近江のエース・山田陽翔を間近に見て感じた気迫、人柄、甲子園への思い…新人記者が夏への原動力に

スポーツ報知
6回途中、足がつり治療のためベンチに下がる近江の先発・山田陽翔(右)

 当時、新社会人になったばかりの私は、その姿に強烈な印象を受けた。高校野球の近江のエース・山田陽翔主将(3年)。今春センバツで決勝までの全5試合に先発し、投じた球数は594球。けがを抱えながら途中降板して、優勝には届かなかった。約2か月後、同じような状況で本人と初対面するなど、少しも想像していなかった。

 5月28日、新人記者として訪れた春季近畿大会の準決勝。真夏のような暑さにもかかわらず、センバツ決勝の再戦カードを見に駆けつけたファンで和歌山・紀三井寺球場は埋め尽くされていた。強い日差しの中、マウンドに上がった山田は、大阪桐蔭に対して5回まで1失点と気迫あふれる投球を見せた。しかし6回、足を気にする様子を見せて投球を止めた。山田の体温は37・9度まで上がり、右太もも裏にけいれんの症状が出た。水分補給して投球を再開したが、症状は収まらなかった。

 試合は大阪桐蔭の勝利に終わり、取材場所に向かうと、主将指定の位置には多くの記者が集まり、普段そこにはないパイプ椅子を囲んでいた。自ら歩いて現れた山田は、座るように何度も促されたが「本当に大丈夫です」と笑顔で応え、約20分間の取材を立って受けた。一つ一つ丁寧に。横から質問した、明らかに新人記者の私にも、しっかり視線を合わせて答えてくれた。どこまでも誠実な人だった。

 「自分があのような形で降りてしまったというのが後半の悪い流れを生んだと思うので、敗因は自分にあります」。降板時、仲間が肩を支えたが、山田は三塁線で足を止めて最後まで投げる意思を見せた。治療後はベンチから身を乗り出し、誰より声を張り上げた。言い訳の一つもこぼさなかった。

 そんな18歳を目の前にして、純粋に私のこれからを頑張りたいと思った。彼が見ている景色を見てみたい。原稿にしたい。そのために彼と同等の努力をしようと。「もう一度鍛え直して、夏しっかり甲子園に帰れるように」。山田の言葉は、今日も原動力になっている。

 もうすぐ、記者として初めての夏が始まる。全国の頂点に立てるのは1校。山田だけではない。すべての選手がそれぞれに特別な思いを抱えてこの夏に挑んでくると、たった1か月の取材の中で何度も思わされた。それでも、彼が甲子園の真ん中で笑う未来を願わずにはいられない。もうすぐ、高校最後の夏が始まる。(記者コラム・瀬川 楓花)

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