティングで、落合が撮った両手を広げて迎える長嶋監督の写真は使われなかった。樋口は「今なら2~3面の見開きとか、1面と最終面をつないで使いたい写真だよね。でも、当時はそんな考え方はなかった。もったいないよね」と惜しむ。しかし、この“幻のカット”は後日の紙面に使われて、長嶋監督の第1次政権を象徴する一枚になった。

 「あんなにたくさんカメラマンが出て行って、文句つけたかった人もいたと思うよ。でも、当時は何となく許されていたし、今では絶対撮れない写真。こっちもおもしろかった」と、カメラマン人生で最も思い出に残る写真に挙げた樋口。「もう、こんな時代は来ないと嘆いていたと書いてくれ」と付け加えた。(敬称略)

 ◆樋口 景章(ひぐち・けいしょう)1940年、東京都生まれ。81歳。63年に報知新聞社入社。写真部で巨人を中心にオールラウンダーとして取材するほか写真部長を務めた。

76年6月9日付「報知新聞」1面
76年6月9日付「報知新聞」1面
巨人・末次利光外野手と抱き合ってホームに向かう長嶋監督。この写真が翌日の1面を飾った(1976年6月8日・後楽園球場)
劇的なサヨナラ勝ちに、飛び出した長嶋監督(左)に迎えられる末次(1976年6月8日・後楽園球場、カメラ・樋口 景章)
巨人・阪神、9回2死満塁 末次利光のサヨナラ満塁本塁打に歓喜の長嶋茂雄監督(1976年6月8日・後楽園球場)
76年6月9日付「報知新聞」1面
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