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駅伝シーズンを占う関東インカレ 箱根駅伝王者の青学大が今季も充実

関東学生対校選手権男子2部ハーフマラソンでトリプル入賞を果たした(左から)青学大の田中悠登、西久保遼、横田俊吾
関東学生対校選手権男子2部ハーフマラソンでトリプル入賞を果たした(左から)青学大の田中悠登、西久保遼、横田俊吾

 関東の大学の長距離ランナーにとって、箱根駅伝と並ぶ2大イベントの関東学生陸上競技対校選手権(通称・関東インカレ)が5月19~22日、東京・国立競技場などで行われた。今年の箱根駅伝で圧勝した青学大は今季も充実している。1500メートル以上の種目で1、2部を通じて最多得点を獲得。駅伝シーズンに向けて勢いをつけた。「関東インカレを制する者が箱根を制す」という格言がある“初夏の陣”。青学大の戦いぶりを追った。

 箱根路の王者、青学大は国立競技場でも圧倒的な存在感を見せた。駒大、東京国際大、国学院大など強豪がそろう2部で、1500メートル以上の種目ですべて入賞。1部、2部を通じて断トツの53点を荒稼ぎした。

 1500メートルで山内健登(3年)、宇田川瞬矢(1年)が1、2フィニッシュを決め、西川魁星(4年)も5位。トリプル入賞を決めた。

 残り400メートルからロングスパートを仕掛け、残り200メートルでさらにもう一段階ギアを上げて勝ちきった山内は「ラスト勝負ではチームメート(西川、宇田川)の方が速いことが分かっていたので、早めに勝負を仕掛けました。初タイトルなのでうれしいです」と満面の笑みで話した。

 山内は1年時に全日本大学駅伝6区に出場したが、2位から4人に抜かれ、区間9位と苦しんだ。その後、学生3大駅伝の出場はない。「青学大で走っているからには、やはり、箱根駅伝を走りたい。今年は出雲駅伝から出場を狙っていきます。箱根駅伝では1区か10区、花のある区間を走りたいです」と意欲的に話した。

 1500メートルの好成績に原晋監督は「青学大は20キロ超の箱根駅伝だけではなく、選手の適性に応じて1500メートルのスピードも強化しています」と胸を張って話した。

 5000メートルでは鶴川正也(2年)が日本人トップの3位。目片将大(4年)が6位入賞。ルーキーの佐藤有一も10位と踏ん張った。

 ラスト勝負で日本薬科大のノア・キプリモ(4年)、城西大のヴィクター・キムタイ(1年)にわずかに後れを取った鶴川は「残り200メートルで思ったより足が動きませんでした」と日本人トップを取った喜びよりも優勝できなかった悔しさをあらわにした。ただ、確かな手応えも感じている。熊本・九州学院3年時には全国高校駅伝でエース区間の1区で区間賞を獲得するなど、鳴り物入りで青学大に入学したが、1年時は故障に苦しみ、学生3大駅伝には一度も出場できなかった。箱根駅伝で3区を快走した太田蒼生、5区を力走した若林宏樹の陰に隠れていた。「高校時代は世代NO1と思っていましたが、昨年はいるか、いないか分からない選手になってしまっていました」と悔しさを明かす。今後の目標は明確だ。「7月に5000メートルで13分20秒台を出し、駅伝シーズンに臨みたい」。鶴川が箱根駅伝で希望する区間は、ずばり1区。今年の箱根駅伝1区で快走した志貴勇斗(3年)の付き添い係を務めた鶴川は1区出陣への思いを強くしている。

 1万メートルではエース格の岸本大紀(4年)がキプリモに競り負けたが、日本人トップの2位と存在感を示した。「今季の一番の目標は100%の状態でレースに臨むこと。それはできたと思います」と冷静に話した。1年時の箱根駅伝では2区で日本人1年生最高タイムの1時間7分3秒の区間5位と快走し、チームの優勝に貢献したが、2年時は故障に苦しみ、学生3大駅伝すべてに欠場。3年時も前半は故障が長びき、箱根駅伝は復路の7区に回った。7区で区間賞を獲得したが、決して満足はしていない。「昨季は近藤幸太郎(4年)にオンブにダッコの状態だった。4年目はエースとしての走りを続けたい」と意気込む。

 岸本の力走に原監督は「完全復活です! 今季は近藤と岸本が青学大のエースの座を争うことになる」と期待する。最近3年の箱根駅伝で青学大の2区はすべて現4年生世代が走った。20年は岸本が区間5位、21年は中村唯翔が区間14位、今年は近藤が区間7位だった。「コース適性を考えると、岸本が一番、2区に向いている。2区に岸本、3区に近藤とつなげば強力です」と原監督は早くも7か月後の大一番に向けて戦略の一案を明かした。

 3000メートル障害ではルーキーの黒田朝日が3位で表彰台に上がった。岡山・玉野光南高時代に日本記録保持者の三浦龍司(順大3年)が持つ日本高校記録に0秒42差まで迫る同歴代2位の8分39秒79をマークした逸材は「三浦さんのように世界で勝負したい」と高い目標を明かす。6月の日本選手権では、その三浦に挑む。黒田は駅伝に向けても意欲的。父・将由さんは法大1年時の2001年箱根駅伝1区3位と好走し、駿河台大の徳本一善監督と「オレンジエクスプレス」を“編成”した名選手。「父のように箱根駅伝でも活躍したいです」と前向きに話した。

 青学大が最も強さを見せつけたのはハーフマラソン(21・0975キロ)だった。箱根駅伝と同等の距離で勝負する耐久戦で、西久保遼(4年)が3位、横田俊吾(4年)が5位、田中悠登(2年)が7位とトリプル入賞を果たした。特筆すべきは、この3選手はいずれも今年の箱根駅伝ではメンバーから外れた補欠選手だったということだ。「青学大の選手層の厚さを示せたと思います」と西久保は堂々と話した。

 今年の箱根駅伝で優勝メンバーに名を連ねた3区2位の太田蒼生(2年)、8区2位の佐藤一世(3年)は関東インカレに出場しなかったが、前日の5月18日に東京・町田市立陸上競技場で行われた絆記録挑戦会5000メートルに出場。佐藤一世は13分52秒77でトップを取り、主力を見せつけた。箱根駅伝以来のレースとなった太田は14分28秒34で復活への一歩を記した。

 唯一の懸案はエースの近藤幸太郎(4年)が直前に故障し、出場登録していた1万メートルに欠場したこと。ただ、軽症で、新潟・妙高高原で行われたゴールデンウィーク合宿では精力的に走り込んでおり、6月中に戦列復帰する見込みだ。

 関東インカレの2部ハーフマラソンで昨年は優勝、今年は3位と学生トップレベルの力を持ちながら、いまだ、学生3大駅伝の出場がない西久保は言葉に力を込めて話す。「今、僕は箱根駅伝優勝メンバーの次に位置していますが、このまま、終わるつもりはありません。エースの近藤と岸本を追い抜くつもりです」

 チーム内のレベルの高い争いが、さらに青学大を強くしている。2022年度も大学駅伝界は青学大が中心にいる。(竹内 達朗)

 ◆関東学生陸上競技対校選手権(通称・関東インカレ)

 1919年に第1回大会が行われ、今年が第101回大会だった。1920年に始まり、今年が第98回大会だった箱根駅伝より長い歴史を持つ。今年は現国立競技場で初めて開催された。旧国立競技場で行われた13年以来、9年ぶりに「国立」で熱戦が繰り広げられた。

 例年5月に開催され、各種目1位8点、2位7点…8位1点が与えられ、対抗戦で総得点を競う。出場は各種目1校3人以内。男子は16校の1部、それ以外の2部、大学院生の3部に分けられる。1部の15、16位と2部の1、2位が翌年、入れ替わる。1部と2部は短距離種目などを含めた総合力で決まるため、今年の箱根優勝の青学大や同3位の駒大など長距離・駅伝をメインに強化している大学は2部に属する。今年の箱根出場21校は1部11校、2部9校。シード校に限ると1部4校、2部6校。長距離種目では1部と2部に大きな実力差はない。サッカーのJ1とJ2というよりも、プロ野球のセ・リーグとパ・リーグの関係に近い。

 安定したペースで進み、好記録が生まれやすい記録会と異なり、関東インカレでは激しい駆け引きがあり、ペースは乱高下する。「記録」より「順位」。「速さ」より「強さ」が求められる。

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