世界最高齢で太平洋横断の堀江謙一さん凱旋会見「青春まっただ中。若輩ですが大器晩成を目指します」

帰港セレモニーを終え祝福される堀江謙一さん(カメラ・岩田 大補)
帰港セレモニーを終え祝福される堀江謙一さん(カメラ・岩田 大補)
記者会見する堀江さん(カメラ・岩田 大補)
記者会見する堀江さん(カメラ・岩田 大補)

 ヨットで世界最高齢となる単独無寄港の太平洋横断に成功した海洋冒険家の堀江謙一さん(83)が5日、ゴールから一夜明け、拠点とする兵庫・西宮市の新西宮ヨットハーバーで帰港セレモニーに臨んだ。堀江さんは3月27日に米・サンフランシスコ 検疫などの手続きを済ませた堀江さんは、全長約6メートルのヨットを下り、上陸の第一歩を踏みしめた。白のパーカにハーフパンツ姿で「皆さん、お待たせしました」とあいさつ。「精神と肉体が完全燃焼した。青春のまっただ中です」と、日焼けした顔に充実感をにじませた。

 1962年に小型ヨットで世界初の単独無寄港太平洋横断を達成し、著書「太平洋ひとりぼっち」が話題になった堀江さんだが、今回は逆コースをたどったことで60年前の記憶がよみがえった。「(今回は)廃油がほとんど流れていなかった。海のマナーが向上してきている」と目を細めた。

 セレモニー後、会見に応じた堀江さんは「最高齢で単独太平洋航海は僕自身の一つの夢でもあった。夢を夢で終わらせず、現実の目的として挑戦した」。久々の陸上の感覚に「意外と歩きにくい。なじむにはもう1日くらいかかりそう」と苦笑した。多くの人の出迎えに「航海は自己満足のためですが、多くの方に何らかのいい影響を与えられたなら、望外の喜び」と話した。60年前も空港で出迎えた田中透さん(63)は「さすが堀江さん。3歳の時に花束を渡した私が、また花束を渡すことができてうれしい」と声を弾ませた。

 今回は米国への船の輸送代が10倍に上がったほか、新型コロナウイルスのワクチン接種や出国前にPCR検査を受診するなどの苦労があった。「うまくいかないと出国できない。薄氷を踏む思いだった」。航海中の4月23日には、北海道・知床沖で観光船「KAZU 1」沈没事故が発生。ラジオのニュースで聞いたといい、「僕は自己責任でやっていますが、やはり気をつけないといけない。海の上からですが、ご冥福(めいふく)をお祈りしました」と静かに語った。また地元・西宮を本拠地とする阪神のセ・リーグワーストとなる開幕9連敗も洋上で知り「知人や家族との交信で連敗は話題になりました。粘り強いところを見せてほしい」と要望した。

 83歳の冒険家は今後について「生涯チャレンジャーでいきたい。若輩ではありますが、大器晩成を目指して頑張ります」とユーモアたっぷりに意欲を見せた。最後は「とりあえず自炊ばかりだったので、何でもいいから食べたいです」と、家族との食事を楽しみに会場を後にした。を出航し、69日間、約8500キロを航海。約1000人の出迎えに笑顔で手を振って応えた堀江さんは「生涯チャレンジャーでいきたい」と今後の冒険にも意欲を見せた。(古田 尚)

 ◆同じ1938年生まれの著名人 細川護煕氏(元首相)、小林旭(歌手)、ミッキー・カーチス(ミュージシャン)、松本零士氏(漫画家)、木村太郎氏(評論家)、黒江透修氏(元巨人など)らがいる。故人では、ジャイアント馬場さん(プロレスラー、99年死去)、梅宮辰夫さん(俳優、19年死去)、島倉千代子さん(歌手、13年死去)ら。

 ◆堀江 謙一(ほりえ・けんいち)1938年9月8日、大阪市生まれ。83歳。関大一高(大阪)を経て、小型ヨットで62年に世界初の単独無寄港太平洋横断に成功。74年は単独無寄港で世界一周。82年には縦回りで世界一周。89年は世界最小ヨットで単独無寄港の太平洋横断。96年はアルミ缶リサイクルのソーラーパワーボートで単独太平洋横断。08年には波の力だけを動力とする波浪推進船で米ハワイ―和歌山・紀伊水道を航海した。

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