保護猫メゴちゃんのリラックス動画を見ると、ここまで無防備でいいのかと心配になるほど。飼い主サチコさんに対して、いかに気持ちを許しているかが手に取るように伝わってきます。
サチコさんは7匹の保護猫と暮らしていますが、猫の数だけ病院にかかる機会も多く、それだけ治療費がかさむこともあり、日ごろから体調管理に気をつけています。
猫の死因の上位にはがんとともに腎不全が挙がります。これらの病気が増えているのは長生き猫が増えた裏返しです。特に腎臓病の方はいわば宿命のように、以前から猫につきまとってきた病気です。腎不全は腎臓病が進行した結果、腎臓が機能しなくなることです。
猫に腎臓病が多い理由は、その歴史をさかのぼることで納得がいくと、動物行動学・動物栄養学が専門の摂南大学農学部助教・池田裕美先生。栄養学的な面から詳しく聞きました。
―猫の死因は犬とは違う傾向があるそうですね。
「民間の調査ですが、犬も猫も死因の1位はがんですが、2位は犬の心臓病に対して、猫の方は腎不全となっています」
―理由があるのでしょうか?
「はい。現在の家猫の祖先はリビアヤマネコとされています。今の種類で言うとアビシニアンに似ているようです。リビアヤマネコは元々今の中東の砂漠に生息しており、クレオパトラが愛していたと言われるほど、古くから人々と近い存在でした。砂漠が起源の猫は、犬と比べて少ない水分で生活する特徴がありますが、それは砂漠という環境に適応する必要性から身に付いたものとされています。獲物で水分を補ったりしていたようです。一方で犬の起源はオオカミであり、諸説ありますが現段階では砂漠地帯ではなく東アジアに生息していたと考えられています。猫も犬も同じように私たちの身近にいてくれる存在ですが、起源からみても身体の構造や特性が大きく異なることがわかります」
―猫の起源と腎臓病の多さが関係しているのですね。
「少ない水分摂取の中で効率よく体の老廃物・不要物を出すためには、腎臓をより働かせないといけません。当然負荷がかかり、傷みやすくなるわけです。特に高齢になると腎臓病の発症の割合が高くなります。少ない水分を有効に使って濃縮された老廃物を漉し出します。逆に犬は猫より水分摂取が多く、多量の尿を排出するため老廃物の濃度は比例して薄くなります。犬と猫を一緒に飼っている人からは『猫のオシッコの方が臭いがきつい』という話をよく聞きますね」
―猫の腎臓病を予防するためにはどうすればいいのでしょうか。
「腎臓病の完全な予防法はまだ確立されていませんが、私自身は栄養素の変動をみることで予防できないかという研究をしています。主な臨床栄養学的な療法としては、水分やタンパク質、リンなどの比率調整で病気の進行を遅らせることができるのでは、と考えています。元々猫は水分摂取量が少ないのですが、腎機能が弱ってくると水分を多く摂取するようになります。飲み水皿の減りが多い場合は気をつけておきたいところです。腎機能が低下すると、水分を大量に摂取しても脱水症状になりやすい状態です。脱水症状を防ぐため、そういう場合はウェットフードなどの水分が多いフードを適宜使う手がありますね。
腎臓病だと診断されてしまったら、獣医師さんの処方による腎臓病用の療法食を与えることが推奨されます。腎臓に負担をかけない為にタンパク質やリンなどが制限されているものです。ただ、このフードを予防として与えることはしない方が良いでしょう。健康な子には必要なタンパク質やリンなどが不足してしまいます。飼い主さんが普段の様子をじっくり観察し、いつもと違うな?と異常に気付くことや、定期的な健康診断が早期発見につながります」
―ほかに飲み水について注意点はありますか。
「元々水が苦手だったり、飲む量自体が少なかったりで、なかなか飲まない子もいるかと思いますが、なるべく飲みやすい状態にしてあげてください。飲み水には人間が飲むミネラルウォーターは避けた方が良いでしょう。過剰なミネラル摂取で下部尿路結石などを発症して体調を崩す可能性もあります。水道水で十分だと考えられています。
飼い猫ちゃんはどうしても飼い主さんから与えられる飲み物や食べ物で身体がつくられていきます。新鮮なものをいつでも飲めるようにしてあげてくださいね」