南野拓実の現在地は? リバプール離脱か残留か…英国通信員・森昌利コラム

南野拓実(ロイター)
南野拓実(ロイター)

 5月20日、英メディアが一斉に伝えたところによると、2014年からリバプールに在籍したベルギー代表FWディボック・オリギ(27)がセリエAのACミランと個人条件で合意に至ったことが明らかとなり、今季限りの退団が決定的となった。

 オリギは2019年5月7日に行われたバルセロナとの欧州CL準決勝第2レグで2ゴールを奪い、2戦合計を4-3にひっくり返した奇跡の決勝進出に大貢献し、さらにトットナムとの決勝でも試合終了間際にダメ押しとなる2点目を決めて、ファンの記憶に残るゴールを奪った。がしかし、ついにリバプールでレギュラーの道をあきらめ、移籍を決意した形になった。

 クロップ監督は今回のオリギの移籍に関し、「ディボ(オリギ)はリバプールのレジェンド。(5月22日のリーグ)最終戦ではそんな彼に相応しい特別な送別会が行われるだろう」と話し、世界の強国であるベルギー代表FWで、19歳から27歳までの貴重な8年間をリバプールに捧げたオリギを労った。

 オリギに続き、今季出番が激減した日本代表MF南野拓実の去就も注目されている。ベルギー代表FWの3か月年上で同じく27歳。2019年の1月に移籍してきたが、リバプールFW陣の厚い壁に阻まれ、オリギ同様、レギュラーに手が届かない。

 そんな南野にシーズン終盤になってようやく話が聞けた。その中で最も印象に残った言葉が、筆者が「今後もリバプールでということか?」とたずねて「いやそれは難しいですね。なんとも言えないです」と南野が返答したもの。残念ではあったが”やはりそうか”という思いが胸の中に込み上げた。

 南野はこの試合、37節目にして初めてのリーグ戦先発を果たし、逆転ののろしを上げる同点弾を叩き出した。これで今シーズン、公式戦ゴールがちょうど二桁となる10ゴールに届いた。

 今季のリバプールはリーグ杯、FA杯の国内カップ2冠を達成しているが、それも南野がリーグ杯戦で4ゴール、FA杯戦で3ゴールを奪ったことが大きい。

 それに先発が一回しかないリーグ戦でも今回のサウサンプトン戦のゴールをプラスして3ゴールを記録。OPTAの出場時間のトータルを得点数で割り出したゴール出現分の記録を見ると、南野は101分で1ゴールを奪取。これはなんと、1000分以上プレーしたプレミアリーグ所属選手の中で最短記録となっている。

 ちなみに2位はマンチェスター・Cマフレズの120分、3位アーセナルのエンケティア128分、4位レスターのバーディー129分、5位リバプールのサラー130分、6位マンチェスター・Uのロナウドと続く。

 幸運なことに、今季の南野のゴールは全て現場で目にすることができたが、出てきた試合では必ず得点する印象があった。しかしそれもこの101分で1ゴールというゴール出現データーを見れば納得だ。

 ところがそれでも出場時間は増えない。それも今年の1月にコロンビア代表FWルイス・ディアスがFCポルトから移籍して来て、まるで何年もクロップ監督の下でトレーニングを積んできたかのようにチームにフィットすると、南野はリーグ戦のベンチから外れるようになった。

 本人もサッカー選手となって2か月も試合から遠ざかった経験は「ない」という。「その(試合に出られない2か月間)中で、体もメンタルも調整するのはすごく難しかった」といい、苦渋の思いをにじませた。

 ただ、それも当然の話だろう。故障はない。体調も万全でいいトレーニングもできている。今ではイングランドの速さや強さにも慣れ、その中でもさらにハイ・テンポのプレーを展開するリバプールのサッカーにも順応できている。試合に出場さえすれば”ゴールを決められる”という自信もある。それは前出のOPTAの記録でも裏付けられている。

 確かにゴールは格下とのカップ戦で奪ったものがほとんではないかという人もいるだろう。南野自身も「決勝には出ていないので、(貢献したと言っても)半分くらいです」と謙遜するが、実戦の勘に欠ける控え中心のイレブンの中でしっかりゴールを決めるのは、攻撃のリズムが整ったレギュラー陣で構成されたチームで得点するより難しい部分がある。

 しかし南野は、そんな状況でも試合に出ればしっかりと結果を出し続けてきた。ゴールに対する執念の裏側には、本人が「怒りのモチベーション」と語った雑草魂がある。

 試合に出られない悔しさやフラストレーション、そして怒り。そんな思いを積もらせて、試合で爆発させる。そんな負けず嫌いな気性も、激しい肉弾戦を売り物にするイングランドのサッカーでは頼もしい資質だ。

 もちろん、リバプールという超一流クラブで活躍することが南野の夢。それは出場する度に、まるでこれが最後の試合だというばかりにピッチ上を疾走し、クロップ・サッカーの代名詞であるカウンター・プレスの申し子となる日本代表MFのプレーを見れば一目瞭然だ。

 しかしドイツ人闘将は南野を使わない。

 日本人MFに関する質問には常に丁寧に答える。「素晴らしい選手だ。練習態度には頭が下がる」と真摯に返答する。サウサンプトン戦直後の会見では、南野をはじめ、試合に出たくても出られない控え選手が逆転勝利を飾ったことに対し、「感動さえした」とクロップ監督は語った。

 記者団との質疑応答を終えて、脇を通り過ぎた時、筆者の目を覗き込んで「アウトスタンディング、アウトスタンディング」と『並はずれた』『際立っていた』という意味の言葉を2度繰り返し、南野のゴールに対する感動を伝えてきた。

 その目にはうっすらと涙さえ浮かんでいた。

 もちろん、このクロップ監督の人間味あふれるおおらかな愛情はとてつもない魅力だ。試合に出られない南野も「監督は常に全員の選手が必要だと言っています。信頼されているという気持ちもある」と語って、ドイツ人闘将を慕う。この言葉からも、髭面の大男の並はずれた愛情が、現場、経営陣、そしてサポーターを一つにまとめ上げ、長年低迷した名門リバプールを真の強豪に復活させた原動力であることは間違いない。

 「めっちゃ難しいです。だからこのシーズンが終わってから考えようと思っている」

 絶好調でありながら、これだけ実戦から遠ざかり、辛酸をなめた南野がそう語るのは、はやりそんなクロップ監督の魅力に魅かれ、リバプールのために自分を捧げたいという思いが本物だからだろう。

 ただし、現在契約交渉が難航しているエース・モハメド・サラーが電撃的な移籍が決まった場合をはじめ、ジョッタ、ディアスの台頭で先発が激減したフィルミーニョの退団。またサディオ・マネに関しても、バイエルン・ミュンヘンが獲得に乗り出したという報道がある。

 当然、こうした主力が去った場合、それ相当の補強はするだろう。しかしオリギが去り、7人のストライカーが6人となり、さらに主力の誰かが欠けるという事態になれば、クロップ監督が南野に残留を頼み込むケースも生じるかも知れない。

 イングランドでは「Anything is possible in football」=フットボールの世界では何が起こっても不思議はない、という言葉を頻繁に耳にする。去年の夏にメッシが突如としてバルセロナを退団したのがそのいい例だが、現在の浮沈が激しいサッカー界では今日の状況が明日になるとどう変化するか分からないという例えである。

 サウサンプトン戦後の談話を聞くと、南野が今季終了後にリバプールを去る決意をする可能性はかなり高そうだ。しかし、それもサラー、フィルミーノ、マネ、ジョッタ、ディアスと5人そろった現在の豪華なFW陣が来季も万全であることが条件。今後は日本代表MFがいつどのタイミングで新天地への移籍を決断するのか、それと同時にリバプールのFW陣の今季終了後の去就にもしっかり注目して行きたいと思っている。(英国通信員・森昌利)

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