武藤敬司、復帰直前インタビュー【後編】「年齢じゃなくて挑戦する人には、人は付いてくる」

復帰戦の会見に出席した武藤敬司(右から2人目)
復帰戦の会見に出席した武藤敬司(右から2人目)

 プロレスリング・ノアの武藤敬司(59)が5月21日の大田区総合体育館で4か月ぶりに復帰する。左股関節唇損傷のため今年1月8日の横浜アリーナでの新日本プロレスとの対抗戦を最後に欠場。復帰戦は丸藤正道、“史上最大のX”小島聡とトリオを結成し、潮崎豪、清宮海斗、田中将斗と対戦する。長期欠場中、ノアマットをどう見ていたのか。さらに今年で還暦を迎える自身の今後など復帰直前の武藤を「WEB報知」は単独直撃。「武藤敬司、復帰直前インタビュー」と題し連載する。復帰後の野望は「挑戦あるのみ」。(取材・構成 福留 崇広)

 武藤はノアマットのさらなる活性化へ提言した。

 「若いヤツらもいっぱい頑張ってるよ。だけど、若いヤツらが少ないんだ。だから、組織として強くなってどんどん若いやつらが入ってくる体制にならないとダメだよ。とにかく人材を集めないといけない。ただ、それは、いきなりは無理だからさ、ゆっくりゆっくりだよ」

 さらに育成システムの見直しも掲げた。

 「そこの育てるローテーションとか仕組みも早くしないといけない。この前、テレビで見たけど、昔は、お寿司屋さんも皿洗いから修業してってあったけど、今は寿司の専門学校があってそこを3か月ぐらいで卒業した人がミシュランを獲ったりしているんだよな。そういうシステムでノアという会社も育成していかないと。そういうところにプロレス界は、挑戦していかないといつまでたっても俺みたいのが、のさばるよ(笑い)」

 重要なことは競争力だという。

 「人材をとにかくもっともっと大勢、集めないといけないよ。なぜなら、大勢いれば、そこに競争が生まれるからね。例えば今、清宮には競争がない。下の突き上げがない。横もいない。俺らとそこが育ちが違うよ。俺らは横に橋本(真也)、蝶野(正洋)の三銃士、下からは馳健の突き上げがあった。なおかつ、長州(力)さん、藤波(辰爾)さんっていう上もいたからね。横も下も上もいて、もみくちゃにされた。清宮は楽だよ。今は上からだけじゃん。下かとか横はもっと大変だよ。俺も馳(浩)とか(佐々木)健介とか厄介だったからな。そういうライバルがいないといけないよ。そういう競争力を組織として作っていかないといけないよな」

 そのための策はひとつだった。

 「とにかく、どんどん入団させるんだよ。そのためにもノアを若者が憧れる団体にするしかない。誰もがプロレスに憧れ、ノアに入団したいという若者を増やしていくしかない。そこを頑張ってやっていけばいい。やっぱり人材だよ。どんな仕事でも」

 団体活性化を提言した武藤。自分自身の復帰後のプランはどうなのか。

 「この股関節のケガは根本的なところは治らないんだよ。どっかで案配をつけていかないといけない。それも気持ちじゃん。気持ちなんだよ。ちょっとしたら痛くなる。だけど気持ちで折り合いをつけるわけだ。だから復帰しようと。だって治らないんだよ。どう付き合っていくか。それは膝もそうだった。それが今度は股関節になったわけで、だけど気持ちが沸き上がるように常に努めているよ。その中で、あんまり張り詰めてもいいことはないから、休みながらやっていきますよ」

 還暦を見据え「赤い」ベルトのGHCナショナル奪取を公言してきたが、タイトルへの意欲は変わらないのだろうか。

 「タイトルマッチは猪木さんの教えじゃないけど、やる前に負けることを想像しないわけだ。ということはチャンピオンになることを想定して考えなきゃいけない。その中で果たして連戦をする体力、気力があるか。一発でベルトを取る自信はあったりするよ。だけど、その次の月にはタイトルマッチがあるとかになると自分の体を考えたりして、その気持ちが合うときもあれば、気持ちを合わせるのに憂鬱になる時があるって…人っていうのは波があるからさ。ただ気持ちのオンとオフの波があったほうがいいわけでね」

 期せずして師匠の「アントニオ猪木」の言葉が出てきた。今、武藤の猪木への思いは。

 「猪木さんの生き方ってプロレスそのもので政治家になったりもしたけど、考え方は、みんな一緒でプロレスのつもりで政治もやっていたと思うよ。すべて生き様を見せたよね。あの人は24時間『アントニオ猪木』だった。そこは、俺もいつでもどこでも地でやっているからな」

 復帰直前、最後に武藤はこう言った。

 「もがいたりすることは、プロレスラーだけじゃなくて他の職業の人たちだって同じだと思うよ。その中で頑張っている人、何か変わろうとしている人って興味を引くんじゃないの。年齢じゃなくて挑戦する人には人は付いてくる。挑戦しない人には多分、あんまり興味は抱かないかもしれない。じゃあ、さしあたって俺はどうするか。挑戦あるのみだよ」(終わり)

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