◆第83回オークス・G1(5月22日、東京競馬場・芝2400メートル)
牝馬クラシック2冠目を争うオークス(22日、東京)で、吉田豊騎手(47)=美浦・フリー=が、自身の完全復活を証明する3度目Vへ勝負駆けムードだ。相棒は、前走のフローラSで逃げて2着のパーソナルハイ。管理する矢作芳人調教師(61)=栗東=も大けがを乗り越えて晴れ舞台に戻ってきた「東のユタカ」の手腕に期待を寄せる。再度の徹底先行で波乱の使者になるか。
世界を驚かせたドバイの戦いから2か月。今度は、日本の大舞台で吉田豊が一発を狙う。3月に行われたドバイ・ターフ(アラブ首長国連邦)を矢作厩舎のパンサラッサで逃げて1着同着Vを果たし、自身は初の海外G1制覇。そして、オークスで再び矢作厩舎のパーソナルハイとコンビを組む。昨年11月の初騎乗で2着。2走前の桜花賞で再び依頼が舞い込んだ。「桜花賞が抽選だけど乗りに来るか?と。権利は取れなかったですが、前走でまた声をかけていただいて権利を取ることができた。かわいがってもらっていますね」。桜花賞は6着で、オークスの優先出走権(5着以内)を逃したが、フローラSの2着で出走権獲得。それは、パンサラッサと同様の逃げ戦法への自信を深める価値あるレースともなった。
その前走は、桜花賞から中1週と間隔が詰まっており、桜花賞も中2週の強行軍。吉田豊には懸念もあったが結果は違った。「輸送もあってどうかなと思っていたんですが、さすが矢作先生と思いました。体もそんなに減らず状態も良さそうでした」。自身のデビューイヤーから目をかけてもらっている名トレーナーの“馬を見抜く力”に改めて尊敬の念を抱く。
吉田豊といえば、5冠牝馬メジロドーベル。大久保洋吉厩舎に所属し、3年目から主戦を務め21戦全ての手綱を執った。オークス制覇は1997年。「桜花賞もキョウエイマーチに負けていましたし、勝たなきゃいけないという感じでした」。2002年にはスマイルトゥモローで自身2度目のオークス制覇。西の武豊に対し、「東のユタカ」と呼ばれたのもその頃だ。
現役最多タイオークス3勝へ 17年末にはレース中の落馬で頸椎(けいつい)骨折の重傷を負い、1年3か月もの長期離脱。「半年ぐらい骨がくっつかなくてリハビリを始めようと思ってもできなかった」と復帰への道のりは順調ではなかったが、再び表舞台に戻ってきた。「距離に関してはどの馬も未知。桜花賞よりは向くと思う」。勝てば武豊、福永に並ぶ現役最多タイのオークス3勝目。先週のヴィクトリアマイルは弟の隼人がソダシで制した。今度は兄が「世界の矢作」との再タッグで自身10度目のG1タイトルをつかみ「東のユタカ」の完全復活を証明する。(石行 佑介)
◆吉田 豊(よしだ・ゆたか)1975年4月19日、茨城県生まれ。47歳。JRA競馬学校騎手課程の同期に幸英明、渡辺薫彦(現調教師)ら。JRA通算1万7081戦1268勝(うちG1・9勝を含む、重賞36勝)。159センチ、48キロ。弟はソダシやポタジェなどでG1・5勝の吉田隼人。
◆矢作 芳人(やはぎ・よしと)1961年3月20日、東京都出身。61歳。2004年に調教師免許を取得し、翌年に開業。昨年のブリーダーズカップ(BC)では、ラヴズオンリーユー(フィリー&メアターフ)とマルシュロレーヌ(ディスタフ)で優勝し、日本馬初のBC制覇。昨年引退した3冠馬コントレイルも管理した。