深い陸上愛で関東インカレや有観客予定の箱根駅伝を支える高橋花奈幹事長「皆がベストを出せる舞台を用意したい」

スポーツ報知
高橋花奈幹事長

 陸上の第101回関東学生対校選手権(関東インカレ)が、今月19~22日に3年ぶりの有観客開催で行われた。箱根駅伝よりも長い歴史と伝統を誇る学生陸上界の一大イベント。箱根と同じく大会運営は、関東学生陸上競技連盟の学生スタッフたちが手分けして支えていた。

 高校まで、跳躍や投擲競技の選手だった高橋花奈幹事長(21)=日大4年=が、今年は43人の学生スタッフのトップとして運営面をとりまとめた。今年の関東インカレは9年ぶりの聖地・国立競技場での開催。「東京五輪も開かれた憧れの会場。そこでできるのはすごく喜ばしいこと。皆がベストを出せる舞台を用意したい、とやりがいも責任も感じます」と燃えていた。昨年までとは異なる巨大な会場に「導線を覚えることが一番苦労しました。見えないところの導線を覚えたり、補助員や学生審判などにどのように伝えていくかが大変でした」と振り返る。大会中は1、2階席の間にある細い電光掲示板を積極的に活用して演出。協賛社のロゴや大会記録などが出た時に、文字を写し出して場内を盛り上げていた。

 昨夏、大きく背中を押される出来事があった。テレビ観戦した東京五輪男子3000メートル障害決勝。関東インカレや箱根駅伝でも活躍していた、三浦龍司(20)=順大3年=が7位に入賞を果たした。「長距離で日本人が入賞するシーンがやはり印象的で。すごいという感情で正直、言葉にならなかった。同年代が日本を背負いながら世界と同等に戦って、重圧に打ち勝てるメンタルや競技力を見せてもらって。運営側としてもそういう舞台を用意したい、という刺激になりました。皆さんに応援して頂けるように、大会自体をどう盛り上げて見に来て頂けるか」と三浦の劇走も、今大会成功への1つのきっかけになっていた。

 今回の関東インカレはコロナ禍となって初、3年ぶりとなる有観客開催だった。各大学の選手や関係者には体調管理チェックシートの提出などを求め、会場内の至る所にアルコール消毒液を設置するなど、昨年11月から万全の準備を進めてきた。「従来通りの感染症対策はしながら安心、安全、お客様が足を運びやすい大会運営をしました。選手のご家族の方から『見に行けてうれしい』と言って頂いて。私たちが大学1年の時が最後の有観客開催で、その良さを後輩達につないでいきたかった。今年は箱根駅伝も含めて、年間10試合全てを有観客の通常開催に戻す、ということを目標に、学連幹事全員で力を合わせてやっています。ぜひ現地に足を運んで頂いて、選手の力強さを感じたり、声援で力を与えて頂けたら」。観客も一体となった盛り上がりや演出を念頭に置いている。

 高橋幹事長にとって「関東インカレ」は、とても縁の深い大会だ。母の(旧姓・船越)紀子さん(51)は、中大で1989年と91年の関東インカレ女子1部走り高跳びで優勝。妹・花瑠(日大2年)も、今大会1部女子三段跳びで6位入賞を果たした。父・勉さん(52)は走り高跳びで中学、高校と全国大会に出場しており「私以外は全国大会で入賞経験があるんですよ~」と、高橋幹事長は照れ笑いを浮かべた。

 関東インカレは昨年、節目の第100回大会を迎えた。その約1年前から、高橋幹事長は記念大会のロゴ製作を担当してきた。「作っては無し、作っては無しの繰り返しでしたね(笑い)。学生の意見も通しながらOG、OBの方々のご意見も伺いながら。全員で作り上げたロゴになっています」と今大会会場内でも掲示されたロゴを誇らしげに見つめていた。「関東インカレは学生スポーツ大会の中でも、誇りを持ってお勧めできる大会です。箱根駅伝とともに私たちがおじいちゃん、おばあちゃんになっても、勢いのあるままに開催されていたらうれしいですね」と強い愛着も口にする。

 普段は、片道約1時間半かけて千葉県内の自宅から、東京・渋谷区千駄ケ谷の関東学連事務所へと電車で通う。大学の講義終わりで週5日、各方面の担当者と綿密に連絡を取り合いながら、選手たちが自らを磨いていた同じ時間に、安全な大会実施の準備をコツコツと進めてきた。帰宅するのは深夜や終電になることも。「母は選手として関東インカレに出て居たので、今の私の帰る時間なども見て『こんなに運営側も大変なんだ。試合開催されるのは当たり前じゃないんだな、と感じたよ』と言っていました。おかげで心折れずに、準備を進めてこられましたね」とほほ笑む。

 当然、関東インカレと同じく主催する箱根駅伝との関わりも深い。高橋幹事長は高校2年時に一家で初詣し、その帰りに湘南大橋付近で大渋滞に遭遇した。「こんなに多くの運営管理車が走っているんだ、と運営面の印象がすごく強く残った。今ここにいる、きっかけだったかもしれません」と箱根駅伝との出会いを振り返る。

 日大1年時と2年時は、大手町と芦ノ湖でスタートとフィニッシュの運営に携わった。今年1月は「緊急対応車1」に医師と審判と一緒に乗務。シード権争い付近を走り、選手に異常があった時に備えていた。「幸い、誰も不調にならなかったので大事にいたらず。とても安どしました。特に山は気温の変化もあるので医師の方と常にテレビやネット、スマホなどで何かしらで情報を得ていました」と舞台裏の緊張感を打ち明ける。「私は高校まで陸上をやってきて、選手たちとのつながりは今もあります。『コロナ禍の中でも、関東インカレや箱根駅伝を開催してくれてありがとう』という選手たちの一言が、一番うれしい言葉なんです」と実感を込める。

 幹事長の大きな業務の1つが、箱根駅伝予選会の結果発表の読み上げだ。「来年の第99回箱根駅伝にはぜひ出て欲しい。駅伝部の選手とも連絡は取り合っていますし、予選会で10番以内でしっかり日大の名前を呼びたいな、という思いはありますね」と母校・日大の2年ぶりの箱根駅伝返り咲き出場を祈念している。陸上愛の深い女性幹事長が、人間ドラマにあふれる夢舞台を華麗に演出していく。(榎本 友一)

 ◆高橋 花奈(たかはし・はな)2000年6月18日、千葉・佐倉市生まれ。21歳。両親の影響で小学4年で陸上を始め、中学1年時に千葉県総体の走り幅跳びで優勝。成田高では円盤投げや七種競技にも取り組み、2年時の関東新人大会の砲丸投げで7位。日大スポーツ科学部競技スポーツ学科に進学し、1年から関東学連の学生スタッフに。家族は両親と妹。

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